マッチボックス

どうもです。今月は仕事の関係で疲れているので、簡単な更新を心がけております。とか言いつつ、前回も動画8つも貼ってましたけど、まあそれはそれとして。
と言うわけで、今回も小ネタです。まったくの専門外なんですが、ロカビリーでも取り上げてみましょうか。
僕らの世代でロカビリーと言うと、ますストレイ・キャッツの活躍が印象的でしょうか。オールディーズなスタイルでありつつもパンキッシュな要素も取り入れていて、個人的には結構好きでした。
しかし彼らを取り上げると多少長くなりそうな気がするので、同時代のロカビリー・リバイバルで活躍したバンドで、なおかつ日本でもそこそこ人気のあったマッチボックスを取り上げてみます。
日本でロカビリーと言うと50年代と80年代にちょこっと流行ったくらいなのでピンと来ないんですが、英国では伝統的にロカビリーやオールド・ロックンロールを、流行とは関係なく身近な音楽として親しむ傾向が強いそうで、ロカビリー・シーンも50年代の誕生以来ずっと存在していて、今でも国内や欧州のフェスなどに、多くのバンドが参加しているのだとか。
ただ商業的な成功には結びつきにくいところもあるようで、80年代初頭のネオ・ロカビリー・ブームの時も、結局売れたのはストレイ・キャッツとシェイキン・スティーブンス、ジェッツ、そして今回取り上げるマッチボックスくらいだったんですけど。


マッチボックスは71年に英国で結成されています。名前の由来は有名なアメリカのロカビリー・ミュージシャン、カール・パーキンスの名曲『Matchbox』から取られているそうですね。
彼らは何度かのメンバーチェンジを経て、マンゴ・ジェリーとのセッション経験のあるスティーブ・ブルームフィールド(ギター)が加入することによって浮上のきっかけを掴み、75年にシングル『Rock`n`Roll Band』でデビューを果たします。
しかし所属するロックハウス・レーベルの経営不振などもあって活動には困難が付きまとい、70年代後半までは泣かず飛ばずの状態が続いていました。ただヒットこそ出ないものの、76年リリースのデビューアルバム『Riders in the Sky』は好評で、日本でもちゃんと発売されたくらいですから、実力は認められていたようです。
そんな彼らに実力に見合った人気がついてくるのは78年頃でしょうか。この年にグレアム・フェントン(ヴォーカル)、ブルームフィールド、ゴードン・スコット(ギター)、フレッド・ポーク(ベース)、ジミー・レッドヘッド(ドラムス)というラインアップを整えた彼らは、精力的にライブを行い、少しずつ人気を積み重ねていきます。
そしてそれまでバンドの宣伝をろくにしてくれなかったチズウィック・レコードを離れ、マグネットに移籍したのも幸いしたのか、79年にはシングル『Rockabilly Rebel』がヒットし、ようやく陽の目を見ることとなったのでした。
ストレイ・キャッツが渡英して人気者になったのは翌80年ですから、彼らはネオ・ロカビリー・ムーブメントの波を利用することなく、独力で這い上がったバンドということになるわけですね。


Matchbox - Rockabilly Rebel


79年のシングル。全英18位。他にもニュージーランドでは1位、オーストリアでは8位、スイスでは9位に入っています。
パンキッシュな要素を取り入れたストレイ・キャッツなどのネオ・ロカビリー勢と違って、まんまプレスリーの時代からタイムスリップしてきたような、カントリーの要素も混じったオーソドックスなロカビリーですね。こういう昔ながらのロカビリーのスタイルを守る人たちのことを、ネオ・ロカビリーと対比する形でピュア・ロカビリーと呼んでいるらしいですが。
このご時世に聴くとあまりに素朴なんですが、そこが彼らの魅力なんだと思います。


Matchbox - Buzz Buzz a Diddle It


80年のシングル。全英22位。オランダでも6位を記録しています。
この曲はイタリア系の白人ロック・シンガー、フレディ・キャノンの小ヒット(61年にビルボードで51位)のカバーですね。
もう思いっきりレトロな感じで、とても80年の音とは思えないんですが、キャッチーでアッパーなところはなかなかかも。


Matchbox - Midnite Dynamos


これも80年のシングル。全英14位。他にもオランダで3位、スイスで4位、アイルランドで9位を記録しています。
最初のスラッピング・ベースがカッコいいですが、曲自体はのどかな雰囲気とポップなメロディが印象的ですね。


Matchbox - When You Ask About Love


これも80年のシングル。クリケッツのカバーで、邦題は『愛にこたえて』。
全英4位まで上昇し、彼ら最大のヒットとなっています。またアイルランドでは3位に入っています。
ワイルドワンズあたりを連想させる優しい感じの曲で、音自体はレトロですがメロディーはいいですね。


この年彼らは来日も果たし、各地で好評を博しました。もともとパブなどを回ることで鍛えられていたため、ライブの盛り上げはお手の物だったようです。
また元ジャッキー吉川ブルーコメッツ井上忠夫井上大輔)のペンによる『I'm a Lover Man』(邦題は『ロカビリー天国』)を録音し、翌年にはサントリーの缶ビールのCMソングに起用されています。日本でもそのくらいの人気はあったということですね。


Matchbox - I'm a Lover Man


これがそのシングル。彼らの曲の中では最も現代的と言うか、ネオ・ロカビリーに近い感じがします。
スピード感もありますし、ドゥーワップっぽいコーラスもいいですし、ギタープレイも決まってますし、何より曲が本当にポップです。彼らの中では一番好きな曲かもしれません。
井上忠夫は当時マッドネスの『In the City』(ホンダ・シティのCMソングとしてあまりにも有名)、ストロベリー・スウィッチブレイドの『Ecstasy (Apple of My Eye) 』(スバル・レックスのCMソング)も提供しています。洋楽っぽいセンスを持った作曲家でしたね。不幸な死を遂げたのが惜しまれます。


Matchbox - Babe's in the Wood


81年のシングル。全英46位。
音は相変わらずレトロな感じですが、勢いもありますしさりげなくタイトで、結構聴けます。


しかし82年になると、メイン・ソングライターであったブルームフィールドが、ツアーの連続に疲れて脱退してしまいました。
バンドは補充メンバーを向かえて活動を続行しますが、その頃にはネオ・ロカビリー・ブームもすっかり下火になっており、彼らの人気は下降の一途を辿っていくのです。
もともとブームとは関係のないところでブレイクしたのに、ブームの衰退のあおりを食ってしまうというのは何とも理不尽ですが、人気というのはそんなものなんでしょうね。


Matchbox & Kirsty MacColl - I Want Out


カーステイ・マッコールとのコラボシングル。
ワイルドなフェントンとケルティックな風味漂うマッコールのヴォーカルの掛け合いで、オールディーズ風のノスタルジックなメロディーが展開していく佳曲です。
しかしこの曲はチャートインせず、彼らのメジャーからの最後のシングルとなってしまいました。


そんなこんなで活動の縮小を余儀なくされたマッチボックスですが、その後もメンバーチェンジを繰り返しながら、地道に活動を続けていきます。
本国では人気を失っても、ヨーロッパ圏での人気はまだまだ根強いものがあり、ライブツアーは途切れることなく行っていました。また混乱期のユーゴスラビアで3枚のゴールド・ディスクを獲得するなど、ローカルではセールスも健在だったようですね。
95年には脱退していたブルームフィールドも復帰し、現在は全盛期の頃のラインアップでライブ活動を続けているようです。