最後に取り上げるのは、アイルランドの伝説的ロッカー、シン・リジィの故フィル・ライノットです。
何しろダブリンに彼の銅像が立っているくらいですから、彼の名前を知らない方にも、どれだけ伝説的な人なのかは理解して頂けるのではないでしょうか。
シン・リジィはロマンティシズムを前面に出したハードロックで、こんな感じの音だったので、ニューウェーブとかそういうのからは最も遠そうに思っていたのですが、ライノットもやはり人の子、流行には敏感だったようで、81年にテクノポップのシングルを出してしまうのです。
Philip Lynott - Yellow Pearl
ソロアルバム『Solo In Soho』(邦題は『ソーホー街にて』)からのシングル。全英14位のヒットになっています。
もうこの曲はどこからどう聴いても、テクノポップ以外の何者でもないですね。この曲をハードロックの人が作ったんだよ、と言っても誰も信じないでしょう。
PVを見ると芸者みたいな女の人が出てきます。ということは当時英国でも話題になったYMOに影響されているんでしょうか。ライノットがYMOを聴いていたとしたら、それはそれで興味深いです。
なおこの曲は、ウルトラヴォックスのミッジ・ユーロとの共作です。ユーロはゲイリー・ムーアの代打として、シン・リジィの日本公演にギタリストとして参加したこともあるので、繋がりがあること自体は不思議でもなんでもないんですが、何故わざわざユーロを呼んでここまでテクノポップに接近したのかは不明です。まあジョークみたいな感じだったんでしょうかね。
ちなみにこの曲は、BBCの看板音楽番組だったトップ・オブ・ザ・ポップスのテーマソングとしても使われています。
とりあえず3人を取り上げてみましたが、アプローチの仕方が三者三様で、比べてみると面白いかもしれません。
次回は彼ら以上の超大物が、ニューウェーブ、テクノポップに接近したときの音を取り上げる予定です。それでは、また来週。