デペッシュ・モード

皆さんこんばんは。
笑っちゃうんですけど、今日が僕の誕生日なんですよ。なんつーか複雑な気分です。
正直言うと、誕生日をめでたいと思えるのは20歳までですね。それ以降は加齢していくのにうんざりって感じで、気分が重くなります。あともう少しで50代ですし。
まあここまでいろいろ病気を抱えつつも、生命の危機に陥ることもなく生きてこれたことには感謝してますけど。これからもしばらくは何もなければいいなあ、と切に願っております。


さて、今回はデペッシュ・モードを取り上げてみたいと思います。
これまで1億枚以上を売るトップクラスの人気を誇っており、欧米では今でもスタジアムクラスのバンドですから、このブログにはふさわしくない大物ですよね。
でも何回かヴィンス・クラーク関連について書いたら、やっぱり彼の出発点であるデペッシュ・モードについても書いてみたくなったのですよ。数少ないエレポップ時代からのサバイバーですし。
ただこのバンドは80年代初頭から現在までと活動歴は長いわけで、全部網羅するのはきついと思うのですね。だいたい最近は僕も聴いてませんし。
ですからエントリを2回に分けて、90年代半ばに一度活動を小休止した頃まで書いてみたいな、なんて思っています。てかそのへんまでが限界(苦笑)
今回と次回は動画が多いですから、見ているだけでも結構大変だとは思いますが、読んで頂けると幸いです。


デペッシュ・モードは80年にヴィンス・クラーク、マーティン・リー・ゴア、アンドリュー・フレッチャーの3人で結成した『Composition of Sound』というユニットが母体となっています。クラークとフレッチャーは学生時代からの友人だったようですね。
このユニットは結成当初、クラークがギターとヴォーカル、ゴアがキーボード、フレッチャーがベースを担当しているという、割と普通のバンド編成だったのですが、すぐに3人がシンセを担当するという当時としては斬新な形態に切り替え、そこにヴォーカルのデヴィッド・ガーンを加えて、デペッシュ・モードとなったのです。
彼らは80年にサム・ビザール・レコードからリリースされたコンピレーション『Some Bizarre Album』に、『Photographic』という曲を提供してデビューを果たします。


Depeche Mode - Photographic


これがその初音源です。
『Some Bizarre Album』は大人になってからCD化されたので聴く機会がありましたが、正直同時に収録されていたソフト・セルやザ・ザのほうの印象が強くて、こっちのほうは普通のエレポップのように聞こえてしまいます。まあインパクト勝負でその2つに勝つのは難しいでしょうが。
ただこれで認められてサム・ビザールと契約していたら、先の2つのユニットやスロッビング・グリッスルあたりとレーベル・メイトになっていたわけで、面白いって言えば面白いんですが、このレーベルは結局メジャー展開する力を獲得できなかったわけですから、後の彼らの成功を考えると、ここが運命の分岐点だったのかもしれません。
その後彼らはミュート・レコードのオーナー、ダニエル・ミラー(シリコン・ティーンズの活動で、ミュージシャンとしても知る人ぞ知る存在)に気に入られて契約、81年2月に『Dreaming of Me』でシングルデビューを果たします。


Depeche Mode - Dreaming of Me


彼らの初シングル。全英57位と、無名の新人としてはなかなかのヒットとなりました。
初期の彼らにしてはやや落ち着いた曲ですが、いかにもクラークらしいポップなメロディを持っていて、なかなかの佳曲です。


Depeche Mode - New Life


全英11位。ビルボードのダンスチャートで29位。
本格的に彼らがブレイクした一曲。安っぽい打ち込みの音に乗せて繰り出されるポップなメロディーが、エレポップ好きにはたまりません。
クラークのポップセンスが炸裂していて、個人的には大好きな曲ですね。


Depeche Mode - Just Can't Get Enough


全英8位。ビルボードのダンスチャートで26位。
初期のデペッシュ・モードと言えばやはりこの曲です。この今の時代には考えられないような能天気な明るさがたまりません。
印象的なイントロと馬鹿がつくくらい明るいメジャーコード、シンプルなリフの繰り返し、ポップの極みのようなメロディが癖になります。


3枚のシングルを発売したあと、彼らは1stアルバム『Speak & Spell』(邦題は『ニュー・ライフ』)をリリースします。
このアルバムは2曲を除いて全てクラークのペンによるもので、ほとんどクラークのソロと言っちゃっても過言ではないような出来なんですが、エレポップとしては極上で、全英10位、ビルボードでは192位を記録しました。
当時のデペッシュ・モードはルックスも良く(クラークは除く)、本国では半ばアイドルバンドのような扱いを受けていたようです。


Depeche Mode - Puppets


『Speak & Spell』収録曲。
シングルにも何にもなってない曲を、何故取り上げるのかと言うと、この曲を昔バンドでカバーしたことがある、という個人的事情です。
重い感じの曲ですが、メロディーはやはりクラークらしくポップで、なかなか味があると思っているのですが。


しかしここでトラブルがデペッシュ・モードを襲います。ソングライターのクラークが脱退してしまうのです。
クラークはあまりにも非社交的な性格で、他人の前に出ることを厭い、プロモーション活動もツアーもやりたくなかったというのが理由だったようです。
その後彼はヤズー、ジ・アッセンブリーなどを経て、イレイジャーで大成功を収めたのは、前に書いたとおりです。人間的に丸くなったのか、イレイジャーではしっかりツアーも行っているようですけど。
まあそれはそれとして、バンドは『Speak & Spell』で2曲を書いていたゴアをソングライターに据え、3人で活動を再開します。


Depeche Mode - See You


82年リリースのシングル。全英6位。
クラーク脱退後初のシングルですが、それまで以上のチャートアクションを記録し、デペッシュ・モード健在を知らしめた曲です。
ゴアが17歳の頃に書いたという曲で、幾分陰のあるアンニュイな感じと、チープなアナログシンセの音がたまりませんね。
また内容はかなり未練がましい失恋ソングで、後年の重さを持った歌詞とはだいぶ違う感じになっています。


Depeche Mode - The Meaning of Love


これも82年のシングル。全英12位。
前作の路線を引き継いだような、ポップで分かりやすい曲だと思います。


Depeche Mode - Leave In Silence


これも82年のシングル。全英18位。
内向した物静かな感じが印象深い、叙情的な曲ですね。このあたりからだんだん単なるポップではなく、内省的な部分が出てきていると思います。


順調にシングルを発表していった彼らは、82年10月には2ndアルバム『A Broken Frame』をリリースします。
このアルバムは、クラークの持っていたポップセンスに翳りをプラスしたような、ゴアのソングライティングが光る一品でしたね。彼にそこまで才能があるとは思っていなかったので、当時驚いた記憶があります。
ソフトで情感がこもっているサウンドも、エレポップとして素晴らしい内容でした。全英では8位、ビルボードでは177位を記録しています。


Depeche Mode - My Secret Garden


『A Broken Frame』収録曲。
この曲もシングルにはなっていませんし、代表曲でもないのですが、やはり僕がバンドでカバーしたので取り上げてみました。
ナイーブで陰のあるサウンドが、個人的にとても好きでしたね。


83年になるとバンドはもう一人メンバーが必要だと考え、オーディションによって新メンバー、アラン・ワイルダーを迎え入れました。
ワイルダーはアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンなどを好んで聴く人物で、彼の参加によりバンドはこれまでになかったインダストリアル系の要素をどんどん取入れ、単なるエレポップの範疇には収まりきらない音に変化していきます。


Depeche Mode - Get The Balance Right


83年リリースのシングル。全英13位。ビルボードのダンスチャートで31位。アルバム未収録。
まだ大々的にインダストリアルな要素は取り入れておらず、割と柔らかいサウンドになっています。
PVで懐かしいゲーム(ギャラクシアンギャラガかどっちか思い出せん)が登場しているのも、日本製のテレビゲームの当時の英国への進出具合が分かって、すごく興味深いですね。


Depeche Mode - Everything Counts


83年のシングル。全英6位。ビルボードのダンスチャート17位。
荒々しいベースラインにゴア特有のマイナーメロディが乗る典型的なデペッシュ・モード節ですが、柔らかい牧歌的なフレーズのサビと、そこに入る直前のメタリック音とのコントラストがカッコいいです。サンプリングを大胆に使用したアレンジも、新局面を出していますね。
ライブでは大合唱になる、彼らを代表する名曲の1つです。


同年には3rdアルバム『Construction Time Again』がリリースされました。
ジョン・フォックス所有のスタジオで録音され、ドイツのベルリンでミックスされたこのアルバムは、レーベル・メイトのDAFなどに影響を受けたと思しきハードな打撃音がインパクトを作り出していて、初期の音とはかなり違った金属的な音になっています。
この路線は新しいダンス・ミュージックを求める若い層に受け入れられ、全英6位のヒットとなり、新しいファンを掴む事に成功しました。


この後デペッシュ・モードは、エレポップの枠をはみ出してオルタナティブの先駆者と言っていい音に変化していくのですが、それについては次回に書くことにします。