シークレット・アフェア

70年代後半に、英国でネオ・モッズという一種のリバイバル的なムーブメントがありました。
ザ・ジャムのブレイク、そしてザ・フーの『四重人格』をもとに製作された映画『さらば青春の光』が、次第に商業化と閉塞感を強めていたパンクに対し、再びストリートへの回帰を思い始めていた若者たちに、多大なヒントを与えたのでした。
英国では「モッズ・メーデー」や「マーチ・オブ・モッズ」といったイベントが開かれ、モッズバンドも雨後のタケノコのように産声を上げ、短期間とはいえ大きく盛り上がりました。
しかし日本では全然話題にもなってなかったですね。ザ・ジャムはパンクとされていましたし、他のバンドも全然紹介されなかった記憶があります。
日本では過去モッズのバンドが全然売れなかったから、というのもあるんでしょう。ザ・フーキンクススモール・フェイセズも、びっくりするくらい人気なかったですから。
そんな状態だったんで、ネオ・モッズのバンドなんか当時は全然知らなかったんですが、唯一これだけは聴いたことがありました。それがシークレット・アフェアです。


シークレット・アフェアは78年にイアン・ペイジを中心に結成された4人組で、ネオ・モッズ・シーンの代表的存在でした。
彼らはザ・ジャムの前座を務めたことで人気を得、メインストリームへと躍り出ていくのですが、当のザ・ジャムポール・ウェラーはイアンのことが大嫌いで、彼のことを名指しで
「あいつはパンクに乗り遅れたからモッズに衣替えしただけだ」
と辛辣に批判していましたっけ。ポールは当時から次の段階へ駒を進めようとしており、自分たちがネオ・モッズという範疇に括られることにちょっとした不快感すら覚えていたため、ネオ・モッズで人気を得ようとしていたイアンのことが癪に触っていたのかもしれません。
まあそのへんのいきさつはさておき、とりあえず音を聴いてみましょう。


Secret Affair - Time For Action


デビュー・アルバム『Glory Days』に収録され、全英でもスマッシュヒットした彼らの代表曲。
ポールの辛辣な評価はとにかくとして、モッズ魂全開でなかなか聞かせる曲ではないでしょうか。
イアンのストレートで艶っぽいヴォーカルとポップなメロディ、そしてR&Bの香りたっぷりの力強いホーン・セクションの響きが印象的です。


その後彼らは時代と歩調を合わせるように、シンセを導入したりポスト・パンク的な音になったりしましたが、結局3枚のアルバムを出しただけで82年に解散しました。しかし21世紀に入ってから再結成を果たし、驚いたことに今年来日公演もしています。
どんな感じだったのか、ちょっとだけ聴いてみたかったですね。来日を知らなかったのが残念です。