エコー&ザ・バニーメン

今回は久々にちょっと気合入れて書きましたよ。
まあこれで気力を使い果たしたので、次回からはまた脱力更新になると思いますけど。
実は昨年の欝がまだちゃんと治ってなくて、また自宅療養になってしまったのですよ。
職場からはもっとしっかり治してから出てこいと釘を刺されたので、また1ヶ月くらい休みということになってしまいそうです。
まあブログくらいは書けると思いますので、調子が悪くならなければ更新はします。読んで頂ければ幸いです。


さて、自分のどうでもいい事情を語るのはこのくらいにして、本題に移りましょう。
世の中には特定の季節が似合うミュージシャンというのがいます。
たとえば夏ならビーチ・ボーイズやチューブ、みたいな感じですね。まあこの2つは極端な例ですが。
そういう意味で個人的に冬が似合うと思っているのは、エコー&ザ・バニーメン(以下エコバニ)です。
寒空を連想させる、硬質でエッジの効いた切れのあるネオ・サイケデリックサウンドが、いかにも英国の冬を思わせる感じなんですよね。
それとアルバムのジャケットワークが、いかにも冬っぽい美しさに満ちていて、ますますそう思うのかもしれません。


・Crocodiles(80年、全英17位)



・Heaven Up Here(81年、全英10位)



Porcupine(83年、全英2位)



・Ocean Rain(84年、全英4位。ビルボード87位)



・Songs To Learn And Sing(85年。ベスト盤。全英6位)



この印象的なジャケットだけでも買う価値があると、当時思ったものでした。


エコバニは、78年に英国リヴァプールで結成されています。
中心人物でヴォーカリストのイアン・マッカロクは77年、のちにティアドロップ・エクスプローズを結成するジュリアン・コープや、のちにWAH!を結成するピート・ワイリーとともにクルーシャル・スリーというバンドを結成(後にイアンはインタビューで、そのバンドの存在自体を否定したが、何度か集まって練習したことは間違いないらしい)し、その後78年にはコープと組んでシャロウ・マッドネスなるバンドを結成します。
そしてそれも解散した後、クラブでギタリストのウィル・サージェントと出会い、そこにベースのレス・パティンソン、そしてサージェントが所有していたドラムマシンの「エコー」を加えて、ドラムレスのバンド、エコバニを結成するのです。
彼らは翌79年に地元のZOOレーベルよりシングルをリリースしてデビュー。その後エコーの代わりにドラムのピート・デ・フレイタスが加入し、全盛期の形となりました。


初期の彼らの特徴は、深いリヴァーブのかかったギターをバックに、幽玄さと衝動を併せ持ったヴォーカルが駆け抜けていくところでした。
このスタイルはたくさんのフォロワーを生み、後に「ネオ・サイケ」と呼称されるUKギター・サウンドの到来を告げることとなりました。その意味では記念碑的な存在のバンドですね。
また「ジム・モリソンの再来」と評されたマカロックは、そのモリッシーリアム・ギャラガーを足して2で割ったようなビッグマウスなナルシストぶりで、よくマスコミを騒がせていましたっけ。


Echo & The Bunnymen - Rescue


1stアルバム『Crocodiles』からのシングル。全英62位。
重々しい雰囲気のリズム、鋭い刃物のようなギター、そして豊かな情感を持ったヴォーカルが、繊細かつ緊張感のあるサウンドを生み出しています。


Echo & The Bunnymen - The Puppet


これは初期のライブです。
ぶっきらぼうなくらいに飾り気のない音ですが、演奏自体には若さを感じますね。


Echo & The Bunnymen - A Promise


2ndアルバム『Heaven Up Here』からのシングル。全英49位。
浮遊感のあるヴォーカルと、冷めた感触の演奏が、いかにもネオ・サイケな感じで良いです。


Echo & The Bunnymen - Over The Wall


初期の彼らの代表曲。
ネオ・サイケデリックという呼び名に恥じない幻想性が見事に表現されていて、ライブでも見せ場となる曲です。


そして83年リリースの3rdアルバム『Porcupine』では、よりポップな音になった他、バイオリンを導入するなどして新境地を見せるようになっていきます。
その結果『Porcupine』は全英2位を獲得するほどの商業的成功を収め、バンドも一躍英国の人気者となるのでした。


Echo & The Bunnymen - Back Of Love


先行シングルとして、82年にリリースされた曲。全英19位。
焦燥感を煽るようなギターのカッティングとマカロックのヴォーカルが、不思議なグルーヴ感を醸し出してます。
なおスピード感を煽るようなバイオリンを弾いているのは、ピーター・ガブリエル主催のWOMADフェスティバルで知り合った、インド人バイオリニストのシャンカール(シタールで有名なラヴィ・シャンカールとは別人)です。


Echo & The Bunnymen - The Cutter


これも83年『Porcupine』からのシングル。全英8位のヒットを記録しています。
エキゾティックなバイオリンを大胆に導入したコマーシャルな作りでありつつも、緊張感は保たれている作品です。
音数の少ないギターのストロークと、後半ホーンやシンセ等で盛り上げて壮大になっていくところが個人的には結構好きですね。
アイスランドで撮影されたPVも、白銀の世界とサウンドがマッチしていて、素晴らしい出来になっています。


Echo & The Bunnymen - Never Stop


83年リリースのシングル。全英15位。
エコバニには珍しく、大胆にエスニックなリズムを取り入れています。
当時あまりにダンサブルなので驚いた記憶がありますが、緊張感も失っておらずクールな音に仕上がっていますね。


前作の成功に気を良くしたのか、彼らは84年に4thアルバム『Ocean Rain』をリリースします。
この作品は大々的にストリングスを導入し、ゆったりとしたアコースティックな曲が大半を占め、それまで彼らの大きな特徴とされていた鋭いギターのカッティングが姿を消すという大問題作でありました。
そのため評価は賛否両論でしたが、セールス的には英国4位と健闘し、また87位とはいえビルボードにもチャートインしました。


Echo & The Bunnymen - The Killing Moon


『Ocean Rain』からのシングル。全英9位のヒットとなりました。
満月の夜の湖畔を思わせるようなバラードです。メロディや歌詞の切なさは絶品だと思います。
その耽美的、幻想的な曲調は当時評価が分かれましたが、確かに美しいことは間違いありませんし、自分も好きな曲です。
のちにペイブメントなども取り上げているなど、人気の高い一曲ですね。


Echo & The Bunnymen - Silver


これも『Ocean Rain』からのシングル。全英30位。
ストリングスの使い方が上品な、ポップで良い曲です。


Echo & The Bunnymen - Seven Seas


これも『Ocean Rain』からのシングル。全英16位を記録しています。
ゆったりと航海しているような、心地良いアコースティックサウンドが特徴です。


Echo & The Bunnymen - Bring On The Dancing Horses


85年リリースのシングル。ベストアルバム『Songs To Learn And Sing』にも収録され、全英21位まで上昇しました。
初期の頃から彼らを知っているととても信じられないような、クラブ系に寄ったダンサブルなサウンドになっていますね。
馬の被り物をした男が出て来て、連れ回される映像がとてもシュールです。


商業的に成功を収めた彼らですが、この頃実はバンドは危機的状況に陥っていました。
マカロックはビッグマウスの人にはありがちですが評価を気にし過ぎる一面があり、かつてライバル的存在だったU2が世界的なビッグネームになったのを意識して、アメリカで売ろうとしてさらに情緒的な側面を強めていきますが、結果サウンドからは緊張感が失われていきます。
またマカロックはソロ活動への願望を露にし、またデ・フレイタスも宗教に凝って一時バンドから離れるなど、人間関係もぎくしゃくしていました。そんな中87年にリリースした5thアルバム『Echo & The Bunnymen』はセールスこそ良かったものの評価は散々で、バンドの終わりを暗示しているようでした。
そしてアルバム発表後にはついにマカロックが脱退してソロになります。残されたサージェントらはメンバーを補充して活動を続けますが、マカロックはエコバニは終わったものとして、バンドの解散を要求し続けました。そんな中88年には、デ・フレイタスがバンドの練習に向かう途中でオートバイ事故に遭い死亡してしまいます。
それでも踏ん張って90年には6thアルバム『Reverberation』をリリースするのですが、さすがにカリスマ的なフロントマンを失ったのは大きく、商業的に大失敗に終わりかつ評価も惨憺たるものでした。その結果ついにバンドは力尽き、93年に解散します。
一方ソロになったマカロックのほうも、2枚のアルバムをリリースするものの、完全に方向性を見失っており、内容もセールスも芳しくありませんでした。


そんなジリ貧状態の中、94年にマカロックとサージェントは再び手を組み、エレクトラフィクションというユニットを結成します。
これはネオ・サイケというよりはレッド・ツェッペリンのようなハード・ロックに近い肌触りのサウンドでしたが、マカロックのソロやエコバニのラストアルバムよりははるかに良い出来で、復活を期待させました。
そして97年にはパティンソンも呼び戻し、ついにエコバニは復活することとなります。袂を分かってから10年ぶりの再始動でした。
この年にリリースされた7thアルバム『Evergreen』は、エコバニのファンであり後輩でもあるオアシスのリアム・ギャラガーのバックアップもあり、全英8位の大ヒットとなり、彼らは見事に復活を果たすのです。


Echo & The Bunnymen - Nothing Lasts Forever


『Evergreen』からのシングル。全英8位のヒットとなっています。
リラックスしたマッカロクのヴォーカルと、以前にも増してメランコリックになったメロディが強調されている一曲です。
もはやネオ・サイケとか革新性とか緊張感とかまったく関係なくなってますが、ここまで開き直られると逆に清々しいですね。


パティンソンは『Evergreen』リリース後に脱退(13年にサージェントと新バンド、ポルターガイストを結成している)してしまいますが、マッカロクとサージェントは新たにメンバーを補充し、現在もコンスタントにアルバムをリリースするなど元気に活動しています。ライブ活動も精力的に行っており、03年と05年(サマーソニック)には来日も果たしています。
またオアシス、ホール、フレーミング・リップススマッシング・パンプキンズ、コールドプレイなど彼らから影響を受けたバンドは数多く、そのためシーンからリスペクトを受けることも多いバンドです。