ニール・ヤング

今回はちょっと短めの更新になります。
いつも短め短めと言いつつ、結局は長くなるのがこのブログの常なんですが、今回は本当に短めです。
実はアイスバーンで転倒したせいで、肘を打撲してまだちょっと痛いのですよ。
ですからあっさりした内容になってしまいますが、その分少し目先を変えてますので、それで手を打って頂ければ何よりです。


70年代末、英国で起こったパンク・ムーブメントは、その後ニューウェーブとして商業的に大きな動きになっていきます。
レコード会社やメディアは、この大きなビジネス・チャンスをものにすべく、ニューウェーブ・ミュージシャンの売り出しに全力を注ぎました。
それはそれまで活躍していたミュージシャン全部を、「オールドウェーブ」としてひとくくりにすることで、それに対抗するニューウェーブの若さと新しさを印象付けることになります。
しかし「オールドウェーブ」扱いされたほうはたまったもんじゃありません。自分たちだってかつてはエスタブリッシュメントへのカウンターとして登場していたのですから。
ただ彼らのニューウェーブへの対応となると、人それぞれでした。嵐が過ぎ去るまで身を潜めるのが最善の策とばかり、しばらく活動を休止し余裕の態度に出たもの、もしくはオールドもニューも関係なく、我が道を行くものが一番多かったですし、それが多分一番利口なやり方だったのでしょう。
しかし中には、玉砕覚悟で敢然とニューウェーブに立ち向かい、こちらを驚かせてくれたミュージシャンもいます。今回はその中から3人を取り上げてみましょう。


まずはカナダのシンガーソングライター、ニール・ヤングです。
ヤングと言えば60年代のバッファロー・スプリングフィールド時代から活躍し、この時点ではすでに大御所でした。
音はまあこんな感じで、フォークもしくはロックンロールの人と言っていいでしょう。
しかし彼はパンク・ムーブメントにも敏感に反応しており、79年のアルバム『Rust Never Sleeps』はセックス・ピストルズジョニー・ロットンジョン・ライドン)に捧げられ、ツアーにはあのディーヴォを帯同するくらいでした。この時点で大御所とは思えないくらいのフットワークの軽さです。
そして82年には、なんとテクノポップのアルバムをリリースするのです。それが迷盤中の迷盤『Trans』です。


Neil Young - Computer Age


『Trans』からの一曲。
今聴くと「なんだ、ヴォコーダー使っただけじゃん」と思わなくもないのですが、当時としては衝撃的でした。だってあのヤングがこれをリリースしたんですから。
曲としての評価は「うーん」という感じですが、もうすっかりベテランで芸風も世間に定着している人が、あえてその最大の個性である独特の鼻声をヴォコーダーで捻じ曲げてしまう、というその行為自体がロックなんじゃないかと思います。
ニューウェーブへの感応ぶりをストレートに表明する、不器用なまでの誠実さはいかにもヤングらしく、自分としては好感を持っています。出来はとにかくとして。


『Trans』は全英で29位には入ったものの、ビルボードでは大惨敗を喫し、ファンからもメディアからもぼろ糞に叩かれました。
さすがにこれに懲りたのか、その後ヤングはテクノからは撤退して本来の路線に戻り、『Trans』は黒歴史として封印されることとなったのです。
しかし89年にリリースされたヤングのトリビュート・アルバムで、ソニック・ユースがあえてこの曲を取り上げ、久々に話題になりました。


Sonic Youth - Computer Age


最初曲目を見た時は、嫌がらせかよと思ったくらいなんですが、聴いてみるとめちゃめちゃジャンクでカッコいいロックに仕上がっております。お薦め。