レコーズ

今日も友人と会うため出かけなければならないので、多少あっさりした更新になることをご了承下さい。
今回取り上げるのは、70年代末から80年代初期にかけて、パワーポップ界で活躍したレコーズです。
と言ってもほとんどの方は知らないんじゃないでしょうか。僕もリアルタイムで聴いたわけじゃなく、80年代後半にヴァージン・レコードのコンピレーションで知ったくらいですから。


レコーズは60年代後半からキャリアを積みパブ・ロックでは知られた存在でもある、カーサル・フライヤーズのドラマーだったウィル・バーチを中心にして、77年に結成されたグループです。
音は基本的にドクター・フィールグッドをポップにしたようなロックンロールだったんですが、彼らのような男気や破天荒な面はあまり感じさせず、どちらかというと行儀のいいパワーポップという感じでした。
英国のパワーポップはひねりの効いたサウンドが多かったんですが、彼らはちょっと違っていて、かつてのバッドフィンガーやラズベリーズを思わせるような、アメリカっぽいポップ(バッドフィンガーはアメリカのバンドじゃないけど)を聴かせるのが特徴でしたね。
彼らは78年にエルヴィス・コステロなどで知られるスティッフ・レコードに雇われて、当時売り出し中だったレイチェル・スウィート(この人は今どうしてるんだろ)のバックを務めて注目され、見事ヴァージン・レコードとの契約を勝ち取り、翌79年にメジャーからのデビューを果たします。


The Records - Starry Eyes


これがデビュー・シングル。1stアルバム『Shades In Bed』にも収録されています。
本国ではまったくと言っていいほど売れなかったらしく、調べても一切検索に引っかからなかったんですが、アメリカでは案外好評で、ビルボードで56位に入っています。
当時アメリカではニック・ロウの『Cruel To Be Kind』やイアン・ゴムの『Hold On』がヒットするなど、パブ・ロック出身のパワーポップが多少流行ったので、彼らもその恩恵を受けたのかもしれません。
曲はというと、甘いハーモニーを十分に効かせた端整なアレンジと、キュートでありながらどこかもの悲しいヴォーカルとメロディが印象に残る、なかなかのポップチューンです。
今もパワーポップ・クラシックとして局地的に人気が高く、輸入盤のコンピレーションにはよく収録されている隠れた名曲ですね。


しかし彼らはこの後2枚のアルバムをリリースしますがヒットはなく、82年にはあっさり解散してしまいます。
解散後バーチはサーチャーズ(古っ)に曲を提供したり、プロデューサーを務めたり(ネオ・モッズのメイキン・タイムなどをプロデュースしたらしい)、レーベルを立ち上げたりと、主に裏方を務めたようです。
また僕は読んでないんですが、パブ・ロック・シーンを回顧する『パブ・ロック革命』という本も執筆しています。これはかつて日本でも出版されましたが、今は絶版のようですね。
amazonのレビューを読む限り面白そうなんですが、中古にはかなりいいお値段がついています。



それとこれは調べていて驚いたんですが、レコーズ自体もいつの間にか再結成していて、08年にはなんと来日もしているそうです。
こういうマイナーなバンドが普通に来ちゃうなんて、日本ってもしかしてすごい国なんじゃないかと、ちょっと感心してしまいますね。