U.K.

エイジアのヴォーカルとベースを担当しているジョン・ウェットンは、かつてキング・クリムゾンに在籍していたことが有名ですが、その他にも無数のバンドに加入、脱退を繰り返しています。
その中にパンク・ムーブメント全盛時に結成され、日本でだけ変にマニア的な人気を誇ったバンドがありました。それがU.K.です。
U.K.は最初ウェットン、アラン・ホールズワース(元ソフト・マシーン、ギター)、ビル・ブラッフォード(元キング・クリムゾン、ドラムス)、エディ・ジョブソン(元ロキシー・ミュージックフランク・ザッパ&マザーズ、キーボード、バイオリン)というプログレッシブ・ロックの大物たちが集まって結成されました。
音楽性はマニアックかつテクニカル。豊富なキャリアを積んできたメンバーたちの超絶技巧と、そこから生み出されるギリギリの緊張感を楽しむというものでした。当時中学生だった僕には多少難しかったんですが、聴いていてスリルのようなものは確かに感じていました。


しかしプログレの王道的な音はパンク、ニューウェーブ全盛の英国ではウケず、おまけにロックを目指すメンバーとフュージョン方向に行こうとするメンバーの音楽性の違いが如実に現れてきて、ホールズワースとブラッフォードが脱退してしまいます。
残されたウェットンとジョブソンは、フランク・ザッパのバンドで叩いていたテリー・ボジオをドラムスに招き、ギターレスのトリオ編成として生まれ変わるのでした。


U.K - Nothing To Lose


79年にリリースされた2ndアルバム『Danger Money』に収録されていた曲。シングルカットもされ、英国で50位以内に入るくらいの小ヒットとなりました。
プログレッシブ・ロックらしいテクニカルな面が目立ちますが、彼らにしてはポップで親しみやすい曲です。
ジョブソンがキーボードとエレクトリック・バイオリンで凄く忙しそうなのが印象的です。当時はああいう感じでキーボードを四方に大量に置くスタイルが普通だったんですよね(もちろんテクノロジー的な問題もある)。
あとあの透明なバイオリン、欲しかったんだよなあ。バイオリン弾けないのに。


その年彼らは来日し、卓越したパフォーマンスで会場を熱狂の渦に叩き込みます。その評価の高さは、渋谷陽一のラジオ番組でのベスト来日アーティストの投票で、並み居る大物を押さえて2位に入るほどでした。
ライブの模様はアルバム『Night After Night』としてリリースされていて、今も聴くことができます。僕はこれを小遣いを貯めて買い、その技術の巧みさとテンションの高さ、そしてダイナミズムに感動したものでした。
しかしそれだけの好評を得ながら、彼らは翌年にあっさりと解散します。ウェットン曰く日本での人気でジョブソンが有頂天になってしまい、天狗になっていたとのことなので、いろいろ人間関係のもつれがあったんでしょう。
その後ウェットンは前述したようにエイジアに参加。ボジオは妻やザッパ・バンドの元同僚たちとミッシング・パーソンズを結成し、解散後はフリーの大物ドラマーとして活躍。ジョブソンはテレビ番組やCMの音楽制作を生業とするようになりました。


驚いたことにU.K.は今年、ウェットンとジョブソンに若手ミュージシャン2名を加えて再結成し、32年ぶりの来日も果たしています。
すごく観たかったんですけど、知ったのが遅かったというのもあり、また都合がつけられなかったというのもあり、今回は断念せざるを得ませんでした。
また来年あたり来日してくれないかな。今度はぜひ行きたいと思っています。ウェットンの美声とジョブソンのバイオリンを生で聴きたいですから。