アーケイディア

どうもです。いまいちだるいんですけど更新を休むほどではないので、なるべく手短に済ませてしまおうかと思っています。
で、今回はデュラン・デュランつながりでアーケイディアですね。1年くらいしか活動していないユニットなので、忘れている人も多いんじゃないでしょうか。


デュラン・デュランは80年代半ばには世界的なビッグ・バンドになっていたんですが、その内実は急激な人気拡大と長期ツアーによる疲弊のため、人間関係がボロボロになっていました。ジョン・テイラー(ベース)、アンディ・テイラー(ギター)とサイモン・ル・ボン(ヴォーカル)、ニック・ローズ(キーボード)の音楽的な志向の違いもあり、特にジョンとアンディは不満を溜め込んでいたようですね。
そんな中ジョンとアンディはロバート・パーマー(ヴォーカル)、元シックのトニー・トンプソン(ドラムス)と組んで、パワー・ステーションを結成します。このバンドはファンキーで荒々しいロックテイストのサウンドを持っており、二人の毒抜き作業的なものだったのかもしれません。
で、パワー・ステーションが好評だったのを見たル・ボンとローズは、これに対抗しようと思ったのか中立的な立場だったロジャー・テイラー(ドラムス)を引き入れ、アーケイディアなるユニットを組むこととなるのです。
このユニットの特徴は、とにかく音が豪華絢爛なことでしょうか。パワー・ステーションがギターとベースとドラムを前面に押し出し、ロック的なダイナミズムを追及しているのに対し、アーケイディアはシンセをサウンドの基調とし、デュラン・デュランからヨーロッパ的な耽美な部分だけを濾過したような路線に向かっていましたね。
まあヴォーカルがル・ボンなので、デュラン・デュランとあまり変わらないと言ってしまえばそれまでなんですが、ゲストが色々と豪華だったこともあって、目先は多少変わっているように思えます。
プロデューサーは当時の売れっ子アレックス・サドキンでした。彼はデュラン・デュランの3rdアルバム『Seven and the Ragged Tiger』もプロデュースしており、気心の知れた仲ではあるのですが、そのせいかさらにデュラン・デュランと区別がつけ辛くなっている面もあったと思いますね。


Arcadia - Election Day


85年10月にリリースされた、彼らのデビューシングル。全英7位、ビルボード6位。
一言で言うとダークな雰囲気のエレポップでしょうか。ロジャー・クリスチャンセンが監督したPVも、ゴシックでいい感じですね。
ちなみにギターは元一風堂土屋昌巳、サックスはロキシー・ミュージックのアンディ・マッケイ、途中の語りはグレース・ジョーンズが担当しています。


同年12月には、彼らはデビューアルバム『So Red The Rose』(邦題は『情熱の赤い薔薇』)をリリースします。
このアルバムは全英30位、ビルボードで23位を記録しています。パワー・ステーションに比べるとセールスは低かったですが、まあそこそこ成功した部類なんじゃないでしょうか。
日本では斬新なサウンドパワー・ステーションのほうばかりが話題になって、こちらはそれほど取り上げられなかった記憶がありますね。それでもロッキング・オンの裏表紙に広告が載っていたのは見た覚えがありますから、プロモーションはそれなりにしていたんでしょうが。


Arcadia - Goodbye Is Forever


『So Red The Rose』からのシングル。ビルボードで33位。
これはなんつーか後期ロキシー・ミュージックっぽいですね。エレポップの洗礼を浴びたロキシーみたいです。
ル・ボンはブライアン・フェリーを意識しているところが結構あるので、この路線は必然だったのかもしれません。


Arcadia - The Promise


これも『So Red The Rose』からのシングル。86年に全英37位。
この曲はフレットレス・ベースがうねりまくっている、グループ感のあるダンス・ミュージックですね。後のデュラン・デュランの路線に一番近いかもしれません。
ちなみにギターはなんとピンク・フロイドデヴィッド・ギルモアが担当しています。この人ってこういうプレイもできるんですね。そこが驚き。
また縦横無尽なフレットレス・ベースを担当するのは元パット・メセニー・グループのマーク・イーガン、コーラスはポリスを解散させてソロに転向したばかりのスティングです。


Arcadia - The Flame


これも『So Red The Rose』からのシングル。86年に全英58位。
この曲も本当にデュラン・デュランっぽいですよね。予備知識がない人は、未発表曲と言われたら信じてしまいそう。
ちなみに推理小説を思わせるPVは、ラッセル・マルケイが監督しています。途中ジョン・テイラーもちょこっと出演していますね。


Arcadia - Say The Word


86年にリリースされたシングル。アメリカだけのリリースでしたが、チャートには入りませんでした。
本来この曲は映画『Playing For Keeps』(邦題は『高卒物語』)のサウンドトラックに提供されたもので、当人たちも特に売ろうという気持ちはなかったようです。PVも映画からの流用場面が多いですし。
まあいかにも80年代って感じの曲ですが、三流映画に提供した捨て曲の割には、そこそこの水準は保っているように思えます。


結局アーケイディアはこのシングルを最後に活動を終了し、メンバーは分裂状態だったデュラン・デュランの再編に向かいます。しかしロジャーは引退、アンディは脱退し、メンバーは三人になってしまったのは前に書いたとおりです。
アーケイディアの評価については難しいですね。個人的には嫌いじゃないですが、パワー・ステーションのほうがあまりにも鮮烈だったので、どうしてもその陰に隠れる形になってしまいます。
ただその後のデュラン・デュランサウンドは、明らかにアーケイディアを深化させた路線を取っているので、その叩き台として存在意義はあったんじゃないかな、なんて思ってます。ここでの活動がなかったら、ああいう音にはならなかったでしょうし。
あとニック・ローズ土屋昌巳はやっぱり才能あるな、というのは再確認しましたね。結局この二人が実質的なサウンド・プロデューサーだったそうですから。