エレクトリック・ライト・オーケストラ

僕は多少音楽の教育を受けたこともあるんですが、その割にオーケストラが苦手です。クラシックはピアノ曲くらいしか聞きませんし。
そんな僕が唯一聴いていた「オーケストラ」が、エレクトリック・ライト・オーケストラ(以下ELO)です。


ELOは1970年代のアメリカで最も多くの(ビルボード40位以内の)ヒット曲を持つとしてギネスブックに認定されたバンドであり、「ビートルズよりもビートルズらしい曲を持ったバンド」とも言われていました。「ロックとクラシックの融合」を目ざし、全盛期には「世界、最小で最高のオーケストラ」と言う称号も得ていました。
ロックバンドにストリングス楽器担当(チェロ2名、バイオリン1名)がメンバーとして在籍するユニークな編成で、クラシックの弦楽三重奏の要素を取り入れた独特のサウンドが特徴でした。
今聴くとかなり時代を感じるサウンドですし、音楽的なイノベーションとか社会的メッセージとかそういうのも一切ないバンドなのですが、音楽性がとにかくわかりやすく親しみやすいポップ、という一点にのみ集約されているのでそこが逆に清々しく、気分を明るくしたいときなどによく聴いています。
僕は中学生のときに初めてこのバンドの音を聴き、ポップスの良さというものを理解しました。それまでは頑ななハードロック&パンクロック少年で、音楽は激しくなくてはいけないとか思い込んでましたからね。そういう意味で迷妄を打ち崩してくれた恩人であるかもしれません。
彼らはステージも派手で、ワールドツアーの時には、ステージ上にレーザービームが飛び交う巨大UFOを出現させ、メンバーがその中で演奏するという大がかりな演出も行われていました。当時その写真を見てそのあまりの豪奢さに馬鹿負けした記憶もあります。当時最初で最後の来日もしているのですが、そのときは重いのと費用の関係もあって、セットは持ってこれなかったらしいですね。
今では彼らの略称は「イーエルオー」と発音されますが、当時は「エロー」と発音されることが多かったというのも記憶しています。エロみたいだからやめたほうがいいと思ってましたけど。
それと日本では奥田民生が大のELO好きであることが有名です。彼はELOのラストアルバムの日本盤にも推薦文を書いています。さすが民生さん、センスある。あとは原田真二あたりがファンを公言していた記憶はあります。


Electric Light Orchestra - Shine A Little Love


79年リリースの8thアルバム『Discovery』からの先行シングル。最初に僕が聴いたELOの曲でもあります。
当時ビルボードで8位、全英でも6位のヒットとなっています。またアルバムもビルボードで5位、全英では1位という大ヒットを記録しました。
やたらとキラキラした電子音を使ったアレンジと、当時流行っていたディスコ・ミュージックを彼らなりに解釈したポップな音が光る、彼らの代表作のひとつです。


Electric Light Orchestra - Don't Bring Me Down


これも『Discovery』に収録された曲。
シングルカットもされ、ビルボードで4位、全英では3位のヒットを記録しています。
非常にビートルズっぽい一曲。ストリングスのメンバー全員が参加して一斉に弾いた重厚なピアノ・リフと、ロックンロールっぽいリズムが特徴です。
のちにパフィーがこの曲をカバーしています。


Electric Light Orchestra - Last Train To London


やはり『Discovery』に収録された曲。邦題は『ロンドン行き最終列車』。
これもシングルカットされ、ビルボードでは39位とふるわなかったものの、全英では8位とヒットしています。
哀愁溢れるメロにストリングス、鋭いギターカッティングにファンキーなベースライン、間奏の星が降ってくるようなシンセと聴きどころの多い曲ですね。


ELOは中心人物のジェフ・リンがほとんど一人で曲を書き、プロデュースをしてレコードを製作するという、いわばジェフのワンマン・バンドでした。
『Discovery』のときまではそれでうまく回っていたのですが、その後になるとバンドとしてのレコーディングが完了した後、さらにジェフが一人で音を作り直し続けて完成させるというようになり、バンドのソロ・プロジェクト化がますます進行していきます。結果ライブスケジュールはなかなか組めなくなり、またメンバーの一人が不満でジェフを訴えたりマネージメントとも揉めるなどトラブルが続発したため、ジェフはバンドの活動に意欲を失ってしまい、86年頃にELOは自然消滅してしまいます。
その後ジェフはプロデューサーとしても活躍しており、ジョージ・ハリスンリンゴ・スターポール・マッカートニー(共同プロデュース)、デイヴ・エドモンズトム・ペティロイ・オービソン、デル・シャノンなどを手掛けています。また88年からは覆面バンド、トラベリング・ウィルベリーズにも在籍し、中心メンバーとして活躍しました。
またELO名義でも01年に15年ぶりの復活アルバムを発表し、ゲストとして元ビートルズジョージ・ハリスンリンゴ・スターが参加して話題にもなりましたが、一部をキーボードのリチャード・タンディが演奏しただけでバンドとしての実態はほとんどなく、その後の活動も行われていません。
ファンとしてはまた活動を再開してほしいと思ってはいるのですけど、なんか期待薄な感じではありますね。