パティ・スミス

突然ニューヨーク・パンクのことについて思い出して、発作的に聴いているのですが。
特に懐かしく思ったのがパティ・スミスですね。ポエトリー・リーディングみたいな曲が多い印象があるせいか、普段あまり聴かないのでなおさらでした。
パティ・スミスはミュージシャン兼詩人で、かつて「ニューヨーク・パンクの女王」と呼ばれていた女性です。絶妙にかすれたアーティスティックな声で、内面世界を鋭くえぐるような歌詞を歌っていました。
ニューヨーク・パンクはテレヴィジョンやトーキング・ヘッズに代表されるように、ロンドン・パンクと違って「インテリ崩れの音楽」みたいな印象が強いのですが(もちろんラモーンズやブロンディのような例外もある)、パティはその際たるもので、ランボー*1ボードレール*2に強く影響を受けた歌詞は、文学や芸術の匂いを感じさせるものでした。


Patti Smith Group - Because The Night


ビルボードで13位まで上がった、彼女最大のヒット曲。
ブルース・スプリングスティーンとの共作曲で、彼女には珍しくポップなロックンロールになっていますが、ヴォーカルには鬼気迫る迫力があり、一筋縄ではいかない仕上がりとなっています。
この曲は実はスプリングスティーンがアルバム『Darkness On The Edge Of Town』(邦題は『闇に吠える街』)を制作中、同じレコーディングスタジオを使用していたパティに歌詞を依頼し生まれた曲なのですが、何らかの事情によって彼のアルバムには収録されず、パティがそれを女性視点の歌詞に変えてシングルとして発売したものだそうです。
本来スプリングスティーンが歌うはずだったバージョンは、『The "Live" 1975-1985』に収められています。


その後パティは、元MC5のフレッド・スミスとの結婚生活のため長くアーティスト活動から離れていましたが、88年に9年ぶりに復帰。
94年にフレッドが亡くなってからは、再びコンスタントに作品を発表しています。

*1:早熟の天才詩人で、ダダイストシュルレアリストら、20世紀の詩人たちに絶大な影響を与えた。21歳で詩作を放棄し、以後は兵士、翻訳家、武器商人などの職を転々とした。

*2:「フランス近代詩の父」と呼ばれる詩人、批評家。詩集『悪の華』が知られるが、生前に発行した詩集はそれだけ。ダンディな放蕩家で、亡父の遺産をもとに散財の限りを尽くしたあげく、最後は準禁治産者の扱いを受け、以後死ぬまで貧窮に苦しんだ。