エイジア

トレヴァー・ホーン関連のことばかり書いてましたが、当然ジェフ・ダウンズも活動をしていました。
彼はホーンのような路線ではなく、オーソドックスなロックの方向に進んでいきました。元キング・クリムゾンジョン・ウェットン(ヴォーカル、ベース)、元イエススティーブ・ハウ(ギター)、元エマーソン、レイク&パーマーのカール・パーマー(ドラムス)とともに、スーパーバンド、エイジアを結成したのです。
結成以前から各メンバーが相応の実績や実力、知名度を有していたミュージシャンが集まって作られたバンドというのは、往々にしてパッとせずに終わるのですが、エイジアはポップでコンパクトな楽曲を前面に出すことによって、世界的に成功しました。


Asia- Heat Of The Moment


82年にリリースされた1stアルバム『Asia』(邦題は『詠時感〜時へのロマン』)にも収録されているデビューシングル。
この曲はビルボードで4位(ロックチャートでは1位)という大ヒットになり、アルバムもビルボードで9週連続の1位を記録、全世界で1500万枚のセールスを達成しました。
透明感のあるキャッチーでポップなメロディが素晴らしい一曲ですね。ポップな楽曲のため当時プログレファンからはボロクソに叩かれてましたが、個人的には売れ線を狙いつつもこれだけ音楽的にレベルの高いものを出してくるあたり、さすが百戦錬磨のミュージシャンたちだなと感心しました。
とにかく3分ちょっとの曲の中に転調、変拍子、ギターソロなどを含むという豪華絢爛な構成でありながら、ポップスとしても破綻していないというのが本当にすごいです。
当時渋谷陽一などは彼らに批判的で、ジャーニーやサバイバー等とまとめて「産業ロック」と揶揄していましたが、僕としては売れなきゃ困るというミュージシャン側の事情もわかりますし、そういう評価はちょっと大人気ないと思ってましたっけ。


その後エイジアはセールスの低下に伴ってメンバーが次々と脱退し、バンドと言うよりはダウンズのソロ・プロジェクトという色彩が強くなり、数多くのミュージシャンが必要に応じて参加する、という形になっていきました。
その中にはスティーブ・ルカサー(TOTO)、スコット・ゴーハム(シン・リジィ)、トニー・レヴィンキング・クリムゾン)、サイモン・フィリップスTOTO)、フィル・マンザネラ(ロキシー・ミュージック)、ドン・エイリー(ディープ・パープル)などの大物から、布袋寅泰ジョルジオ・モロダーといった異色の顔ぶれまで、本当にいろいろなメンバーがいました。これは面白いことは面白かったですが、音楽的には核がなく、拡散している印象があったのは否めなかったでしょうか。
そして06年からはオリジナル・メンバーで再始動しているのですが、特にパッとした活躍はなく、今年に入ってからはダウンズがイエスに加入したため、その動向が注目されています。