ウィーザー

なんかすっかり更新の滞るようになってしまったこのブログなんですが。
原因はいろいろあるんですけど、もともと鬱を病んでいるうえに夏バテが重なり、おまけに右足ふくらはぎ肉離れでしばらく松葉杖がないと歩けなかった、という身体的な不調が大きいです。まあそれにかこつけてサボっていたところもあるんですが(苦笑)。
まあそれはそれとして、最近少しずつ体調も良くなってきましたし、もうちょっと頑張ってかつてのようなペースを取り戻していきたいな、と思っています。思っただけでできれば苦労はしないんですけど。


今回は久々にオルタナ以降のバンドであるウィーザーを取り上げてみます。このバンドは好きなんですよね。
オルタナ以降のロックというと、僕ら世代はうるさい音を想像しがちなんですけど、実際それらは必ずしもヘヴィ一辺倒というわけではなく、その中にはメインストリームでも十分通用するような、美しいメロディーを持ったポップなバンドも数多くあります。その中で代表格としてまず名前が挙がるのがウィーザーですね。
彼らはポップで泣きの要素のたっぷり詰まったメロディと、ラウドなギターサウンドを最大の特徴としています。その作風から「泣き虫ロック」と呼ばれ、パワーポップ(この言葉自体は70年代末には存在しましたが)というジャンルを確立しました。


ウィーザーリヴァース・クオモを中心として、92年に米国ロサンゼルスで結成されました。
翌年にはゲフィン・レコードの傘下であるDGCというレーベルと契約してニューヨークに移り、翌年アルバム『Weezer』(通称は『The Blue Album』)でメジャーデビューを果たします。
するとこのアルバムが300万枚を売り上げる大ヒットとなり、一躍彼らはポスト・グランジの代表格と目されることになりました。
当時僕もこのアルバムは、比較的早くに入手した記憶がありますね。個人的には、まず元カーズのリック・オケイセックがプロデュースしたということで注目したんですが、とにかくジャケットに写っているメンバーが冴えない、と言うかナード*1な佇まいが、どうにもグランジ全盛のロックシーンには似つかわしくなくて、逆に興味を引かれました。
このアルバムジャケットを見て、フィーリーズの『Crazy Rhythms』のジャケットに似てるな、と思ったりもしたんですが、誰に話してもみんなフィーリーズ自体を知らなくて、ちょっと断絶感を味わったのも良い思い出です。
まあそれはそれとして、実際このアルバムを聴いてみて、その泣きメロとシンプルな音作りが非常に気に入ってしまったんですが。


Weezer - Buddy Holly


Weezer』(『The Blue Album』)からのシングル。ビルボードで18位、全英12位のヒットとなりました。
キャッチーなフレーズと、ディストーションかかりまくりのギターが心地よい曲ですね。泣きのフレーズがどうとか以前に、不思議と切なくなるエモーショナルな雰囲気に満ちています。
ちなみにPVの監督はスパイク・ジョーンズ*2。このPVでウィーザーは一躍有名になりました。


Weezer - Say It Ain't So


やはり『Weezer』(『The Blue Album』)からのシングル。全英37位、ビルボードでは51位。
実は僕が一番最初に聴いた彼らの曲です。この泣きのメロディーにはまりましたね。



96年には2ndアルバム『Pinkerton』がリリースされます。このアルバムは歌詞の大半が失恋の恨みつらみという、ある意味強烈な個性の炸裂した一枚でした。
前作に比べるとディストーションのかかったギターでガンガン押すようなハードな面が目立つ作品ですが、メロディーのクオリティーはしっかり保たれています。


Weezer - The Good Life


『Pinkerton』からのシングル。ビルボードオルタナティブ・ソングチャートで32位と不発でした。
轟音ギターとポップなメロディの融合された曲で、なんとあのハノイ・ロックスの『Cafe Avenue』に影響を受けて作ったんだとか。


しかし『Pinkerton』はアメリカでは50万枚しか売れず失敗作扱いされました。個人的には50万枚でもすごいと思いますが、前作と比べられると仕方ないのかもしれません。
おまけにアルバムタイトルのおかげで、有名なピンカートン探偵社に訴えられるという事件まで起きています。
これはプッチーニのオペラ『蝶々夫人』から取ったというウィーザー側の主張が認められ、訴訟は取り下げられるのですが、そんなこんなで嫌気が差してしまったのか、リヴァースはハーバード大学に入学し、ボストンに移ってしまいます。
しかもその後、リヴァースの相棒であり心の支えでもあったベースのマット・シャープが脱退してしまったため、バンドは解散状態に陥ってしまうのです。


そんな状態だったウィーザーが復活するのは00年。マットの後任にボストンで出会ったマイキー・ウェルシュを迎え入れ、ツアーを行いました(サマーソニックにも来日している)。
そして翌01年、再びリック・オケイセックをプロデューサーに迎え、3rdアルバム『Weezer』(通称は『The Green Album』)をリリースするのです。
このアルバムはビルボードて4位のヒットとなり、プラチナディスクを獲得していますが、初期からのファンの間ではあまり評判がよくなかったように記憶しています。
個人的には確かにインパクトの弱くなった面はあるものの、捨て曲のない最高級のポップアルバムだと思ったのですが、いろいろ難しいです。


Weezer - Island In The Sun


Weezer』(『The Green Album』)からのシングル。全英31位。ビルボードは111位。
切なく郷愁感に満ちたメロディーと、透明感や浮遊感が心地よいですね。この曲がウィーザーの中で僕の一番のお気に入りであります。
ちなみにこの曲のPVは2つあるんですが、ここではスパイク・ジョーンズが監督したほうを挙げておきます。


Weezer - Photograph


同じく『Weezer』(『The Green Album』)からのシングル。ビルボードオルタナティブ・ソングチャート17位。
キャッチーなメロディーとポップなサウンド、そしてあっさり感が素晴らしい曲ですね。60年代入ったコーラスがいい味出してます。


この年ベースのマイキーが自主的に精神病院に入院し、そのまま脱退するというアクシデントが起こりました(その後マイキーはアウトサイダーアートの芸術家に転進するが、昨年死去している)。
バンドは後任にスコット・シュライナーを迎え、02年には4thアルバム『Maladoit』をリリースします。


Weezer - Dope Nose


『Maladoit』からのシングル。ビルボードオルタナティブ・ソングチャート8位。
珍しくギターがハードロックっぽいですが、メロディーは変わらぬウィーザー節です。


4thアルバム発売後、ウィーザーはしばし活動を停止しますが、05年にはあのリック・ルービンのプロデュースで、5thアルバム『Make Believe』をリリースします。


Weezer - Beverly Hills


『Make Believe』からのシングル。ビルボードで10位、全英では9位となり、また全米カレッジ・ラジオ局で最多オンエア回数を稼ぎ、彼ら最大のヒット曲になっています。
思わずシンガロングしたくなるようなキャッチーなサビとヒップなノリを持ちつつも、相変らず歌詞は「ダメな僕」な感じで、そのへんのバランスが好きですね。


Weezer - Perfect Situation


これも『Make Believe』からのシングル。ビルボードで51位。
弱々しくも繊細なメロディーが、初期のアルバムに入っていてもおかしくないようなウィーザー節でいいですね。
らしくない長めのギターソロも好きです。


Weezer - Pork And Beans


08年にリリースされた6thアルバム『Weezer』(通称は『The Red Album』)からのシングル。全英33位。ビルボードでは64位。
もともとシングルとしてリヴァースが用意した曲があったのですが、もっとキャッチーなものをとつき返されたため新たに作られたといういわくつきの曲ですが、売れっ子のティンバランドを歌詞で皮肉るなど、結構面白い曲になっています。
またYouTubeで爆発的ヒットを記録した映像のご本人がゲスト出演し、パロディネタを次々再現するというこだわりのPVは、グラミー賞の「Best Short Form Music Video」を獲得しています。
何しろミニモニ。(偽者だけど)や『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』まで出てきますから。このへんは日本人の奥さんを持つ親日家のリヴァースならではですね。


その後もウィーザーはアルバムをリリースしたりライブしたりと、精力的に活動しています。
日本にもフジロックや、『Weezer』(『The Blue Album』)や『Pinkerton』を再現するライブなど、何度も来日を果たしていますし。
昨年の来日時にファンをバックステージに集めて、AKB48の『ヘビーローテーション』を披露した動画は、前に紹介しましたっけ(2011-07-26)。
一応ファンなので、彼のツイッターもフォローしていますが、たまに妙な日本語のツイートが送られてきたりして、結構面白いですよ。

*1:英語圏で用いられるスラング。一般的な意味としては「ダサい(人)」のことを指すが、転じて知識が豊富で社交性に乏しい人のことを指すようになった。日本で言う「オタク」。

*2:映画監督。代表作は『マルコヴィッチの穴』や『ジャッカス』シリーズなど。ビョークビースティー・ボーイズケミカル・ブラザーズなど、PVも数多く手がけている。