ローリー・アンダーソン

ちょっと今日は短い更新でお茶を濁します。
まあいつもガッツリ長文を書いていると、すぐにネタがなくなっちゃいますので、こうやって小出しにしていく回も必要なんですよね。
などと言い訳していますが、要するにいろいろあって時間がないのです。どうかご了承下さい。


今回取り上げるのはアメリカのパフォーマンス・アーティスト、ローリー・アンダーソンです。
高校生くらいのとき、一度シングルが局地的に話題になったので、名前だけはよく知ってました。
当時YMO細野晴臣が「彼女のような存在に励まされる」というような発言もしていたので、そこも印象に残ってたんですよね。


アンダーソンは1947年、米国イリノイ州シカゴに生まれています。
7歳からバイオリンを習い始め、14歳の頃にはシカゴ・ユース・オーケストラの一員になるなど、幼少期はクラシック畑を歩いていたようです。
その後ニューヨークに移ってバーナードカレッジで美術史を、コロンビア大学大学院で彫刻を学び、卒業後は美術史講師の職に就き、同時に美術評論も始めています。
すでに大学時代には、ミニマル・アートやコンセプチュアル・アートに影響を受けた彫刻作品などを製作し、個展も開いているというのですから、早熟の芸術家だったのでしょう。
講師の職に就いてからも制作意欲は衰えることなく、72年に自動車のクラクションを演奏に用いたパフォーマンス作品を発表したのを皮切りに、その後改造したヴァイオリンと映像を組み合わせたパフォーマンスを繰り広げていきます。
その頃から芸術家系の人には注目されていたようで、坂本龍一は彼女のパフォーマンスを「エスノ・ハイテクニックな洗練」と評したそうです。


ここまでは評価こそ高いものの、知る人ぞ知る存在でしかなかったんですが、ある日突然一般的な知名度を獲得します。
そのきっかけが81年にリリースしたシングル『O Superman』の大ヒットでした。


Laurie Anderson - O Superman


81年に全英2位を獲得した、大ヒット曲。アルバム『Big Science』からのカットです。
「FaFaFaFaFa」というイントロの反復ヴォイスが曲全体のリズムになり、それを核にしてスポークン・ワードっぽいヴォーカルやいろんな楽器が絡んで、自在に展開するさまが刺激的です。
一応ポップスではなく現代音楽の範疇なんでしょうが、ジャンル特有の小難しさはなく、知性をユーモアとチャーミングさで包んだ感じは、十分ポップスとして成立しています。


84年には豪華なゲストを招いたアルバム『Mister Heartbreak』もリリースしています。
自分が聴いたのはこのへんまでなんですが、さらに先鋭化が進み、音楽を使ったポップアートみたいな印象を受けましたね。


Laurie Anderson - Sharkey's Day


『Mister Heartbreak』収録曲。
ギターにキング・クリムゾントーキング・ヘッズの活動で知られるエイドリアン・ブリュー、パーカッションに坂本龍一トーキング・ヘッズのツアーで活躍したデヴィッド・ヴァン・ティーゲムがゲスト参加し、奔放な演奏を聞かせてくれます。
正直奇妙な曲なんですが、両者のファンなら必聴でしょうね。
なお曲中であのウイリアム・バロウズも朗読をしているのですが、映像ではどの部分なのか分かりません。


Laurie Anderson feat. Peter Gabriel - Excellent Birds


これも『Mister Heartbreak』収録曲。
あのピーター・ガブリエルとのデュエット(と言っていいかは分かりませんが)ですね。
やはりガブリエルのファンにはお薦めです。


その後彼女はアレン・ギンズバーグフィリップ・グラスフランク・ザッパなど数多くのアーティストとともに作品を残しました。
またニューヨークを拠点とし自作の楽器、CG、ダンス、詩、映像などを駆使し,視覚効果に富んだステージを展開し、地味ながら高い評価を得ています。
日本にも何度も来日し、そのパフォーマンスを披露していますが、聞いた話によると内容は圧倒的で斬新だったそうです。最近では05年の愛知での「愛・地球博」にも参加しています。
ちなみに彼女は98年に、あのルー・リードと結婚しています。二人でのコンピレーション作品もあり、共同のイベントも開催しているようですね。


この人の場合はあくまでノン・ミュージシャンであって、表現の一方法として音楽を使用しているだけなので、その感覚は通常の音楽とはかなりかけ離れたところがあります。
構成だけとってみても、普通の楽曲で用いられるイントロ〜Aメロ〜Bメロ〜サビ〜間奏というフォーマットは使われていませんから、難解でとっつきにくいと感じる人も多いかもしれません。
ただ一部のパフォーマンス・アートにありがちな、技術のなさを衝動で埋めるような瞬間芸的なものとは一線を画している部分は確かにあって、そこが親しみやすい部分に繋がっていると思います。
自分も久々に聴いたんですが、いろいろ新たな発見があって面白かったです。こういう人もいるから音楽とは楽しいのでしょう。