ミッション

またまた前回の続きで申し訳ない。今回は初期のオール・アバウト・イヴと活動を共にすることも多かったミッションです。
ミッションは元デッド・オア・アライブのメンバーで、シスターズ・オブ・マーシーを脱退したばかりのウェイン・ハッセイとグレッグ・アダムスによって結成されたゴス・バンドで、シスターズからデジタルな部分を削ぎ落とし、より重いサウンドを展開して人気を集めました。
特筆すべきところは明らかにパンク以降の音でありながら、ブラック・サバスナザレス(懐かしい)などの英国伝統のロックの系譜も引いているところでしょうか。この原点回帰とも言うべきサウンドワークは、ゴスにありがちなアングラっぽさを廃した姿勢とも相まって、当時絶大な支持を受けていました。


The Mission - Wasteland


86年リリースの1stアルバム『God's Own Medicine』(邦題は『蒼い審判』)からのシングル。邦題は『未墾の地』。
この曲は全英では11位まで上がるヒットを記録しています。またアルバムも英国の音楽誌が,こぞってベスト・アルバムに選出するくらい好評でした。
僕が最初に聴いたのはこの曲ですね。ゴスにありがちな出口のない絶望感は薄く、そのぶん叙情性と親しみやすさが感じられる一曲です。個人的には一風変わったハードロックとして、結構気に入っていた記憶がありますね。
あと当時の彼らのステージは、何も見えないくらいガンガンにスモークを焚いていて、そういうヴィジュアル面でも評判になっていました。


The Mission - Tower Of Strength


88年リリースの2ndアルバム『Children』からのシングル。英国では12位を記録しています。
なおこのアルバムは元レッド・ツェッペリンジョン・ポール・ジョーンズがプロデュースしたことでも話題を呼び、全英2位のヒットとなり彼らのファン層を広げました。
音は前作よりも内省的に深化しており、なかなか聴かせるナンバーになっているのではないでしょうか。


The Mission - Butterfly On A Wheel


90年リリースの3rdアルバム『Carved In Sand』からのシングル。この曲も英国で12位を記録しています。
ゴス色はさらに薄まり、メジャーコードなども使ってみて、より開放的な音になっている印象がありますね。ウェインのヴォーカル以外は普通に一般受けしそう。
つーかU2の曲に似たようなのがあったような気がします。U2あんま詳しくないんで思い出せませんが。


しかしミッションは相次ぐメンバー交代、音楽シーンの変化などがあって、90年代に入ると一気に失速してしまいます。
それでも根強いファンがいたため、90年代半ばまではそれなりに活動していてシングルもチャートインしていたのですが、しまいにはジリ貧になったようで、96年には解散することになりました。
ウェインは単身アメリカに渡り、意外なゴス人口の多さを背景に98年バンドを再結成させますが、そのときには別にミッションを名乗るバンドが存在したため、バンド名にUKを付けて「ミッションUK」を名乗ることを余儀なくされました。
僕はその後の音をまったく聴いたことがなく、当然消息も知らなかったのですが、調べてみたところ結局バンドは解散前ほどの成功を収めることもなく08年には活動を終了し、ウェインはソロになっているようです。
ただ時代の徒花的な捕らえられ方をされることが多かったゴス・ムーブメントの中では、彼らほど商業的に成功し、また独自の世界を確立したバンドはいなかったわけで、その点で再評価されるべきではないでしょうか。