エクスプロイテッド

こんなブログをやってこそいますが、一応自分も人間なので、苦手なジャンルの音楽というのはあります。
まずはヒップホップ。これは自分が旧世代の人間ということもあって、割と苦手です。もちろんビースティー・ボーイズのように好きな人たちもいますが。
そして何て言ってカテゴライズしていいのか分かりませんが、ディーバ系というか歌姫系はまるっきりダメです。「私、上手いでしょ」ってしつこく念押しされている感じがして、そこがダメ。
それとハードコア・パンクというのもそんなに得意じゃありません。眉根を寄せて肩に力が入っているみたいなイキリ具合が苦手です。
でもハードコア・パンクバンドの中にも、こいつらは憎めなくて好きだなと思っている人たちもいます。それが今回取り上げるエクスプロイテッドです。


エクスプロイテッドは79年、スコットランドエディンバラで、ワッティー・バカンを中心に結成されたハードコア・パンクバンドです。
ワッティーは幼い頃、父親が運営していた醸造会社が倒産し、貧しさのため養護施設に入れられていたという過去を持っています。その後英国陸軍に入隊しますが、ドイツ駐留時にセックス・ピストルズを聴いて強い影響を受け、軍隊内でパンクファッションをしていたため独房に入れられたこともあったそうです。
そして除隊後帰郷しますが、当時の英国は不況だったため仕事も見つからず、「やることもないししょうがなく」というすごい理由でエクスプロイテッドを結成したのです。


彼らの音の特徴は、端的に言うと「バカ」なところ(笑)
ハードコア・パンクというのは政治的主張がはっきりしていて、結構掘り下げられた歌詞が多いんですが、彼らの場合はとにかく語彙が少ないんです。
世の中に働きかけるようなメッセージはほとんどなく、「No」「Hate」「Fuck」を多用した、ただ単に口汚く罵るような歌詞が基本で、その単純さ、素朴さには眩暈がするくらいです。
しかしその分どこから得ているのかよく分からないギラギラした確信と野卑なパワー、生々しいヘイト・アティテュードは群を抜いていて、その猪突猛進としか言いようのないサウンドと相まって、強烈な存在感を放っています。
それとワッティーの高々とそびえ立つ赤いモヒカンも強烈ですね。一度観たら忘れられないインパクトを放っています。


The Exploited - Dead Cities


81年リリースのシングル。全英31位という、この手のバンドではありえないくらいのチャートアクションを記録しています。
驚いたのはこの映像がBBCのトップ・オブ・ザ・ポップスで放送されたものだということでしょうか。ハードコア・パンクはこの番組には無縁だと思っていたので。
音はハードロックにも似た、分厚くキレのいい音で、シンプルかつ豪快なものとなっています。
ちなみにギターを弾いているハードコアらしくなく太った男は、ビッグ・ジョン・ダンカンといい、脱退後は末期のニルヴァーナでギターテクを務めていたりしました。


The Exploited - Fuck The USA


82年の2ndアルバム『Troops Of Tomorrow』収録曲。このアルバムは全英17位と彼ら最大のヒットとなっています。
曲についてはもうタイトルからしてアホ過ぎて、何も言う気がなくなってしまうんですが(笑)
まあある意味すがすがしいまでのバカさ加減で、個人的には好きですけどね。
ギラギラとメタリックで喧嘩腰の音と、自分の言っていることに対して絶大なる自信を持っているのが感じられるところがいいですね。


エクスプロイテッドは米国ツアーを行った際、当時のドラマーが強盗を働いて禁固7年の刑などに処せられるなどの武勇伝(と言っていいのか)を残しつつ、活動を続けていきます。
メンバーは入れ代わりが激しく、これまで30人以上の人間が出たり入ったりしている(何故かワッティーの父親がメンバーに名を連ねていたこともある)んですが、現在もバリバリの現役として頑張っています。
ワッティーも未だにモヒカンを保ちつつ、現役に拘る執念を見せています。この不変のアティテュードはまさにパンク、と言っていいのかもしれません。