フォーカス

皆様どうもご無沙汰しています。
このところ体調が優れなくて、何をする気分にもなれず更新が滞っていたんですが、どうやら昔から患っていた鬱病がぶり返してきたせいで、動けなくなったみたいです。
この病気はいろいろと厄介なものでして、良くなかったかなと思って安心していると、思わぬところで突然顔を出してきたりするので、本当に面倒くさいです。
いまは薬を処方してもらって、病状は治まってはいるんですが、精神の一部が死んだように不活性になって、何かをするための気力が湧いてこないというところは変わっていません。
こんな調子ですので、しばらくは更新はしたりしなかったりになるでしょうし、してもあっさりと短い内容になるかと思いますが、ご了承頂けるとありがたいです。


まあそれはそれとして、今回はまたプログレに舞い戻ってしまいまして、オランダのフォーカスです。
このバンドは70年代前半に、日本でも人気がありました。その頃僕は小学生でしたから、もちろんリアルタイムで聴いていたわけではないんですが、中学生の頃にやっていたバンドのメンバーのお兄さん(とは言っても僕らより10歳以上歳の離れた人でしたが)がたまたまレコードを貸してくれたので、記憶には残っているバンドですね。
フォーカスは69年にヴォーカルとキーボード、フルートを担当するタイス・ヴァン・レア(オランダ語の発音は難しくて、実際はテイス・ヴァン・レールというのが原音に近いらしいのだが、ここでは一般に呼称されていた名前に準じる)を中心に結成されました。
最初彼らはキーボード、ベース、ドラムスのトリオ編成だったのですが、翌年にギターのヤン・アッカーマン(この人も正確な発音はアケルマンらしい)が加入し、アルバム『In and Out of Focus』でデビューします。
ここからちょっと経緯がややこしいのですが、アッカーマンはアルバムリリース直後にフォーカスを脱退し、旧友のピエール・ファン・デア・リンデン(ドラムス)とともにバンドを結成しました。
そこまでならよくあることですが、そのグループはフォーカスからヴァン・レアを引き抜き、ベースにシリル・ハーヴァーマンスを迎え、フォーカスを名乗るようになりました。アッカーマンのバンドが実質的にバンド名を乗っ取ったような形になるわけですね。


という複雑な生い立ちを持つ新生フォーカスですが、結成後の活動は順調で、クラシックを基調としながら欧州の民族音楽も取り入れたユニークな音楽性と、確かなテクニックが欧米でセンセーションを巻き起こし、一躍人気バンドとなりました。
英語圏のバンドでありながら英米で人気が高かったのは、その音楽がインストルメンタル主体で言葉の壁がなかった(オランダはヨーロッパ大陸で最も英語の通じる国ではあるのですが)ということと、演奏されるフレーズが非常にキャッチーで覚えやすかった、ということが大きかったのだと思います。


とりあえず代表曲を挙げてみましょう。2曲ともインストルメンタルですが、非常に聴きやすくプログレ入門者にはお薦めです。


Focus - Hocus Pocus


71年の2ndアルバム『Moving Waves』からのシングル。邦題は『悪魔の呪文』。ビルボード9位、全英20位のヒットになっています。
ハードロックのようなギターに、ヨーデルやフルート、口笛などを合体させた恐ろしくインパクトの強い曲で、日本でも大変な人気がありました。
この映像はオリジナルより数段スピードアップした演奏になっており、目まぐるしいほどの展開と、躁状態のような異常な疾走感が味わえます。
ヴァン・レアの奇妙なヨーデルがまず耳に残りますが、アッカーマンのギタープレイもすごいですね。実際英国では彼の評価が高く、メロディ・メイカー誌の投票で10年連続1位だったエリック・クラプトンを抜いて、彼がギタリスト部門のトップになったほどでした。


Focus - Sylvia


72年の3rdアルバム『Focus III』からのシングル。73年に全英4位を記録しています。
彼らの曲の中で最も親しみやすく、ポップでキャッチーなメロディーを持った名曲です。
基本的にシンプルではありますが、徐々に盛り上げていく構成はさすがだと思います。小難しさは皆無で、「プログレはちょっと」という人でもこれなら聴けるのではないでしょうか。


フォーカスは76年にアッカーマンが脱退したことにより、ほぼその生命を終えることになりました。バンドは後任フィリップ・カテリーンを入れて活動を続行しましたが、うまくいかず78年には解散してしまいます。
その後はヴァン・レアとアッカーマンの間で何度か再結成が試みられ、一度はアッカーマン&ヴァン・レアの名前でアルバムを出したこともありましたが、商業的に失敗しました。
しかしヴァン・レアは今世紀に入ってから、自分たちのトリビュート・バンドのメンバーを率い、フォーカスを再結成します。
なんでもそのトリビュート・バンドの活動にヴァン・レアがゲストとして招かれたところ、メンバーと意気投合してしまい本物のフォーカスとして再結成する決心をしたのだとか。なんか牧歌的というか、呑気な話でいいですね。
新生フォーカスはその後メンバーをたびたび入れ替えつつも(現在は全盛期のドラマーであるファン・デア・リンデンも参加している)、アルバムをリリースしたり来日もしたりして、元気に活動しています。