前々回にジョン・フォックス時代のウルトラヴォックスをネタにしましたが、今回は脱退後ソロになってからの音を取り上げたいと思います。
ソロになってからの彼の出す音は、同時代のテクノポップとは一線を画すような無機質かつ硬質のサウンドで、当時かなり聴き込んだ記憶がありますね。
ソロになったフォックスは、バンドから離れて思う存分エレクトロニクスに傾倒した音を出すようになります。
またちょうどこの頃大ヒットを飛ばしていたゲイリー・ニューマンが、フォックス時代のウルトラヴォックスからの影響を公言していたため、彼に対する期待は否が上にも高まっていきました。
そんな中ついに80年、彼は初のソロアルバム『Metamatic』(邦題は『メタル・ビート』)をリリースしましたが、これはメタリックでメタフィジカルでオートマティックな世界が展開されている内容となっており、絵画的な印象を受けるほどでしたね。
なおこのアルバムには、のちにデペッシュ・モードやアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンなどを手がけたガレス・ジョーンズが、エンジニアとして参加しています。
John Foxx - Underpass
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これは『Metamatic』からのシングル。全英では31位を記録しています。邦題は『錆びた地下道』。
ほとんどフォックス一人が自前のスタジオで多重録音して製作しているのですが、多分8チャンネル程度しか使っていないであろうシンプルさが潔いです。
クールでかつ使用している音も斬新で、後発のテクノ系ミュージシャンとは一味も二味も違うところを聴かせてくれます。
John Foxx - No-One Driving
これも『Metamatic』からのシングル。全英32位。
これもシンプルで無機質な音ですが、『Underpass』よりはポップな印象はあります。
John Foxx - He's a Liquid
これも『Metamatic』収録曲。シングルカットはされてませんが、何故かPVはあるんですね。
シンプル過ぎて不安になってくるような奇妙な曲です。
John Foxx - Burning Car
80年にリリースされたシングルで、アルバムには収録されていなかった覚えがあります(再発アルバムには収録)。全英35位。
この曲も非常に無機質で、インダストリアルに通じる部分さえある先鋭的な音になっています。彼の音は活動時期によってかなりの変遷を遂げているのですが、個人的にはこの頃の音が好きですね。
John Foxx - Miles Away
これも80年にリリースされたシングル。全英51位。
バンドサウンドを導入したせいか、これまでの硬質な音世界、モノクロームなイメージとは趣を異にする軽快な作品となっています。
チャートアクションは今ひとつでしたが、フォックスのファンの間では根強い人気があり、隠れた名曲扱いされています。
John Foxx - Europe After The Rain
81年の2ndアルバム『The Garden』からのシングル。全英40位。
それまでの無機質さからがらりと趣が変わり、ヨーロッパ的センチメンタリズムとポップさをエレクトロニクスで融合させた音になっています。
穏やかで陰影があり、ふくよかな温かみさえ感じさせるこの曲は、日本でもホンダのスクーターのCMソングとして使われました。
余談ですがフォックスにはPVに関して常人とは違うこだわりがあるみたいで、シングルにもなっていない『He's A Liquid』のPVは作ったのに、代表作であるこの曲のPVはありません。まあそんなところも彼らしいですが。
フォックスは83年と85年にもアルバムをリリースし(どちらも個人的にはいまいちでしたけど)、また83年には待望の来日も果たしています。
このときは東京厚生年金会館まで観に行きましたが、「クワイエット・マン」の異名を持ち静かなイメージのあった彼が、ガンガンに踊りながらステージに登場したため、思わず腰が抜けそうになるくらい驚いたのを覚えています。
しかしその後彼は音楽から急速に興味を失っていき、85年以降はグラフィックアートの活動に軸足を移すようになりました。ジャネット・ウインターソンやアンソニー・バージェス、サルマン・ラシュディの本の装丁も手がけていたそうです。
97年に音楽活動に復帰後はアンビエント・ミュージックへの傾倒を見せ、カトリシズムを取り入れた作品をいくつか発表するほか、ハロルド・バッドらとのコラボレーションも行っています。
また08年には25年ぶりに来日し、元気な姿を見せてくれました。