スクリッティ・ポリッティ

前回急遽MCAの追悼として、ビースティ・ボーイズを取り上げましたので、今回は前々回の続きでスクリッティ・ポリッティです。
実は今日もちょっと時間がないので、あっさり目の更新ですがご了承下さい。


『Songs To Remember』で評価を高めたスクリッティ・ポリッティは、メジャーのヴァージン・レコードとの契約を得ます。
バンドのメンバーは、中心人物のグリーン・ガートサイドだけになっていたはずですが、彼の創作意欲はますます盛んで、単身ニューヨークに移り住み、2年以上の制作期間を経て、満を持して充実したシングルを連発しました。
前作がデモ・テープのような作りだったのと違い、メジャーに移ってからはデヴィッド・ギャムソン(キーボード)とマテリアルのフレッド・マー(ドラムス)をパートナーとし、アトランティック・ソウルの大御所アリフ・マーディンをプロデューサーに据え、百戦錬磨のスタジオ・ミュージシャンたちをふんだんに用い、フェアライトなどの電子楽器とゲート・リバーブなどの最新録音技術を駆使し、当時としては斬新なサウンドを持った珠玉のブルーアイド・ソウルに仕上げています。
あの時代はシンセを多用したエレポップ花盛りの時期でしたが、彼らのサウンドはそのへんの音とはまったく次元が異なるくらい緻密に作り込んでいて、その隙のないプロダクションはスティーリー・ダンを思わせるものがありました。しかし緻密でありながらもはちきれんばかりの肉体感と躍動感も兼ね備えていて、当時そこに驚いた記憶がありますね。
当時の最新テクノロジーを多用した結果、今聴くと多少古臭いというか、いかにも80年代の音になってしまっているのは否めませんが、メロディも歌詞も一筋縄ではいかない作りになっており、ただのポップスではないと感じさせてくれます。


Scritti Politti - Wood Beez(Pray Like Aretha Franklin)


84年リリースのシングル。全英10位。ビルボード91位。邦題は『ウッド・ビーズ(アレサ・フランクリンに捧ぐ) 』。
凝った組み合わせのリズムがセンス抜群なダンスミュージックですが、打ち込みと生楽器のバランスが緊張感を醸し出しているところが良いですね。


Scritti Politti - Absolute


84年リリース。全英17位。
スタイリッシュなシンセサウンドに、凝ったファンクアレンジ、そしてプリンスを思わせるような極上のメロディが絡む名曲です。
息遣いまでが伝わってきそうなグリーンの歌い出しもたまらないものがあります。


Scritti Politti - Hypnotize


84年リリース。全英68位。ビルボードクラブチャート43位。
調べてみるとあまり売れてなかったようで、ちょっと勘違いしてたみたいなんですが、このカオスな感じのリズムは好きでしたっけ。
当時坂本龍一が、自分のFM番組でこの曲をオンエアしていたのを思い出しますね。


Scritti Politti - The Word Girl(Flesh and Blood)


85年リリース。全英6位。
この曲はアルバムのトップを飾っているんですが、マニアックな和声の活かし方をしているスローなレゲエというのが、なかなか意表を突いていました。
当時の彼らのシングルの中ではもっとも地味な曲ですが、湿り気があると言うか叙情的な感じがいかにもイギリス人好みなのか、英国では最大のヒットを記録しています。


Scritti Politti - Perfect Way


85年リリース。ビルボードでは11位を記録し、アメリカで最大のヒットとなっています。全英では48位。
バリバリのエレクトロサウンドなんですが、醸し出される黒っぽさのおかげでいい感じにあったかくなる名曲です。
それととにかくPVがお洒落だなあって当時思いましたっけ。


改めて聴いて思いましたが、英国的な創造性と米国的なプロダクション能力、それと白人的な感性と黒人的な音楽語彙が、ビックリするくらい見事にミックスされていますね。
このレベルの高い5枚のシングルをわずか1年ちょっとの間にリリースしたんですから、当時のグリーンの充実ぶりは神がかり的なものがありました。まさに天才と呼ぶにふさわしいレベルだったと思います。
これらを収録した2ndアルバム『Cupid & Psyche 85』は、全英5位、ビルボードで50位のヒットを記録しました。個人的にはもっと売れていると思っていたんですが、正直意外でしたね。
当時日本ではスタイル・カウンシルのようにお洒落な音楽として認識されていて、逆に好きと公言しにくい雰囲気があったくらいだったんですけど、今は堂々とこれは良いと言えます。


彼らは88年に3rdアルバム『Provision』をリリースし、全英8位とヒットさせますが、グリーンのモチベーションが一時枯渇したのか、その後しばらく活動を停止します。
それでもB.E.Fと組んでシングルを出すなど、散発的に活動してはいたんですが、99年にはなんと11年ぶりのアルバム『Anomie & Bonhomie』をリリースし、本格的に復帰を果たしました。
このアルバムは正直セールス的にも評価的にも厳しいものだったんですけど、その後も彼らはスローペースで活動を続け、06年には5thアルバム『White Bread, Black Beer』をリリースし、同年にはフジロックに招かれ来日もしています。