ブラック・サバス

あのブラック・サバスが、オリジナル・ラインナップで再結成するというニュースが入ってきました。


ブラック・サバスがオリジナル・ラインナップで再結成。新作とツアーを計画中とト二ー・アイオミが明言 (2011/08/17) 洋楽ニュース|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)


かつて一時的に再結成したとき、今後はオリジナル・メンバー以外のメンツではブラック・サバスとは名乗らないと宣言したため、オジー・オズボーンも忙しいことですしもう次の再結成は望み薄かと思っていたのですが、どうやら実現しそうな運びとなってきました。これは個人的には喜ばしいことですね。


ブラック・サバスは1970年にデビューして、数々の伝説を残したバンドです。まあ伝説といっても酒とドラッグ絡みばっかりですけど。
メンバーはシラフのときのほうが少ないほどのアルコール耽溺ぶりで、デビュー契約のこともベーシストのギーザー・バトラーは
「あの頃はいつも酔っ払っていたし、いつ契約を結んだかとか、そんなことも全然覚えていない」
なんて述懐しているくらいですし、バンドで最も正気を保っていたとされるギターのトニー・アイオミですら、ドラムスのビル・ワードの足にライター・オイルをかけて火をつけたり、レコード会社のパーティーの食事に自分の大便を混入させたりするという暴走ぶりでしたから(ドラッグやアルコールのせいなのか、それとも天然なのかは不明)。
彼らの音楽的な特徴はオジー・オズボーンの酔っ払ってるようなヘタウマのヴォーカルと、トニーの弾く地を這うような重く歪んだ低音のギターリフを延々と重ね続けるという構成、そしてそこから生じる強烈な中毒性でしょうか。
ブラック・サバスのベスト盤(2枚組)を聴いていて、そのあまりの単調さに最初は
「これは多分葉っぱ(要するにマリファナのこと)をやりながら聴く音楽なんだから、しらふじゃ絶対無理」
とか思ったんですが、聴いているうちにだんだんそこが気持ち良くなってきて、やっぱりサバスはすごいと思い直したことがありましたっけ。
あまりにもシンプルで重く、変にテクニカルな面にも走らなかったせいか、現在のメタルにも影響力が強く、ブラックメタルドゥームメタルストーナーロックといった新ジャンルにおいても、その源流として扱われることが多いバンドです。
ちなみにこの重く歪んだリフを繰り出すギターのトニーは、17歳のときに勤務先の工場のプレス機に右手の中指と薬指を巻き込んで、第一関節まで切断してしまっていますが、指先にキャップをつけることでギターを続け、現在の独特のスタイルを確立しています。もともと彼は左利きなのですが、その件があって右手でフレットを押さえるため、あれだけヘヴィな音なのにギターの弦は極細なんだそうです。


Black Sabbath - Paranoid


ブラック・サバス最大の名曲。
シンプルなリフとキャッチーなメロディー、ドライブ感のある演奏が印象的ですが、それよりも何よりも、精神にダメージを負った男が自分の窮状を延々と訴え続けるという歌詞が凄いです。
ジーのヴォーカル自体が、いかにも精神的にアレな感じ満載なんで、すごくぴったりとハマるんですよね。
ビルボードで12位、全英では4位と、あまりヒットチャートには縁のなかったこのバンドとしては望外のヒットを記録してもいます。社会から疎外された狂人をテーマにした曲が、英米のチャートでトップ10に入るヒットになったのは、もしかしてこれが初めてじゃないでしょうか。オジーは「みんな歌詞を聞いてなかったんじゃないか」と笑ってますけど。
のちにメガデスなどもこの曲をカバーしていますが、この湿った感じは出せなかったですね。


Black Sabbath - Iron Man


プロレスラーのロード・ウォリアーズの入場テーマということで、あまりにも有名な曲。
初期ブラック・サバスらしいヘヴィかつおどろおどろしい曲で、特にイントロのリフがとてつもなくカッコいい曲であります。
まあイントロが素晴らしすぎるせいで、いざオジーの酔っ払ったようなヴォーカルが入ると腰が砕けそうになるんですがww
この曲もメタリカを始めとして多くのバンドがカヴァーしていますが、なかでも異色なのはスウェーディッシュ・ポップの旗手カーディガンズも演奏しているところでしょうか。


The Cardigans - Iron Man


3rdアルバム『First Band on the Moon』に入っていたと思いますが(違ったかも)、初めて聴いた時は爆笑しました。
確かによく聴くと間違いなく『Iron Man』なんですが、とにかくお洒落過ぎてかえってギャグにしか聴こえなかったですね。
意外にもカーディガンズのギタリストはヘヴィメタルデスメタルが大好きということで、サバスの他にもオジー・オズボーンシン・リジィもカバーしています。


脱線しました。ブラック・サバスに戻ります。


Black Sabbath - Neon Knights


酒と薬物に溺れたうえ、ツアーの重圧、離婚、父親の死などで精神異常をきたしたオジーが脱退した後、後任に元レインボーの故ロニー・ジェイムス・ディオを迎えて発表された一作。
思わずレインボーと聴き間違えるような音で、オジー時代のサバスを基準にして考えると違和感ありまくりですが、これはこれで疾走感溢れる名曲です。
旋律はかなり様式美メタルっぽくなってますが、よく聴くと元々のヘヴィなリフはそのままだったりして、そのハイブリッドさも面白いなと思いました。
それにしてもロニーの歌唱はやっぱり凄い。そしてトニーってこういうソロも弾けたのねww


ロニー脱退後は、オジー、イアン・ギラン、グレン・ヒューズロブ・ハルフォードなど、物凄いメンバーが短期的にヴォーカルを務めて活動していました(レイ・ギランとかトニー・マーティンとかもいたけど)が、その後オリジナル・メンバーで再結成した後活動は封印されていました。
ですから今回の再結成は望外のことですし、ツアーだけでなく新譜もリリースされるというのは驚きですね。
正直不安な面はなくもないです。特にオジーの体調とか。しかしそれでもやっぱり楽しみです。