カジャグーグー

ベックの次がこれとか、我ながらあまりに異常な気もするんですが、今回はカジャグーグーです。
日本でもアイドル的な人気を誇ったんで、当時洋楽を聴いていた人は名前くらいは知ってるかもしれません。


カジャグーグーは当時うだつの上がらなかったアール・ヌーヴォーというバンドに、ソロ歌手をやっていたリマールが参加する形で結成されました。
当時デュラン・デュランサイモン・ル・ボンのガールフレンドがリマールと知り合いで、その関係から新たなバンドプロデュースをしたがっていたニック・ローズを紹介され、ニック・ローズが彼らをEMIに紹介する形でメジャーデビュー。
するとリマールやベーシストのニック・ベッグスのルックスのよさもあって、爆発的なアイドル的な人気を博すようになり、デビュー曲の『Too Shy』が大ヒットします。


Kajagoogoo - Too Shy


邦題は『君はToo Shy』。デビュー曲で全英で1位を果たすという快挙を成し遂げ、その他ヨーロッパ7カ国でも1位となり、ビルボードでも5位になったという大ヒット曲です。
当時僕もとりあえず流行っているから、という理由で聴いてみたんですが、そのアイドルらしからぬ本格的でこなれた演奏と、プロデュースのセンスの良さに驚いた記憶がありますね。
繊細なヴォーカルと巧みなベース、そして硬質なシンセの音が印象に残るホワイト・ファンクで、今聴いても多少バブルっぽいところはあるものの、古さは感じないところがすごいです。


しかし成功もつかの間、リマールがギャランティの配当の50%という法外な要求をするなど、バンドの中は金銭的問題で揺れ動いていて、ついにリマールは解雇(一般向けには音楽の方向性の違いで脱退と発表された)されてしまい、カジャグーグーはニックがヴォーカルを取ることによって再スタートを切ります。


Kajagoogoo - The Lion's Mouth


84年に発表された新生カジャグーグーのシングルですが、全英で25位という中ヒットに終わります。
でもこれもちょっとファンクとかソウルとかフュージョンとかの要素を巧みに取り入れていて、個人的にはなかなかの佳曲だと思っているのですが。
気になるのは当時非常に珍しかったチャップマン・スティックを、ニックが弾いているところがチラチラ映るところでしょうか。
トニー・レヴィンに代表されるように、演奏にかなりのハイテクニックが要求されるこの楽器を、所詮はアイドルだと思っていたニックが弾いているところに、大変強い衝撃を受けましたっけ。


一方のリマールはソロに転進して一発ヒットを飛ばします。


Limahl - Never Ending Story


ミヒャエル・エンデ原作の映画『Die unendliche Geschichte』(日本公開時の邦題は『ネバーエンディング・ストーリー』)のテーマソングです。
「ディスコ音楽の父」ジョルジョ・モロダーの要請で歌ったこの曲は、世界18ヶ国で1位になり、カジャグーグー時代を超える成功となりました。
まあ音は普通のありがちなエレポップって言っちゃえばそのとおりなんですが、メロディはなかなか悪くないかも。


その後カジャグーグーは人気が先細りになり、一時カジャという今ひとつ冴えない名前に改名して多少持ち直しましたが、結局は売り上げ不振となり85年末に解散します。
しかし素人目にも才能がありそうだったニックは、やはりそのままでは終わらず英国フュージョン界で売れっ子セッション・ベーシストとなり、日本にもジョン・ポール・ジョーンズのサポートなどで来日していますし、POLYSICSのアルバム等にも参加しています。
一方リマールは『Never Ending Story』以降の曲がパッとせず、見事なくらいの一発屋になりました。レコード会社との契約を切られた後は、一時職安に通っていたこともあるそうで、かなり悲惨な暮らしをしていたようです。
後年彼のサイトを見たことがありましたが、見事なくらいのゲイっぽいマッチョになっていて驚愕した記憶がありましたっけ。


カジャグーグーは03年に一晩限りの再結成が成されましたが、そこでもリマールが昔のギャランティ問題を含んだ要求をした(よほど金に困っていたんだろうか)事で再度対立してまたもや決別します。
しかし翌年にはリマールとドラムスのジェズ・ストロードを除いた3人で再結成して活動を開始し、08年にはなんとかリマールとジェズも合流し、ついにオリジナル・メンバーが再集結することになりました。アルバムやシングルも発売し、それなりに元気みたいです。


Kajagoogoo - Space Cadet


これは09年に発売されたシングル。なんと25年ぶりのリリースです。
音はいかにも「ああ、カジャグーグーだな」という感じ。相変らずこなれていて巧いです。