プリミティブズ

お元気でしょうか。それにしても寒いですね。
寒くて外に出たくないですし、それよりも何よりも暇なので、更新の筆は捗るんですけど、本当にそれでいいのかな、と思ったりもして。
とりあえず体力を落とさないよう、暖かい頃合を狙って散歩でもしないといけません。
皆様も風邪など引かれないようご自愛下さいませ。


今回はオーストラリア出身のブロンドヘアーの歌姫、トレイシー・トレイシーを擁するプリミティブズを取り上げてみます。
前回取り上げたトランスヴィジョン・ヴァンプのウェンディ・ジェイムスとトレイシーが、時にはマスコミを通じて、時には公衆の面前で罵り合ってばかりいたので、個人的にはゴシップ的な意味で印象に残っています。
プリミティブズは86年、イギリスのコベントリーで結成された女1人、男3人(途中で1人抜けたけど)のバンドです。
結成後しばらくはインディーズでやっていましたが、そこで人気を得てメジャーのRCAとの契約をゲットし、88年にメジャーデビューします。
するとトレイシーの美しい容姿と、メロディアスで疾走感のある曲調が受けたのか、シングル『Crash』が大ヒットして、一躍人気者の仲間入りを果たしたのでした。


彼女たちの特徴はポップでキャッチーなメロディと、ほとんどの曲が3分にも満たないという性急さでしょうか。
耳馴染みのいい繊細なギターに、トレイシーのコケティッシュだけど儚げなヴォーカルが乗るところも、ネオアコっぽくてなかなか良かったですね。
ただアイドルバンドの悲哀か、世間一般には同時期にいたトランスヴィジョン・ヴァンプのライバルとしてしか見られていなかったきらいはありました。
実際トレイシーとウェンディは、お互いのことについては容赦ない毒舌を繰り出していましたっけ。確か口火を切ったのはより蓮っ葉な感じのウェンディだった記憶がありますが。
あとあのモリッシーが、プリミティブズのTシャツを着てステージで歌ったことも話題になりました。どうも彼女たちの大ファンだったらしいですね。


The Primitives - Crash


88年にリリースされ、全英5位の大ヒットとなった出世作です。米国でもビルボードオルタナティブ・ソングチャートで3位に入ってます。
一度聞けば覚えられるような単純だけどポップなメロディ、小気味良いギターの音、適度なインディー感のある演奏が心地良く、個人的にはなかなか好きですね。


The Primitives - Way Behind Me


88年リリースのシングル。全英36位。
これも『Crash』と同路線の曲ですね。頭を使ってなさそうなシンプルなアレンジと、キラキラした感じの流麗なギターが割と好きです。


しかしプリミティブズが人気があったのはこのへんまででした。
引き出しが少なかったのでしょうか。デビュー当時のイメージからなかなか脱却できないまま、ダンス・ミュージックの波に乗ることができず、そのまま低迷してしまったのです。、
それでも92年にはマンチェスターサウンドに追随したようなアルバムを出すものの、かえってバンド本来の魅力を失ってしまい、セールスも惨敗しバンドはそのまま解散してしまいました。
流行の波に乗って現れた人って、次の波にも乗るのは本当に難しいものなんですよね。それができるのは才能のある人だけなんですけど、彼女たちにはそこまでのものは感じませんでしたし。


その後彼女たちについてはまったく音沙汰がありませんでした。
しかしその名前をすっかり忘れてしまった09年、何の前触れもなくいきなり再結成を果たしたので正直ビックリしました。
活動は結構活発で、マイナーなガールズバンドの曲をカバーしたアルバムも出しています。


The Primitives - Turn Off The Moon


スタンリー・キューブリック監督の映画『ロリータ』でロリータ役を演じたスー・リオンが、劇中で歌っていた曲のカバーです。
トレイシーはさすがに歳は取りましたけど、コケティッシュなヴォーカルは健在ですね。サウンドもシンプルで昔を思い出します。
昨年はノイズ・ポップバンドのリンゴ・デススターと共演という形で21年ぶりに来日を果たし、元気なところを見せてくれたようです。