アフター・ザ・ファイアー

またまた体調を崩してしまいましたので、今回は短めの更新にする予定です。
短めに、となると当然有名どころは曲数が絞れず扱えないので、自然と一発屋的なキワモノ系が中心となってしまいますが、そのへんはご勘弁願えると幸いです。
今回取り扱うのは、昔懐かしい一発屋のアフター・ザ・ファイアー(以下ATF)です。
日本でも『Der Kommissar』(邦題は『秘密警察』)がヒットしたので、覚えている方もおられるのではないでしょうか。


彼らは70年に英国ロンドンで、キーボードのピーター・バンクス(初期イエスに同姓同名の人がいますが、もちろん別人)を中心に結成されました。
もともとはジェネシスにも通じるような、シンフォニックなサウンドを前面に押し出したプログレ・バンドとしてスタートし、自主制作でアルバムを3枚制作しています。
そのため70年代後半には次世代のプログレの有望株として、知る人ぞ知る存在となっていたのですが、運悪くそこでパンクやニューウェーブが台頭したため、プログレとして活動を継続することが困難になってしまいます。
そこで彼らはニューウェーブ調のサウンドに転進を図り、79年にはルパート・ハインをプロデューサーに迎えてアルバム『Laser Love』をリリースします。


After The Fire - One Rule For You


これが当時リリースされたシングルです。全英40位を記録し、そこそこのヒットにもなっています。
キーボードの音は確かにニューウェーブな感じなんですが、曲の展開などはキャメルあたりのプログレを思わせるところもあって、なかなかの珍味ですね。
まあプログレ・バンドが中途半端にニューウェーブに接近した音、と言っちゃえばそれまでなんですが。


その後一時はパッとしない時期を送るんですが、彼らはあのエレクトリック・ライト・オーケストラ(以下ELO)のツアーに帯同してチャンスを待ちます。
一度ELOのドラマー、べヴ・べヴァンが病気で倒れた時は、ATFのドラマーであるピート・キングが代役を務めたこともあったそうなので、腕自体は確かだったのでしょう。
こういうことがあってELOのメンバーから彼らの話が伝わり、それをきっかけにヴァン・へイレンの全米ツアーの前座に抜擢されることで、彼らは再びチャンスを掴みました。
これでアメリカで名前を売った彼らは、エレポップにより接近したシングル『Der Kommissar』をリリース、これが起死回生の一発となるのです。


After The Fire - Der Kommissar


83年リリースのシングル。ビルボードで5位、全英では47位のヒットとなっています。
アナログ・シンセのポップな音色と、ラップ調のヴォーカルが印象的な曲ですね。
エレポップのサウンドにラップを乗せるというアイディアは、当時かなり斬新に感じた記憶があります。今聴くとラップと言うよりは早口言葉みたいですが。
なおオリジナルはあの『Rock Me Amadeus』であまりにも有名なファルコのヒット曲で、ドイツ語を英語に直してカバーしています。


しかし彼らはこれ以降ヒットを出すことなく、一発屋の烙印を押されたまま86年にはあえなく解散してしまいます。
実力的には申し分なかった気がするんですが、やはりルックスもサウンドも今ひとつ垢抜けなさを引きずっている感じが良くなかったんでしょうか。
04年にはバンクスを中心にATF2として再結成されますが、バンクス以外のオリジナル・メンバーは誰も参加していません。現在は本来の持ち味だったプログレ風のサウンドに戻り、4枚のアルバムをリリースするほかライブでも活動しているようです。
なおヴォーカルのアンディ・ピアシーは解散後プロデューサーに転じ、ゲイリー・ニューマンなどの作品を手がけています。