ミカド

84年から87年まで、YMO細野晴臣が運営していたノン・スタンダードというレーベルがありました。
ピチカート・ファイヴ(当時の表記はPIZZICATO V)、SHI-SHONEN(後にFAIRCHILDを結成する戸田誠司のユニット)など、面白いミュージシャンが所属していましたが、個人的に一番気に入っていたのはミカドです。


ミカドはフランスのテクノポップ・デュオで、女性ヴォーカルのパスカル・ボレルとサウンド担当のグレゴリー・チェルキンスキーの二人で構成されていました。
ベルギーのクレプスキュールというレーベルからアルバムも出していて、当時そことつながりのあった新星堂が、日本でのディストリビュートを担当していましたっけ。


Mikado - Naufrage En Hiver


ダサいのかユニークなのか、判断が難しいPVでありますが(苦笑)
これは細野晴臣がプロデュースしたシングルで、邦題は『冬のノフラージュ』です。
当時パルスイート・スリムという甘味料のCMにも使われていて、歌詞の一部を「パルスイート・スリム」と変えて歌っていたバージョンが、12インチシングルとして売られていました。
とにかく柔らかな空気感を持った、パスカルのヴォーカルがなんともキュートですね。フランス語っていろいろ面倒くさいイメージがあるんですが、こういうときにはすごい威力を発揮します。
初めて聴いたときにおもちゃを使ってるのかと思わせた1stアルバムよりは、サウンドはかなりまともになっています。当時最先端であったDX7やリズムマシーン、PCM系のサンプリングなんかも使っていて、音質的にはかなりの向上が見られますし。
ただアルバムでのチープな音作りにも、いろいろと捨て難い魅力があったわけで、そのへんプロデュースやテクノロジーとは難しいものだと感じたりもします。
ミカドはこのシングルをリリースした後、来日公演も果たしています。僕は観てないのですが、行ってきた友人の話によると、自宅のリビングで宅録しているような、なんともほのぼのしたライブだったそうです。行ってみたかった。


ミカドは結局80年代に1枚のアルバム、3枚のシングルをリリースしただけで、活動を停止したようです。
なおチェルキンスキーは97年、長い沈黙を破ってソロアルバムを発表しています。