デッド・カン・ダンス

今日はちょっとマイナーに、デッド・カン・ダンスをいきます。
彼らはブレンダン・ペリーとリサ・ジェラルドのコンビとして、81年にオーストラリアで結成されました。
その後ロンドンに渡り、コクトー・ツインズバウハウスピクシーズステレオラブなどで有名な4ADレーベルと契約、そのダークかつゴシックな雰囲気と、各地の民族音楽の手法を融合した独特のスタイルで、独自の地位を築いていきます。
音楽性が音楽性なので、商業的な成功というものからは無縁でしたが、その他に類を見ない不思議な音世界と、その音楽のイメージを的確に伝えるアートなジャケットは評価が高かった記憶があります。


Dead Can Dance - The Host Of Seraphim


88年リリースの4thアルバム『The Serpent's Egg』に収録されている曲。彼らにはPVがほとんどないようなので、これで音だけでも聞いてみて下さい
この曲はストリングスやオルガンの持続音を巧みに使ったアンビエントな雰囲気の曲で、彼らの中でも屈指の名曲とされています。
音数そのものはかなり絞られていて、肉声の持つ力を最大限に活かそうとしている印象を持ちますね。ただとっつきは悪いかもしれませんが。


90年代に入るとリサはソロ活動をするためオーストラリアに戻り、一方ブレンダンはアイルランドで古い教会を購入し、そこに住み着いて音楽制作を行うようになりました。
デッド・カン・ダンスとしての活動は、音源をやり取りしたり、お互いの元に赴いたりして行っていたようです。傍から見るとまだるっこしいようにも思えますが、ブレンダンはのちに「距離という問題は創作活動上におけるある種の個人的自由を維持するために役立った」と発言していたそうです。グループ活動よりもお互いの音楽を追及したかった彼らにとっては、これがベストの方法だったのでしょうね。
また彼らは、92年のアルベールビル冬季五輪のオープニング・セレモニーで、パフォーマンスを披露しています。当時見たような気はするんですが、あんまり記憶には残ってません。


Dead Can Dance - As The Bell Rings The Maypole Spins


90年リリースの5thアルバム『Aion』に収録されている曲。これもPVはありません。
バグパイプの音色をフィーチャーした曲なのですが、なぜかリズムトラックは妙にデジタルな感触で、そのミスマッチ加減が印象に残ります。
リサのヴォーカルも、何を歌っているのかさっぱり分からない(彼女は基本的に英語では歌わない)のですが、そのぶん神秘的な色彩を強く放っています。


Dead Can Dance - The Carnival Is Over


93年リリースの6thアルバム『Into The Labyrinth』に収録されている曲。彼らには珍しくPVもあります。
彼らにしてはゴシック的な要素が少なく、メロディアスでわかりやすい旋律の曲です。けだるく夢見心地なムードと、螺旋状に回転していくようなシンセのアレンジが素晴らしい曲ですね。
PVも4ADレーベルの面目躍如と言うべき、アート感覚溢れる力作です。スロバキアの映像作家オンドレイ・ルダフスキ(正確な発音かは不明)が監督しているそうですが、謝肉祭のパレードや仮面劇をモチーフとした美しい映像は、思わず息を呑むくらいです。


結局物理的な距離の遠さは活動の妨げとならないわけがなく、またお互いがさらにソロへの傾斜を強めたことから、デッド・カン・ダンスは98年に解散しました。しかし解散後も彼らはそれぞれのソロ活動に勤しみ、多くの作品を発表しています。
特にリサのほうは、リドリー・スコット監督の映画『グラディエーター』に音楽を提供し、主題歌『Now We Are Free』も歌い、ゴールデングローブ賞の音楽賞も受賞するなど活躍が目立っています。
昨年はNHK大河ドラマ龍馬伝』のメインテーマを歌っていますから、知らずに彼女の歌声を聴いている人も多いのではないでしょうか。
またデッド・カン・ダンス自体も05年には再結成し、アルバムこそ出していないものの時おりライブを行っています。