ラッツ

残暑が厳しくてすっかり体調を崩しています。皆様はいかがお過ごしでしょうか。
今日は多少涼しいので、どマイナーなバンドのことでも簡単に書いて、お茶を濁そうと思っております。よろしければお付き合い下さい。


今回取り上げるのは70年代末に活躍したパンクバンド、ラッツです。
前回がブームタウン・ラッツで今回がラッツって、我ながら安直だとは思いますが、このブログはそういういい加減さを常に秘めていますので、その点はご容赦下さい。
まあそれはとにかくとして、恒例のバンド紹介を始めましょう。
ラッツは77年に英国ロンドンで結成されました。メンバーはマルコム・オーウェン(ヴォーカル)、ポール・フォックス(ギター)、ジョン・"セッグス"・ジェニングス(ベース)、デイブ・ラフィ(ドラムス)の4人組です。
彼らは79年にパープル・ユナイツというインディーズのレーベルからシングル『In A Rut』でデビュー。それが認められてすぐにヴァージンと契約し、メジャーからレコードを出すようになりました。
特徴はいかにも男っぽい感じの骨太のサウンドと、オーウェンのがなりたてるような、いかにもパンクらしいヴォーカルでしょうか。
ヴォーカル・スタイルはザ・クラッシュジョー・ストラマーに影響を受けているのがもろわかりではありますが、それはそれでカッコいいです。
またアルバムを聴くと分かるんですが、彼らはレゲエやダブの要素を積極的にパンクの中に取り入れていました。このあたりもザ・クラッシュの影響と言えるかもしれませんね。


The Ruts - Babylon's Burning


79年にリリースされたシングル。全英7位を記録し、彼ら最大のヒットとなっています。
駆け上がるように急速に盛り上がっていく曲調と切迫した雰囲気、そして単純明快な歌詞がいかにもオールドスクールなパンクという感じでよいですね。
またイントロは非常ベルと救急車のサイレンの音で始まっていて、これも何かが起きそうな感じでなかなかカッコいいです。
ちなみに「Babylon」とは、当時レゲエでよく使われていた、悪徳と権力の集まった大都市を意味する言葉です。このへんに当時のパンクとレゲエの関係性を感じることができるのではないでしょうか。


その後も2曲のトップ40ヒットを出し、アルバムも全英16位まで上昇するなど、順調に活動していた彼らですが、80年にはオーウェンが薬物の過剰摂取で死亡してしまいます。
残されたメンバーはラッツDCと改名して活動を続けますが、看板ヴォーカリストを失った影響は大きかったのか、ほとんど成果を残すことなく、82年には解散してしまいました。


メンバーのその後ですが、ドラムスのラフィはなんとアズテック・カメラに加入し、あの名作『High Land、Hard Rain』でも叩いていますし、来日公演にも参加しました。
その縁で日本のフリッパーズ・ギターのアルバム『カメラ・トーク』でも2曲叩いていますし、他にもストラングラーズのアルバムのプロデュースもしているようです。
またフォックスはラッツの再結成を模索しつつも、いくつかのバンドを渡り歩いていましたが、年老いて肺癌を病み、闘病生活を送ることとなります。
そんな彼のために07年にベネフィット・ライブが開かれ、ダムドやUKサブスといった大物が参加しました。そしてラッツもあのヘンリー・ロリンズをヴォーカルに迎えて再結成され、フォックスの夢は現実のものとなります。
それに満足したのか、フォックスはそのステージに立った3ヵ月後に、自宅で息を引き取りました。57歳でした。


今となってみては「ザ・クラッシュのフォロワー」としか見てもらえないと思うんですが、『Babylon's Burning』はいい曲でしたよ。
オーウェンが亡くなっていなければ、もっと名前が知られるようになったかもしれません。死んだ子の歳を数えるようなもので、言っても虚しいだけですけど。