クラシックス・ヌーヴォー

まだ本調子じゃないんで、今日も小ネタで行きます。
今回のネタは、またまたニューロマ時代から引っ張ってきましたクラシックス・ヌーヴォーです。どれくらい覚えている人がいるんだろうな、このバンド。


80年代前半の英国というのは、他の時代にはいないような変なバンドが目白押しだったんですが、その中でも特に見た目が変だったのがクラシックス・ヌーヴォーでしょう。
とにかくヴォーカリストのサル・ソロのルックスが半端じゃありませんでした。スキンヘッドに白塗りメイクですから、『吸血鬼ノスフェラトゥ』と見まがうばかりの強烈さでした。
当時の英国ではニュー・ロマンティックというブームが吹き荒れており、デュラン・デュランがフリフリのシャツを着ていたり、スパンダー・バレエケルト人みたいな格好していたり、アダム・アントが海賊の格好をしていたりしてたんですが、そのへんがまともに見えるくらいサル・ソロの出で立ちはすごかったですね。
そのある意味ゴスを先取りしたような彼のルックスは、まさに時代の仇花と呼ぶにふさわしい異形ぶりでした。そのインパクトのせいで、まだ音を聴いたことがなかった時点でも、バンドの名前だけはしっかり覚えてましたね。


ただルックスだけ見てキワモノと判断するのはまだ早い。音自体はダンス・オリエンテッドなエレポップ・サウンドで、なかなか悪くなかったのですから。
太い声からファルセットまで自在に使い分けるサル・ソロのヴォーカルはなかなか聴き応えがありましたし、その無闇にドラマチックでクラシックなサウンドとのマッチングは、なかなかオツなものがありました。僕も当時結構気に入っていてシングルはよく聴いてましたっけ。
またサル・ソロは全ての楽曲を書き、プロデュースも手がけていたのですから、見た目の異常さに似合わずなかなかの才人だったのでしょう。


Classix Nouveaux - Guilty


81年のデビューシングル。1stアルバム『Night People』(邦題は『夜行人間』)にも収録され、全英43位を記録しています。
シンセを絡めたポップなダンス・ミュージックで、ニュー・ロマンティックの周辺とリンクしそうだったにもかかわらずそうならなかったのは、やはりそのキワモノ臭のせいなんでしょうか。


Classix Nouveaux - Is It A Dream


82年の2ndアルバム『La Verite』からのシングル。全英11位まで上昇し、彼ら最大のヒットとなっています。
曲自体もなかなかいいんですが、剣道を取り入れた意味不明なPVが、無闇にインパクトが強いです。サル・ソロも白塗りメイクを落とし、精悍な感じで勝負に出ていますね。


しかしこの後彼らにヒットは出ず、83年の3rdアルバム『Secret』を最後に活動を停止してしまいます。
音もステージングも派手でハッタリが効いていますし、いろんな意味で諧謔性もかなり強いので、一度見たり聞いたりする分にはかなり面白いんですが、どうしても飽きられやすいんでしょうね、やっぱり。
コンセプト、サウンド、ファッションと手の内にカードは全部揃っていたにもかかわらず、一発ヒットしか出すことができなかったんですから、運もなかったんでしょう。


その後サル・ソロは文字通りソロに転じ、85年にアルバムを出しましたが売れませんでした。
また84年から86年にかけて、フランスのスペース・ロック(要するに初期ピンク・フロイドホークウインドみたいな音)・バンド、ロケッツにヴォーカリストとして参加していたこともあるそうです。


【追記】

サル・ソロの現在のホームページがありました。


Sal Solo


どうやら現在の彼は敬虔なクリスチャンとなり、教会での活動を通じて音楽を発表しているようですね。
ポップ音楽から教会音楽に活動のベースを移した人というと、世代的に久保田早紀(現在は音楽家久米大作と結婚し、本名の久米小百合を名乗っている)をどうしても思い出してしまうのですが、サル・ソロも同じような道を進んでいるというのが驚きです。
あんな吸血鬼ノスフェラトウみたいなルックスだった人が、そういう方面に行き着くまでの精神面での変化に興味があるところですが、とりあえず今が充実しているのなら、それはそれでいいんじゃないかと思います。