オンリー・ワンズ

ひとつ長尺ものの更新の下書きをしてるんですが、選曲に悩んだり当時のことが思い出せなかったりして、悪戦苦闘しております。
そうなると趣味でやってることですから、すぐに現実逃避してYouTubeに逃げちゃって、懐かしい動画あさりを始めてしまいます。でまた、こういうときに限って懐かしい動画がたくさん見つかったりするんで、ちっとも下書きが進まないという悪循環になるんですよね。
とりあえず今回も苦し紛れの小ネタとして、懐かしいパンクを取り上げたいと思います。初期パンクの中でも異色の存在だったオンリー・ワンズです。


オンリー・ワンズはヴォーカルとギターのピーター・ペレットを中心として、77年にデビューしたバンドです。
ペレットは73年にイングランド・グローリーなるバンドを率いてプロモ用のLPを作成(これは87年にリリースされた)しており、他のメンバーにもスプーキー・トゥース出身者がいたり、ゲストにピーター・フランプトンのバンドのメンバーを招いたりと、実は結構オールドウェーブな人たちでした。
たまたまパンクと登場時期が重なっていたため一緒にされてしまいましたが、実際はパンクとは音楽性もかなり異なっていました。もともとペレットはボブ・ディランルー・リードに影響を受けて歌い始めた人で、そのせいかヴェルヴェット・アンダーグラウンドが疾走感を持ったような音を出していましたね。
パンクで近い音をあえて挙げるとしたら、バズコックスやテレヴィジョン、ジョニー・サンダースあたりでしょうか。往年のロックンロールの味も持ちつつポップでした。


The Only Ones - Another Girl,Another Planet

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78年の1stアルバム『The Only Ones』に収録された彼らの代表曲。
当時この曲だけはラジオでエアチェックして、繰り返し聴いていた記憶があります。ペレットのルー・リードをヘロヘロにしたような脱力したヴォーカルと、独特の翳りや湿り気を引きずったサウンド、そしてポップなメロディーが気に入っていました。
大人になってからオンリー・ワンズのアルバムはCDで全部聴きましたが、結局この曲が一番良かったですね。


オンリー・ワンズはそのキャッチーでオーソドックスなサウンド、人間の内なる心の叫びを抽出したような歌詞を紡いでいくペレットの孤高の詩人ぶり、そしてキャリアを持つバンドの確かな演奏で、地味ながら実力派として高く評価されました。
しかし残念ながら商業的には決して成功したとは言えず、3枚のアルバムをリリースしたものの売り上げは伸び悩み(最高位は3rdアルバムの37位)、結局81年にはCBSから契約を破棄され、そのまま解散してしまいます。
解散した理由は商業的なもの以外にも、メンバーの麻薬癖がありました。特にペレットのドラッグへの耽溺ぶりは相当ひどかったらしく、最後はほとんど活動もままならなかったようです。


麻薬治療を終えたペレットが表舞台に復帰するのは、なんと94年。解散から13年を経ていました。
ペレットはまずソロとして活動を開始。初来日を果たし、アルバムもリリースしました。そして満を持して07年にはオンリー・ワンズを再結成。2度の来日もしています。
正直初期バンクの頃ではなく、80年代後半から90年代の英国あたりだったら売れたんじゃないかな(実際『Another Girl,Another Planet』は92年にシングルカットされ、57位を記録している)と思っていたので、一番いい時期に空白期だったのが惜しまれるのですが、せっかく治療して復帰したのですから、二度と麻薬に手を出さずに新たなバンド活動を楽しんでほしいものです。