シスターズ・オブ・マーシー

またまたまた前回の続きです。このままではゴス・ブログになってしまいますので、今回でやめるつもりですけど。
前回のミッションの中心人物ウェイン・ハッセイが、それ以前に在籍していたバンドが今回紹介する「ゴスの帝王」シスターズ・オブ・マーシーです。
このバンドはアンドリュー・エルドリッジを中心として、80年に英国リーズで結成されました。当初はエルドリッジがギターとドラムを兼任していましたが、やがてドクター・アバランシュなるドラムマシンをメンバーに迎え(単なる機械なんだけど、正式メンバーとして数えられていた)、マシンビートに乗せた叙情的だけど無機質で重い音を出し、一部で高い評価を得ていました。


The Sisters Of Mercy - Walk Away


85年にリリースされた1stアルバム『First And Last And Always』(邦題は『マーシーの合言葉』)からのシングル。全英で46位を記録し、アルバムも14位まで上がるヒットとなりました。
淡々としたリズムにメロディアスなギターが重なり、そこにエルドリッジの重く暗いヴォーカルが乗るという、初期の彼らの特徴がよく出ている曲です。
当時聴いたときには、ドラムマシンのビートの割にはパワフルな音だな、と思った記憶がありますね。


ただこのバンドには問題がありました。それはエルドリッジの独裁癖です。
これに嫌気が差したため、メンバーのハッセイとグレッグ・アダムスが抜けてミッションを結成、もう一人のメンバーのゲイリー・マークスも脱退したため、バンドは活動停止状態となり、目前に控えた来日公演をキャンセルすることとなりました。
この後シスターズは、いろいろなメンバーが入れ替わり立ち代りすることとなり、不安定な活動を余儀なくされます。


87年にエルドリッジは、ザ・ダムドのデイヴ・ヴァニアンの妻でもあるパトリシア・モリスンを迎え入れて、シスターズを再始動させました。
新生シスターズは叙情的なメロディと重いヴォーカルこそそのままでしたが、これまでのギター中心の音作りを止め、キーボードや女性コーラスを多用してより荘厳かつドラマティックな音作りを行うようになりました。


The Sisters Of Mercy - This Corrosion


87年にリリースされた2ndアルバム『Floodland』からのシングル。この曲は全英7位という彼ら最大のヒットを記録し、アルバムもゴールド・ディスクを獲得しています。
ノリのいいエレクトリック・ビートとシンセというちょっとニューウェーブ寄りの音作りであるにもかかわらず、エルドリッジのヴォーカルが乗ると途端に暗黒の匂いが漂ってくるところはさすがだと思いますね。
アルバムに収録されているバージョンは約11分ととんでもなく長く、うかつに聴くと死にそうになるんですが、シングルはもう少し短くなってたんでしょう。


しかしエルドリッジの暴君ぶりはさらにエスカレートしていったため、モリスンもわずか2年で我慢できずに脱退してしまい、このラインナップもあっさり瓦解します。
その後元ジェネレーションXのメンバーでジグ・ジグ・スパトニックのベーシストであるトニー・ジェイムスらを迎え、ハードロックに接近した3rdアルバムをリリースしますが、音楽的にも商業的にも評価は今ひとつで、以降シスターズの活動は沈滞気味になりました。
エルドリッジは再結成セックス・ピストルズのサポートを務めるなど、散発的にライブを行うほかは、サラ・ブライトマンの楽曲のリミックスをしていたようです。エルドリッジとブライトマンの組み合わせって、どうも頭の中でうまく結びつかないですし、それ以前にあの性格でちゃんと他人と仕事ができたこと自体が驚きですけど。
ただ新作音源こそ90年以降出ていないものの、旧作3枚がリマスターされ、ベストアルバムやB面やアウトテイクを集めたアルバムもリリースされるなど、近年はシスターズの再評価も進んでいるようです。
また98年には日本ツアーを発表するも2度目のキャンセルをし(噂ではチケットが売れなかったからだとか)、結局幻のバンドに終わるかと思わせたのですが、なんと今年のフジロックに初来日がついに実現。元気な姿を見せてくれました。