シンプル・マインズ

ついさっき年上の友人(アイドル繋がり。リアルでも付き合いあり)のブログが100万PVを達成したということで、お祝いのコメントを書いてきたばかりなのですが。
このブログもいずれは100万PVとかいくんでしょうかね。2年2ヶ月で22万弱PVですから、単純に考えてあと8年くらい続ければ到達できるであろう数字なんですけど。
しかしそこまでこっちの気力がもつかな、という最大の懸念がありますね。あくまでも趣味で書いていることなので、気が向かなくなったら書けないですから。
正直このブログって、昔の洋楽を中心に取り上げるという、読む人が限られたニッチなジャンルに属しているので、これから急激にPVが増える事は考えられないですし、無駄に取り上げる範囲が広く分裂症的にあっちこっちへ飛びまくるせいもあるのか、特定のジャンルを好む固定ファンもあまりついていないみたいで、会心の内容と思ってアップしたら反応がなくて凹む事もありますし。
あとは更新のために下調べをガッツリするんで、慢性体調不良の身には負担が大きいというのもありますね。完成するまでに5時間くらいかけることもありますから。
ただ調べ物をする事自体は楽しいですし、2年間書いてきてアーカイブも増えてきましたし、まだ取り上げたいバンドはいくらでもあるので、やめるという選択肢だけはないと思うのですが。
まあこれまで2つのブログを中途で放り出しているので、絶対やめないとは言い切れないないのが辛いところなんですけど、とりあえずぼちぼちやっていきたいと考えてはいます。
いろいろ記憶を辿っていたり、文章を考えたりしていたりすると、頭を結構使うので、ボケ防止だと思って毎週ちまちまと更新していこうかな、というのが現在の心境ですね。
あまり無理しても疲れるだけなので、これからも適当にミュージシャンをピックアップしていい加減な選曲をして、だらだらとやっていきたいと思います。どうかよろしくお願い致します。


と個人的なことを書いてしまって申し訳ないんですが、ここからが本題です。
今回はニューウェーブのエレポップ組からの最大の出世頭と言ってもいい、シンプル・マインズを取り上げてみたいと思います。
日本では人気があまりなかったバンドですよね。80年代に二度来日していますが、どちらも客入りは芳しくなかったようですし、実際シンプリー・レッドと混同して覚えている人もいるくらいですし(実話。音は全然違うので、どうして間違えるのか不思議ですが)。
ただ全盛期のシンプル・マインズは、スタジアムを常に満員にするクラスのバンドであり、世界的な人気を誇っておりました。80年代後半から90年代前半にかけては、特に売れていたように記憶しています。
スタジアム・ロックなら大味なんだろうと思う人も多いでしょうし、実際全盛期の彼らにはそういう側面もありましたが、出たての頃の彼らは、ニューウェーブとダンス・ミュージックの双方に軸足を置いていて、そのバランスが絶妙だったんですよね。


彼らは77年、英国スコットランドグラスゴーで、ジョニー&ザ・セルフ・アブザーズというバンドを母体として結成されました。
メンバーは中心人物のジム・カー(ヴォーカル)、チャーリー・バーチル(ギター)、デレク・フォーブス(ベース)、ブライアン・マクギー(ドラムス)、マイケル・マクニール(キーボード)の5人でした。もともとはカーがキーボードを弾きながら歌っていたそうですが、表現的な限界を感じてキーボーディストを加入させたんだそうです。
バンド名はデヴィッド・ボウイの『Jean Genie』の歌詞から取られているのですが、要するにとろい人とか頭の足りない人とかいう意味です。一種の差別用語みたいなものですね。この名前を自分たちにつけることによって、自らを変わっているものたちと位置付けているわけです。そのあたりの事情はスペシャルズが「自分たちは特別な人間ではない」という意図のもと、反語的な意味でバンド名をつけた意識とも共通していて、そのへんはいかにもパンクらしいところだと思います。
初期の彼らは根本的にはパンクでしたが、そこにロキシー・ミュージックやベルリン三部作の頃のデヴィッド・ボウイヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどのフレーバーを混ぜ、一種独特なサウンドを作っていたようです。
そしてライブを続けること2年、彼らはアリスタ傘下のZOOMというレーベルと契約し、79年4月にアルバム『Life in a Day』(邦題は『駆け足の人生』)でデビュー。するとこれが全英30位に入り、一躍注目されることとなりました。


Simple Minds - Life in a Day


『Life in a Day』のタイトルナンバー。全英62位を記録しています。
実はこの曲は後追いで聴いたんですが、荒削りな音でありながら、いかにもヨーロピアンなダンディズム溢れる音に、カーの気取ったヴォーカルが乗っているところは、売れてからと変わってないなと感じましたっけ。
ちなみにこのアルバムのプロデューサーは、のちにレディオヘッドストーン・ローゼズを手がけて名を上げた、ジョン・レッキーです。今ではUKロックのレジェンド的な存在の彼ですが、こんなところでも頑張ってたんですね。


ミュージシャンとしてアイディアの充実していたであろう彼らは、デビュー・アルバムのわずか7ヵ月後の79年11月、早くも2ndアルバム『Real to Real Cacophony』をリリースします。
このアルバムではパンク的な荒々しさは早々に姿を消し、よりニューウェーブに接近した音を出しています。その進化のスピードは目を見張るくらいでした。
僕はこの頃初めて彼らを知ったんですが、宣伝用のスチールに写っていたカーの顔を見て、「間の抜けた顔をしているな」とかとんでもないことを思っていましたっけ。ごめんなさい。


Simple Minds - Changeling


『Real to Real Cacophony』からのシングル。僕が最初に聴いた彼らの曲がこれなんですね。
シンセサイザーを大胆に導入したグラムロックって感じで、カッコいい音だなと当時思いましたっけ。
ただ同時にあまり売れなさそうなバンドだな、とも思ってました。結果先見性のなさを露呈することとなってしまいましたが、まあ所詮は単なる中学生でしたから仕方ない(笑)


翌80年に彼らは間髪入れず、3rdアルバム『Empires and Dance』をリリースします。
このアルバムはよりダンス・ミュージックに接近しており、全英41位を記録した他、アメリカでも好評を博しました。


Simple Minds - I Travel


『Empires and Dance』からのシングル。ビルボードのダンス・ミュージック・チャートで55位に入っています。
暗いけどBPMが速くてアグレッシブで、ダンスフロア向けのニューウェーブサウンドって感じですね。この方向に進んでいったら、それはそれで面白かったかもしれません。


Simple Minds - Celebrate


これも『Empires and Dance』からのシングル。
ゆったりとしたミドル・テンポのグループを持ち、彼らのその後の路線を指し示している曲ですね。


これらの成功のおかげか、彼らはZOOMからメジャーのヴァージンへと移籍しました。
よっぽど彼らは創作意欲に溢れていたのでしょう。翌81年には『Sons and Fascination』『Sister Feelings Call』と2枚のアルバムを同時発売します(CD発売時に2枚にまとめられた)。
ヨーロッパ的な陰影と実験性をより前面に押し出したこのアルバムは、本国で好評を持って迎えられ、全英11位のヒットとなりました。ちなみにプロデューサーは、プログレの伝説的存在である、元ゴングのスティーブ・ヒレッジです。


Simple Minds - Seeing Out The Angel


『Sons and Fascination』収録曲。
当時ラジオのでこの曲を聴いて、「これがシンプル・マインズなんだ。すごくカッコよくなったな」と驚いた記憶がありますね。
重いベースから導かれる、陰鬱なシンセで彩られた音と、カーのダンディなヴォーカルがうまく溶け合っていて,新たな化学反応を起こしているように感じました。
この曲のおかげで、自分の脳内でのシンプル・マインズのランクは一気に2つか3つくらい上がりましたね。まあ上がったからといっても特に意味はないんですけど、積極的に注目するようにはなりました。


Simple Minds - Love Song


『Sons and Fascination』からのシングル。全英47位。
印象的なシンセの音から始まり、ねっとりと展開されるお得意のダンスチューンですね。
個人的にはフォーブスのストイックなベースラインがカッコいいと思っています。


Simple Minds - The American


これも『Sons and Fascination』からのシングル。ビルボードのダンス・ミュージック・チャートで66位に入っています。
いかにも当時の彼ららしい、ミドルテンポのダンスナンバーです。


4thアルバムリリース後、マクギーが結婚を理由に脱退しますが、バンドは後任にマイク・オーグルトリーを迎えて活動を続行します。
そして82年には5thアルバム『New Gold Dream』(邦題は『黄金伝説』)をリリースしました。4年間で5枚をアルバムをリリースしたのですから、驚くほどのハイペースですね。
このアルバムはもともとの持ち味であるトランシーなエレクトリック・ポップと、後のスタジアム・ロックに通じるような重量感がうまく融合しており、全英3位、ビルボードでも69位に入るヒットを記録し、世界的成功への足がかりとなりました。


Simple Minds - Promised You a Miracle


『New Gold Dream』からのシングル。邦題は『奇跡を信じて』。全英13位。ビルボードのダンス・ミュージック・チャートで65位。
個人的にはこのへんが彼らの代表曲ってイメージなんですが、多分世間的には違うんだろうなあ。でも良い曲ですよ。
それにしてもこのへんのPVがどの動画サイトにもないのは何でなんでしょう。なんか権利問題とかあるのかな。


Simple Minds - Someone,Somewhere in Summertime


『New Gold Dream』からのシングル。邦題は『さらば夏の日』。全英36位。
カーの独特のヴォーカルがたっぷり堪能できるバラードですね。好きな人にはたまらないと思います。
サントリー・オールドのCMにも使われていましたから、ご記憶の方も多いのではないでしょうか。


次々と質の高いアルバムを量産していた彼らですが、ようやくここでアルバム制作を休止します。
その間彼らはワールドツアー(アメリカではポリスの前座でしたが)を行っています。途中オーグルトリーが脱退しますが、メル・ゲイナーが代わりに加入しました。
そして84年にはカーはプリテンダーズのクリッシー・ハインドと結婚し、世界を驚かせます。個人的にはカーについては「気取った歌い方をするけど顔は間抜けな感じの人」というイメージしかなかったので、これにはびっくりした記憶がありますね。
同じ年にはシンプル・マインズとしての活動も再開。友人であるU2のボノからの紹介で知り合った、スティーブ・リリーホワイトをプロデューサーに迎え、6thアルバム『Sparkle in the Rain』をリリースします。
リリーホワイトは当時U2やビッグ・カントリーなどのプロデュースを担当してヒットを連発していたため、このアルバムも大いに話題を呼び、全英では1位の大ヒットとなりました(ビルボードでは64位といまいち)。
思うに陰影のあるケルティックなメロディラインを持った楽曲と、適度に新しいサウンドを盛り込んだバランスの良さが好まれて、幅広い人に支持されたのでしょう。


Simple Minds - Up On The Catwalk


『Sparkle in the Rain』からのシングル。全英27位。
リリーホワイトお得意のゲートリバーブを多用した、アップテンポなポップナンバーです。


翌85年にはフォーブスが脱退(一時プロパガンダに入ったらしい)しますが、代わりにフィル・コリンズのブランドX等で活躍し、ピーター・ガブリエルデヴィッド・シルヴィアンのアルバムにも参加している凄腕ジョン・ギブリンが加入しました。
そして最大の転機が彼らにやってきます。映画『The Breakfast Club』の主題歌『Don't You (Forget About Me) 』を担当し、これがビルボードで1位を記録するのです。
この映画のサントラも爆発的に売れたため、彼らは一気にアメリカでの知名度も高めることなります。それまでは「ヨーロッパでは売れていたがアメリカでは無名なバンド」だったのですが、これ以降は世界的なスタジアム・バンドとなりました。


Simple Minds - Don't You (Forget About Me)


映画『The Breakfast Club』の主題歌。ビルボードで1位、全英7位の大ヒットとなりました。
本来はブライアン・フェリーとビリー・アイドル、クリッシー・ハインドに歌の打診をしていたのですが、三者にスケジュールが合わないという理由で断られたため、ハインドの伝手で彼らにお鉢が回ってきてわずか3時間で収録したという曰くのある曲です。
そのため彼らの最大のヒット曲であるにも関わらず,オリジナルアルバムには収録されていません。カーのインタビューを読むと、もともとそれほど乗り気ではなかったうえに、自作でない曲でブレイクしたこともあって、心中複雑なものがあったようですね。
ちなみにこの曲は映画『Flash Dance』などで有名なキース・フォーシーのペンによるものです。そのせいかシンプル・マインズの個性とは少し違った、スマートな曲になっていますね。歌詞はダサいけど。


この年彼らは7thアルバム『Once Upon a Time』もリリースします。
ちなみにプロデューサーはホール&オーツやロキシー・ミュージックなどを手がけたボブ・クリアマウンテンとU2トム・ペティなどを手がけたジミー・アイオヴィンの共同名義となっています。
『Don't You (Forget About Me) 』の余韻もあったのか、このアルバムも売れに売れ、ビルボードで10位、全英では1位を獲得する大ヒットとなりました。
サントラ曲のヒットによりブレイクしたという事実による鬱屈も、自作アルバムのヒットによりだいぶ癒されたのではないのでしょうか。
また彼らは同年、あのライブ・エイドにも出演しています。全米で成功したという、証しのようなものなんですかね。とにかく85年は彼らにとって激動の年でした。


Simple Minds - Alive and Kicking


『Once Upon a Time』からのシングル。全英7位、ビルボードで3位の大ヒットとなりました。
静かな曲調からサビに向けてだんだん盛り上げていくところが、ベテランらしい風格があってなかなか上手いですよね。まあ臭いっちゃ臭いんですが。
あと最近ミズノだったかのCMでも使われてましたね。懐かしかったです。


その後彼らはスタジアム・バンドとして大成功を収めるのですが、個人的には大味な感じがどうにも鼻につくようになり、あまり聴かなくなってしまいました。
このバンドの魅力は豊富なアイディアをとんがった感じで出すところだと思っていたんですが、売れるようになるとどうしてもそのへんの持ち味は殺されてしまいますよね。
このあたりは第二次ブリティッシュ・インヴェイジョンの波に乗って、アメリカに進出を果たしたミュージシャン全てに共通する課題だったと思います。
ただシンプル・マインズはただ単にポップ化するだけでなく、こういう良曲も出しているので侮れないのですが。


Simple Minds - Biko


89年の8thアルバム『Street Fighting Years』収録曲。プロデューサーはあのトレヴァー・ホーンです.
ピーター・ガブリエルの有名な曲のカバーで、77年に拷問による脳挫傷のために亡くなった南アフリカの反アパルトヘイト活動家、スティーブ・ビコへの追悼歌です。
原曲より芝居がかった歌い方なので、好き嫌いはあると思いますが、個人的には非常にエモーショナルで、良い出来だと思っています。


その後シンプル・マインズはメンバーを交代や脱退が相次ぎ、結局カーとバーチルの二人だけになってしまいます。
また徐々に音楽性をニューウェーブの頃に戻していったこともあってか、だんだんセールスは振るわなくなり、02年にはメジャーからドロップしてしまいますが、今も元気で活動を続けています。
09年にはデビュー30周年を迎え、オリジナルメンバーでアルバム『Graffiti Soul』をリリースし、全英10位に叩き込むなど、制作意欲はまだまだ衰えていないようですし、欧州での人気もまだまだ健在なようです。今年に入って英国で発売されたベスト盤も、全英19位に入っているということです。
ちなみにカーは90年にはハインドと離婚しています。その後92年には元エイス・ワンダーで女優のパッツィ・ケンジットと再婚していますが、96年に再び離婚しています。
カーって顔に似合わずもてるんですね。実際本国での女性人気は高くて、デュラン・デュランニック・ローズがライバル視していたなんて話も聞いたことありますし。もしかして性格がめちゃめちゃ良かったりするんでしょうか。