サード・ワールド

夏だからここはひとつレゲエでも聴いてみるか、と思い立ったんですが。
ただ僕の場合レゲエと言えばボブ・マーリー、くらいで時代が止まっている人なんで、最近の本流であるダンスホール・レゲエとか全然知らないのでした。
やっぱりレゲエはルーツ・レゲエに限るよな、などと呟きつつ、かつて流行の最先端だったサード・ワールドでも出してみましょうか。


サード・ワールドはジャマイカのレゲエ・バンドで、現在でも活動している大ベテランであります。
もともとはレゲエの保守本流的なサウンドを出していたんですが、70年代後半からレゲエとソウル、ディスコを融合させたようなサウンドに変わり、一気にアメリカでヒットを飛ばすようになりました。
当時僕が聴いたときも、他のレゲエ勢の泥臭さとは一線を画した、キーボードを前面に出した洗練された音が印象に残りましたっけ。


Third World - Try Jah Love


82年の大ヒットアルバム『Try Jah Love』のタイトルナンバー。
このライブは83年に開催された、ボブ・マーリー追悼のためのレゲエ・サンスプラッシュ83'でのものですね。
イントロの印象的なピアノと、レゲエにしては非常に聴きやすいポップなメロディーが耳に残りますが、作曲とプロデュースがあのスティービー・ワンダーと聞いて納得。
とにかく大変夏に似合う曲です。まあライブなんで多少ヴォーカルに荒々しさがあったりもしますが、それでもかなりポップなんじゃないでしょうか。


しかし日本ではその聴きやすさが災いして、トロピカル・ダンス・ミュージックとして扱われてしまい、ジャケットを無理やり南国の島に差し替えられた挙句、タイトルまで『ラヴ・アイランド』にされてしまう始末。
原題の「Jah」とはヤハウェの短縮形で、歌詞も「神の愛を受け入れるんだ」というメッセージ性の強いものなのですが、それをいくら売るためだからとはいえ『ラヴ・アイランド』に変えちゃうってのはないだろうと、当時思ったものでした。
まあそれはそれとして、この曲は日本でも売れました。サード・ワールドは確か『笑っていいとも』にも出演した記憶があるんですが、そのくらい売れたということですね。
スタイル・カウンシルのときにも同じようなことが起きましたが、本来硬派なメッセージを持ったはずの音楽が、言葉がわからないのをいいことに、遠い国でオシャレのアイテムとして消費されるというのは、なんとも物悲しいような可笑しいような奇妙な現象であります。