さてさて、残ったスティーブ・ジョーンズとポール・クックですが。
彼らはマネージャーのマルコム・マクラーレンの口車に乗り、イギリスの大列車強盗犯人であるロナルド・ビッグス*1や、ナチスの戦犯で南米逃亡説のあるマルチン・ボルマン*2(本人かどうかも不明だが、映画『ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル』でもナチスの制服を着用した男が登場している)とのコラボレーションを行い、おふざけ半分でピストルズを延命させました。
Sex Pistols - The Great Rock'n'Roll Swindle
これがその悪名高い『ザ・グレート・ロックンロール・スウィンドル』です。
「誰でもピストルズになれる・ガキのオーディション」と銘打ち、そこらへんのガキたちに代わる代わるボーカルを取らせており、ピストルズの虚構ぶりを強調しています。
もちろんそんな活動が長続きするわけもなく、二人は元シャム69のジミー・パーシーとセッションしてバンド結成を模索するも失敗し、紆余曲折の末にザ・プロフェッショナルズを結成します。
The Professionals - The Magnificent
このバンドも個人的にはいいと思っていて、再発盤CDも持ってるくらいなんですが、とにかく全然売れなかったですね。PVもないくらい。
改めて聴いてみると、シンプルでノリのいいロックンロールなんですが、地味で特色が今ひとつない気がします。これでは売れないのも無理はないか。
このバンドの失敗後、スティーブとポールは袂を分かち、それぞれ別の道を進んでいきます。
スティーブはいろいろなバンドに参加していますが、特にメジャーなものといったらデュラン・デュランのジョン・テイラー、ガンズ・アンド・ローゼズのダフ・マッケイガン、マット・ソーラムと組んだニューロティック・アウトサイダーズでの活動でしょうか。
このバンドはパンクを基調としたハードロックという、なかなかカッコいい音を出していたのですが、もともとお遊びで結成されたものということもあって、大きな活動に至らなかったのが残念です。
Neurotic Outsiders - Janie Jones
この曲はザ・クラッシュのカバーです。
難しいことはやってませんが、このシンプルさ、単純さがかえってスカッとします。
スティーブはその他にも、故hideが結成していたZilchのレコーディングにも参加していました。
現在はミュージシャンの傍ら、ラジオパーソナリティなども務めているようです。
ポールのほうもいろいろバンドに参加はしていたようですね。
しかし再結成ピストルズで来日する前、エドウィン・コリンズのバックバンドで来日していたのにはさすがに驚きました。
現在も彼はセッション・ミュージシャンとして、いろいろ叩いているということです。
*1:イギリスの列車強盗犯。1963年に現金輸送列車を襲い、260万ポンドを強奪、一度逮捕されるが脱獄してブラジルへ高飛びする。現地で子供をもうけたため、ブラジルに居たイギリスの警察に身柄を拘束された時も、当時のブラジルの「ブラジルで生まれた子供の父親が外国人である場合、その父親は身柄を拘束されない」という法律に引っかかり逮捕されることはなかった。子供が成人した2001年5月、罪を償うためイギリスへ戻り、獄中生活を送るも、現在は病気のため釈放されている。
*2:ドイツの政治家。アドルフ・ヒトラーの秘書を勤め、のちにナチ党官房長となった。終戦時に自殺したが、遺体が見つからなかったため、ブラジルへ逃亡しナチス残党を集めてナチスの再建を図っているという噂が、まことしやかに語られるようになった。アドルフ・アイヒマンは裁判中に「彼は南米で生きている」と証言している。