ジーン・ラヴズ・ジザベル

仕事中になんとなく思い出したんで、今回はジーン・ラヴズ・ジザベルです。
彼らはジェイ(ギター、ヴォーカル)とマイケル(ヴォーカル)の双子のアストン兄弟を中心として、81年に結成されました。主にインディーで活動していましたが、英国でのゴスの隆盛に合わせる形で注目されるようになっていきます。
特徴はなんといっても、美形のアストン兄弟のステージ等での絡みや、ヴィジュアル系の走りのようなメイクといった、視覚的な部分でしょうか。当時日本でもフールズ・メイトで、アイドル的なプッシュをされていたような覚えがありますね。彼らが表紙になった号も持ってましたから。
もちろん見た目だけというわけではなく、鮮烈なビートや輪郭のはっきりしたメロディ、そして独特のムードは評価されていて、のちに米国のカレッジFMで支持されるなど、着実に活動範囲を広げていました。


Gene Loves Jezebel - Desire(Come And Get It)


Gene Loves Jezebel - The Sweetest Thing


僕がすぐに思い出せるのは、このへんあたりの曲でしょうか。前者は85年、後者は86年にリリースされたシングルで、特に後者は初めて英国のナショナル・チャートにランクインしたはずです。
エッジの効いた硬質のギターや、エコーを施された独特の音響処理、そしてマイケルの妖しい翳りを持ったヴォーカルが印象に残ります。


しかし89年に兄弟喧嘩の末マイケルが脱退してしまうと、エキゾティックなルックスを持つ双子がフロントにいるという看板がなくなってしまい、バンドは低迷するようになっていきます。
一時はサウンドにポップ色を増し、アメリカン・テイストを漂わせた音作りにもチャレンジするなど試行錯誤をしていましたが、ファンの反応は賛否両論で、それを迷走ととられたのかセールスの低下に歯止めはかかりませんでした。
おまけに90年代後半には脱退したはずのマイケル(一度バンドに戻ったが再脱退した)が、新しいメンバーを引き連れてジーン・ラヴズ・ジザベルを名乗り、勝手に活動を始めるという事態まで発生しています。
前にL.A.ガンズを取り上げたときに、同時に2つのL.A.ガンズが存在した顛末を書いたことがありますが、こちらの場合は血を分けた兄弟で同じことをやっているわけで、業の深さと救いのなさという点では勝っているかもしれません。
この暴挙に当然兄のジェイは怒り狂い、これを裁判に持ち込みました。結局マイケルのほうがバンド名に自分の名前を追加して、「Michael Aston's Gene Loves Jezebel」を名乗ることによってとりあえず事態は収拾されましたが、これで兄弟の仲は完全に決裂することになります。
その騒動の後のことはまったく知らなかったんですが、調べてみると現在も2つのジーン・ラヴズ・ジザベルは双方とも活動していて、マイケルのほうは今年シングル(最初に載せた『Desire』の再録)もリリースしているらしいです。