ドクター&ザ・メディクス

今回はドクター&ザ・メディクスです。
と名前を出しても知らない人のほうが多いでしょうね。この人たちはまごうことなき一発屋ですから。


彼らは82年に英国ロンドンで、有名DJのドクター(本名はクライブ・ジャクスン)を中心に結成され、のちに女性2人を含む6人組として、85年にXTCのアンディ・パートリッジのプロデュースによるEPでデビューしました。
当時のロンドンのクラブシーンでは、過去の音楽を単にノスタルジーとしてではなく、現在進行形のものとして評価する動きがあり、そんなムーブメントの中で彼らのサイケな音やルックスも注目を集めるようになります。
そして続いて86年にリリースしたシングル、『Spirit In The Sky』が全英1位の大ヒットを記録し、一躍シーンの寵児となりました。


Doctor & The Medics - Spirit In the Sky


この曲はノーマン・グリーンバウムのカバーで、1stアルバム『Laughing At The Pieces』にも収録されました。
「僕が死ぬ時は、僕の体を横たえてくれ。一番素敵な場所に行くんだ。空に浮かぶ精霊の処へ」というフラワー・ムーブメント丸出しの歌詞と、軽いけど案外まっとうなサウンド、そしてドクターの柔らかい歌声が特徴です。
しかしそれよりも何よりも目に付くのは、彼らの奇怪なルックスですね。ドクターのとんがりヘアーと珍妙な衣装やメイク、2人の女性のゴスを勘違いしたような不気味な扮装はむちゃくちゃインパクトがありましたっけ。
当時日本の洋楽雑誌では一貫してキワモノとして扱われていた記憶がありますけど、この見た目じゃそれも当然だなと思わず納得してしまいます。一目見てこいつらは絶対一発屋になる、と確信したのを覚えていますよ。実際そのとおりになりましたし。
ちなみにオリジナルのノーマン・グリーンバウムのほうも、この曲だけが売れた一発屋です。彼はその後農場を経営し、有機農法や養鶏に精を出すという、リアルヒッピーにありがちな人生を送っているそうです。


僕の予想通りバンドはこの曲以外ヒットが出ず、何枚かアルバムを出したあと自然とフェードアウトします。
ドクターは何を思ったのかカタツムリの養殖にも手を出すのですが、91年にインフルエンザのためカタツムリのうち5万匹が死ぬという大損害を被るなどして、なかなか大変だったみたいです。
そんな彼らの風向きが変わったのが03年です。この年英国のチャリティー企画でアイドル歌手のギャレス・ゲイツが『Spirit In the Sky』をカバーしリバイバルヒットさせました。これによってドクター&ザ・メディクスも改めて注目され、デレビに出演するなどあくまで懐メロ歌手的な扱いではありますが活躍するようになります。現在はクラブのイベントなどでゲストとして招かれることが多いようです。
その頃の写真も見ましたが、イカ天のバンドが現代に蘇ってきたような感じで、相変らずキワモノ丸出しでした。根っからそういう体質なんでしょうね。