オール・アバウト・イヴ

前回の続きです。と書くと「またか」と思われる方もおられるでしょうが、こういう連想ゲーム的な展開でネタ探しをすることが多いブログなので、どうかご容赦ください。
ジーン・ラヴズ・ジザベルの初期には、ジュリアンヌ・リーガンという女性ベーシストが在籍していました。と言っても、在籍期間は10ヶ月足らずだということなので、その頃のことはまったく知らないのですが。
そのジュリアンヌがジーン・ラヴズ・ジザベル脱退後に結成したのが、今回ネタにするオール・アバウト・イヴです。バンド名はジョーゼフ・L・マンキーウィッツ監督、ベティ・デイヴィス主演の映画『All About Eve』(邦題は『イヴの総て』)からとられています。
もともとこのバンドは、ゴスの文脈で語られていたバンドでした。ジュリアンヌの前歴が前歴ですし、当時ゴス界隈で活躍していたミッションやフィールズ・オブ・ネフィリムらとともに積極的にライヴも行っていました(ジュリアンヌはミッションのデビューアルバムにコーラスで参加もしている)から。
というわけで、僕もかなりゴシックで暗黒っぽいサウンドを予想しつつCDを買ってみたんですが、一聴してみて思わず言っちゃいました。「これ、フォークじゃん」って。


All About Eve - Martha's Harbour


88年にリリースされた1stアルバム『All About Eve』(邦題は『イヴの肖像』)からのシングル。全英では10位にまで上がり、最大のヒットとなっています。
聴いてみて頂ければわかると思いますが、ゴスを連想させるような要素はほとんどなく、むしろ英国伝統のトラディショナル・フォークに近い音になっていますね。
アコースティックギターの奏でる優しい調べに乗せて、ジュリアンヌの透明感と哀愁のあるヴォーカルが静かに染み入っていき、聴いていると自然とリラックスして癒されます。
ジュリアンヌはもともとサンディ・デニーニック・ドレイクなどに大きな影響を受けたそうで、それを考えるとこの路線は必然だったのかもしれません。
ちなみにこのアルバムのプロデュースは元ヤードバーズのベーシストだったポール・サミュエル・スミスであり、またジャケ写を撮影したのはやはりヤードバーズ出身で後にカメラマンに転じたクリス・ドレヤだそうです。こんなところで名前を聞くとは思わなかったので、当時感慨深かった記憶がありますね。


All About Eve - December


89年リリースの2ndアルバム『Scarlet and Other Stories』からのシングル。全英では34位を記録しています。
こちらはより幻想的でゴシック風味が増し、儚げな浮遊感の漂う曲に仕上がっていますが、ジュリアンヌのしっとりとしたヴォーカルと、メランコリックな叙情は不変です。
ゴスの特徴である耽美的なニュアンスも含むようになっていて、今で言うとエヴァネッセンスあたりに近いテイストでしょうか。


バンドは92年頃に一時解散し、ジュリアンヌはベーシストとドラマーを引き連れ、マイスというシンプルなギター・ポップのバンドを結成しました。
しかし99年にはオール・アバウト・イヴを再結成し、現在も地道に活動しています。ちょこっと聴く機会があったんですけど、ジュリアンヌのヴォーカルには倦怠感が増していて、やや鬱の入ったメロウな音世界になってましたっけ。