ペイル・ファウンテンズ

気温が激しく上下するせいか、相変らず体調が悪いんですよね。眩暈はだいぶ治まったんですが、偏頭痛がひどくて今日の仕事も休ませてもらったくらいです。
こんな調子ですから本来なら更新も休むんですが、幸い前もって1回分だけ書いてあったので、それを貼り付けて今日は寝ることにします(さっきまでも寝てたけど)。
皆さん、季節の変わり目は体調を崩しやすいですから、ご自愛下さいませ。


さて今回取り上げるのは、懐かしのペイル・ファウンテンズです。日本ではネオアコ好きの間で神格化されているバンドですので、ご存知の方も多いのではないかと思います。
彼らは81年英国リバプールで、フロントマンのマイケル・ヘッドを中心に結成されました。
その特徴は青春期の感情の機微を細やかに描いた、瑞々しいアコースティック・サウンドと、切なさと青さが交錯したマイケルの歌声、そしてバート・バカラックやラヴ、ジョン・バリーなどの作風を下敷きにしたと思しきソングライティングの巧みさでしょうか。
またネオアコの枠にとどまらず、ソウルやジャズ、ラテンなどを上手く取り入れたりもしているんですが、にもかかわらずその透明感は失われていないところも素晴らしいです。


彼らは82年、ベルギーのクレプスキュール・レーベルからシングル『(There's Always) Something on My Mind』でデビューします。
僕はそれを後にクレプスキュールのコンピレーションで聞いたんですが、小品ながらその繊細な響きと哀愁味あるメロディーに感銘を受けたんでしたっけ。


The Pale Fountains - (There's Always) Something on My Mind


これがそのシングル。
正確にはクレプスキュール盤ではなく、クレプスキュールの英国支部のようなレーベル、オペレーション・トワイライトからのヴァージョンです。といっても違っているのはピアノが入っているところくらいで、あとはほとんどクレプスキュール盤と一緒なんですが。
のちに1stアルバム『Pacific Street』にも『Something On My Mind』の名で収録されてはいるんですが、アレンジ過多な感じで今ひとつ気に入らなかったんですよね。やはりこの曲はシンプルに演奏しないと。
この曲はセンチメンタルなサビのメロディーも良いんですけど、アンディ・ダイアグラムの吹くトランペットの響きが、なんとも寂しげな感じで良いと思います。


The Pale Fountains - Just a Girl


『(There's Always) Something on My Mind』のカップリング曲。日本ではこちらの曲のほうが評価が高いようですね。
いかにも「青春」を感じさせるような切なさと甘酸っぱさはむせ返るほどのレベルで、いかにもペイル・ファウンテンズだな、という感じがします。


彼らはこのシングルで高く評価され、メジャー・レーベル間での争奪戦が展開されましたが、結局ヴァージン・レコードと13万ポンドの契約金で契約します。


The Pale Fountains - Thank You


82年にヴァージンからリリースされたシングル。全英48位に入り、彼らの唯一のヒットとなっています。
この曲もめっちゃ青いんですけど、ドラマチックに高揚する展開を持っていて、なかなか泣ける仕上がりとなっていますね。


The Pale Fountains - Palm of My Hand


これもヴァージンからリリースされたシングル。
トランペットとストリングスの絡みが見事な青さと哀愁を醸し出す、素晴らしいポップです。


彼らはこんな感じで数枚のシングルをリリースした後、84年に名作との誉れ高いアルバム『Pacific Street』をリリースしました。


The Pale Fountains - Reach


『Pacific Street』のオープニングを飾る曲。邦題は『青春はいちどだけ』。
彼らには珍しく歯切れのいいリズムと速めのテンポ、景気の良さなどを持ち合わせており、なおかつ彼ら特有の透明感や青さは失っていないという爽快な曲です。
思春期にありがちな切迫感や緊迫感、そしてそれを乗り越えていくんだという前向きな気持ちも感じられて、聴いていて気分が高揚してきますね。


The Pale Fountains - You'll Start a War


84年にリリースされたシングル。『Pacific Street』から唯一PV化されている曲です。
いい曲だと思うんですけど、まったくヒットはしなかったようで残念ですね。


このアルバムは一部のファンからの評価は高かったものの、全英チャートは最高85位と振るいませんでした。
その後ダイアグラムは脱退し、バンドは後釜にマイケルの弟ジョンを迎え、85年にはライトニング・シーズのイアン・ブロウディのプロデュースで、よりロック色を強めた2ndアルバム『...From Across The Kitchen Table』をリリースします。
このアルバムはディストーションを効かせたギターが目立ち、サウンド自体の印象はだいぶ変わってしまったんですが、溌剌としたメロディとマイケルの胸の奥まで響く切なさを滲ませた歌声のマッチングは相変らず抜群で、曲の粒も揃っていました。
日本のコアでないペイル・ファウンテンズのファンは、ほとんど例外なくと言っていいくらい1stのファンで、2ndアルバムは意外と評価が高くないんですけど、このアルバムも名盤だと個人的には思っています。


The Pale Fountains - Jean's Not Happening


85年にリリースしたシングル。
ホーンやストリングスの巧みな使い方と、少年期の潔癖さをそのまま音にしたような、まっすぐなサウンドが印象に残ります。


同年彼らは来日し、中野サンプラザなどでライブを行っています。この模様はラジオで放送され僕も聴いたんですが、下手だったことしか印象に残ってませんww
このときの中野は、行った人の話によると寂しい入りだったそうです。当時はまだネオアコ界隈で持て囃される前で、彼らの人気も微妙だったんでしょうね。


結局起死回生を狙った2ndアルバムも、全英94位とセールス的には惨敗しました。その後すぐヴァージンとの契約も終了し、バンドは解散してしまいます。
マイケルはジョンと共にシャックを結成、06年までに5枚のアルバムを発表しています。途中脱退したダイアグラムは、一時期ジェイムスのメンバーになっていたこともありました。
このように不遇だったペイル・ファウンテンズですが、のちにオアシスのメンバーが彼らに対するリスペクトを表明したこともあって、本国イギリスでは今さらのように評価が高まっているようです。
そしてそれを受けてなのか、ペイル・ファウンテンズは08年に、バンド解散後すぐに亡くなったベースのクリス・マカフリーを除くオリジナルメンバーで23年ぶりに再結成され、2日間だけライブを行いました。


The Pale Fountains - Thank You


これがその時のライブ映像だそうです。
画質が悪く何が映ってるのかほとんど分からないんですが、音はもう何ひとつ変わってないのがいいですね。泣けます。