G-Schmitt

あけましておめでとうございます。皆様いかがお過ごしでしょうか。
自分は大晦日も三が日も仕事で、今日はようやく今年初めての休みなのですよ。あー疲れた。しかもちょっと風邪気味だし。
今年も鬱病と闘いつつの更新となるでしょうけど、モチベーションは失ってないのでまだまだ続けられると思います。
相変わらず時代性もジャンルもむちゃくちゃで、書く人の気分のみによって題材が決まるという困ったブログなんですが、変わらぬご愛顧を頂けると幸いです。


今回は久々に日本のバンドを取り上げたいと思います。
過去に相対性理論、メルトバナナ、ブンブンサテライツを取り上げたことはありますが、最近はすっかりご無沙汰していてこれが1年半ぶりくらいになりますかね。
いつも洋楽ばかり取り上げているんですが、自分自身が昔バンドをやっていて、当時のインディーシーンにも出入りしていたくらいなので、日本のロックも嫌いではないのですよ。
特に80年代前半は、仕事の合間を見てライブハウスに通いまくってて、思い入れのあるバンドも結構多いんです。
その中で今回は、G-Schmittを取り上げてみたいと思います。このバンドは本当に好きだったんですね。


G-Schmittは80年代前半から後半にかけて、インディーズシーンで活躍していたバンドです。
ちなみに「ジー・シュミット」と呼ばれることが結構あるのですが、正しい発音は「ゲー・シュミット」で、これで当時リアルタイムで聴いていた人と、あとで文章で知った人の区別がつき易かったりします。
このバンドは83年に活動を開始し、ヴォーカルのSYOKOの書く幻想的な歌詞と、その世界観を明確に反映させたサウンドが特徴でした。
ジャンルとしてはポジパンに数えられることも多かったのですが、他のポジパンのバンドのどろどろした空気やアプローチとは違い、繊細な手法で音世界を構築しようとしているバンドだったように思いましたね。
自分とこのバンドの出会いは偶然でした。自分の在籍していたバンドのベーシストが、たまたまこのバンドのメンバーと面識があり、その誘いで観に行ったんでした。
といってもこのバンドはSYOKOの世界観を音にするためだけに存在する、言わばソロプロジェクトのようなものでして、メンバーはしょっちゅう変わっていました。そのベーシストの友人もすぐ抜けたと聞いたような記憶があります。
まあそれはそれとして、初めて聴いた印象は「素晴らしい」でした。濃い陰影と透明感を併せ持つ曲調、淡々としていてモノトーンを思わせる演奏、そして何よりSYOKOの存在感が圧倒的でした。
憂鬱さと激情感を湛えたヴォーカルと、可憐な少女性と妖艶な魔性を行き来するようなヴィジュアルの奇跡的な融合といった感じで、一瞬でファンになりましたね。
終演後、彼女と簡単な会話をする(正確には会話の輪の中に混じった程度ですが)機会がありましたけど、思ったより小柄でビックリしたことと、ゴスっぽいメイクの奥から時々少女のような幼く優しげな表情が見え隠れしたことを、今でもはっきりと覚えています。


それ以降自分は何度も彼女たちのライブに通い、自主制作のレコードも買いました。
昔買ったレコードは、のちに病気で生活苦に陥ったときにほとんど売ってしまったんですが、彼女たちのは残してあるくらいですから、本当に好きだったんですよ。
ただ自分はレコードプレイヤーを持っていないので、シングルがあっても聴けないんですけどね。ですから当時の音源が聴けるYouTubeには大感謝です。
以下に曲を羅列します。もう完全に自分が聴くための更新なので、説明もほとんどしてませんが、その点はご容赦願います。


G-Schmitt - No.6


彼女たちの1stシングル。
ネオサイケ調の演奏と叙情的なヴォーカルの絡みが良いです。


G-Schmitt - Bulerias


『No.6』カップリング。
ベースラインがいかにもポジパンの影響を受けているっぽくて、なかなか微笑ましいです。


G-Schmitt - Kの葬列


84年のコンピレーション『時の葬列』に収録された一曲。SMSからリリースされ、後述の『Catholic』とともに唯一メジャーから出た音源となりました。
時の葬列というのは当時ポジパン界の大物だったオート・モッドが、サディ・サッズ、マダム・エドワルダ、G-Schmitt、アレルギー、あぶらだこ、アンジー(これは何故?)らとともに敢行したツアーでした。
そのうちヴェクセルバルグ・レーベルに所属していた前記4バンドの音だけ、『時の葬列』というコンピレーションにまとめられたんでしたっけ。(追記:マダム・エドワルダはヴェクセルバルグじゃありませんでした。記憶違いです。)
このコンピレーションは04年にCD化され、現在も入手可能です。サディ・サッズあたりはかなり面白い音を出しているので、インダストリアル系が好きな人にはお薦めです。


G-Schmitt - Catholic


同じく『時の葬列』に収録されていた曲。ライブ映像があったので載せておきます。
宗教の暗黒面を真正面から描いた歌詞は、なかなか大胆かつ潔癖で、スージー&ザ・バンシーズを思わせますね。


G-Schmitt - Limit


85年の1stアルバム『Modern Gypsies』のオープニングを飾った曲。
ヴォーカルがあまり重たくなくて、この路線だと「ポジパン界の中森明菜」を名乗れそう(笑)。
途中のフラメンコギターなど、アレンジがいい味出してます。


G-Schmitt - Farewell


これも『Modern Gypsies』収録曲。
ピアノに載せて歌われる美しいメロディーと、ロマンティシズム溢れる歌詞が好きです。


G-Schmitt - LSD


85年くらい(記憶が定かでない)に限定版でリリースされたシングル。
見事に買い損ねたので、神保町にあったフラットというインディー・レーベル取扱店で、中古盤を3000円という当時としては結構な高額で購入した記憶がありますね。
彼らの中でも最もポップなメロディーと、直接的な歌詞が印象的です。


G-Schmitt - Grand Circle


86年の2ndアルバム『Sin, Secret & Desire』収録曲。
壮大なスケール感を持つ曲で、アルバムのエンディングには相応しいのではないでしょうか。


G-Schmitt - Public Game


87年のベスト盤CD『Struggle To Survive』収録曲。
ボーナストラックとしての収録でしたが、ライブでは結構昔から演奏していたような記憶があります。
割とストレートなロックンロールで、歌詞にも幻想的な色合いがほとんどないことから、かなり初期の曲なのではないでしょうか。


G-Schmitt - Icaros Descending


88年リリースの12インチシングル。これもライブ映像があったので載せておきます。
徐々に高揚していくところと、そこはかとなく漂う浮遊感が好きな曲です。



G-Schmitt - Future Daze


88年の3rdアルバム『Garnet』収録曲。シングルにもなりました。
最初のほうのメロディーがちょっと乗れなかったんですが、サビの部分はやはり圧倒的です。


G-Schmitt - Guilty


『Future Daze』のシングルのカップリング。
排他主義民族浄化などを連想させる凄絶な歌詞と、パーカッシブなアレンジが気に入っています。


しかしG-Schmittの活動はこの頃から明らかに減速していきます。
SYOKOが表現に対して誠実過ぎるところがあって、妥協を許さなかったため、メンバーチェンジが多く活動はままならなくなっていったようです。
またSYOKO自身も制約の多いバンドでの活動に限界を感じていて、ソロへの転向を考えていたところもあったのかもしれません。
結局バンドは89年に『Sillage - 遊戯終焉』なる意味深なタイトルのシングルを出して、そのまま活動を停止してしまいます。


G-Schmitt - 遊戯終焉


G-Schmittのラストシングル。
これまでの作品に比べるとやや精彩を欠いている印象も当時持っていたんですが、改めて聴き直してみるとダークで重いところがなかなか癖になります。


SYOKOはそれ以前にソロとしてメジャーデビューもしています。
まずは86年に、今ではジブリ映画の音楽担当として有名なあの久石譲と組んで、EMIから『SOIL』というミニアルバムを出しています。


SYOKO - Magie


『SOIL』収録曲。
久石がサウンドを全面的に担当した、硬質なインダストリアル・サウンドです。
陰鬱かつ実験的な作風で、ジブリの久石しか知らない人が聴いたらショックを受けるかもしれませんが、当時の彼は新進気鋭のクリエイターで、最新鋭の電子楽器を使用してこういったマシーナリーな音楽を試みていた時期でした。中森明菜菊池桃子のアルバム曲でも、非常にテクノ度の高い作風を見せていましたっけ。
SYOKOのヴォーカルもサウンドに埋没することなく、しっかりと物語を構築しています。よく考えてみると、のちに映画音楽の大家になった久石と当時対等に渡り合ってたんですから、やはりすごい人なのだなSYOKOって。


SYOKO - からっぽの日曜日


SYOKO - Sunset


双方とも『SOIL』収録曲。
前者はちょっとフレンチポップスのような味わいの佳曲で、後者はその後の久石の作風を思わせる叙情的なバラードです。前衛的なだけでなく、こういう落とし所をしっかり作ってくるのもプロの仕事なんでしょう。
淡々としつつも緊張感があって、こちらのほうがSYOKOというヴォーカリストのイメージには合っているかもしれませんね。


その後彼女の行方は杳として知れませんでしたが、92年には突如メジャーのWEAジャパンから2ndソロ『Turbulence』をリリースします。
このアルバムはEP-4のBANANAこと川島裕二ブラボー小松、PINKの矢壁アツノブ、DEAD ENDの湊雅史、非常階段のJOJO広重(スポーツカード収集家としても有名)といった個性的なメンバーをバックに従え、より実験的な音を出していました。


SYOKO - Dance on the Brink


『Turbulence』収録曲。
プログレを思わせるアヴァンギャルドな展開でありながら、幻想的な持ち味は失っておらず、ああSYOKOが帰ってきた、と嬉しく思いましたっけ。


2ndアルバムがリリースされたことにより、今後の活動が期待されたSYOKOでしたが、そのまま彼女は何のコメントも残さず、再び闇の中に姿を消してしまいます。
公の場に姿を現したのが確認されたのも、02年のG.I.S.M.の永久凍結ライブが最後だそうで、その後10年以上目撃情報はないらしいです。
噂ではヴェクセルバルグ・レーベルの代表だった宮部知彦氏と結婚し、今は主婦として家庭に納まっているとか(追記:今は宮部氏と離婚しているという話も聞きましたが、確認する術はないので真偽不明)。
G-Schmittの一員としてステージに立っているときの神秘的な佇まいからすると意外な感じですが、当時メイクを通じてその幼げで優しい表情を見ている身としては、それもまた似合っているような気がしないでもないですね。
ちなみに先に記したイベント『時の葬列』は、四半世紀の時を越えて昨年復活したんですが、主催者のジュネのブログにも「Gシュミットは絶対無理だし」と書いてあり、今後も姿を見せることはなさそうです。
まあこちらとしては今さらG-Schmittの再結成などは望んでいませんが、かつての音源はぜひCD化してほしいものです。
現在再発で入手可能なのは『時の葬列』と『SOIL』だけなので、初期の音源をぜひ出して頂きたいと切に願っております。


【追記】


SYOKOのソロ、『Turbulence』も14年7月に再発されました。


turbulence

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  • アーティスト:SYOKO
  • SS RECORDINGS
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【さらに追記】


SYOKOと宮部氏が離婚しているのは確かなようです。
彼女は現在医療関係の事務の仕事をしているとか、化粧品の販売をしているとか様々な噂がありますが、もはや一般人ですから消息を追うのは不可能でしょうし、そもそも追ってはいけないのでしょう。
面白いのは一時期SYOKOを名乗る人物が、ネット上に現れていたということですね。
様々な矛盾を突かれ偽者と確定したようですが、最近になってもその名を騙る者が現れるあたり、彼女の存在は一部の人間の心の奥底に、未だに強く残っているということなんでしょう。