ドゥルッティ・コラム

昨日コメントを頂いて思い出し、久々に聴いてみました。というわけで、今回はドゥルッティ・コラムです。
ドゥルッティ・コラムというのはヴィニ・ライリーのソロ・プロジェクトです。彼はもともとパンク・ムーブメントに触発されてバンドを組んでいましたが、生来の病弱のため長続きせず、療養を経てこのプロジェクトを発足させています。
名前の由来がスペイン内乱でアナーキストが率いた義勇軍の名称、ということからも分かるように、ライリー自身はパンクな精神の持ち主なんですが、発せられる音はいかにも繊細で、そういったバックグラウンドを感じさせません。
センシティブで美しいギター、エフェクトがかけられていて儚げなヴォーカル、聴く人の気分や環境によっていろいろな心象風景を見せてくれる万華鏡のようなサウンドは、ポスト・パンク世代の中でもあまりにも異彩を放っていて、孤高を感じさせるほどでした。


The Durutti column - Sketch For Summer


79年の1stアルバム『The Return Of The Durutti Column』のオープニングを飾った曲。
リズムマシーンとギター、シンセによるバックトラックだけという、これ以上ないくらいシンプルな音ですが、何か足りないという気はまったくしないくらい、無駄を徹底的に省いたアンビエントな音楽になっています。
ちなみにこのアルバムは、初回盤のジャケットが茶色の紙やすりでできていました。他のアルバムと並べて置いておくと、それらを傷つけずにはいられないという、いかにもパンキッシュなギミックでしたね(持っていたわけではなく、中古盤屋で見たことあるだけですが)。それ以降のジャケットは、黒地にラウル・デュフィ*1の絵があしらわれていましたっけ。


The Durutti Column - Never Known


81年の2ndアルバム『LC』に収録された彼の代表曲。これにはPVがありました。ちょっと驚きです。
胸に染み入るような切ないギターの音と、イントロのシュコシュコとしたリズムボックス、そしてくぐもって淡々としているライリーのヴォーカルが印象に残る名曲ですね。
水の中をゆっくり流れていくような不思議な浮遊感と、夏の日差しを反照する水面を思わせる静かな佇まいがたまりません。


The Durutti Column - The Missing Boy


同じく『LC』収録曲。当時はこの曲が一番お気に入りだった記憶があります。
ジョイ・ディヴィジョンの故イアン・カーティスの死を悼んで作った曲だと聞いています。そのせいか彼には珍しく、切迫感とか焦燥感を感じさせる音のような気がしますね。
よたっているようなブルース・ミッチェルのドラムスが、ヘタウマな感じでいい味出してます。


枯淡の境地のような世界ですが、ヒーリング・ミュージックのような癒し系かと聞かれると必ずしもそうとは言えないのがいいところですね。
簡素な中にも、心情に即した昂ぶりや高まりや揺れる想いが秘められていて、聞いていて感覚が研ぎ澄まされていく感じがします。

*1:20世紀のフランスを代表する近代絵画家。透明感がありファッショナブルでカラフルな画風の作品が多く、「色彩の魔術師」の異名をとった。