ベック

今回はベックです。90年代アメリカを代表するミュージシャンですね。
ちょっと年が下の人には「○○さん(僕の本名)はベックはベックでもジェフ・ベック*1の世代でしょ」とからかわれることが多いです。まあ実際世代的にはそうだから仕方ないですけど。
それにしても最初にベックの『Loser』を聴いたときの衝撃は大きかったです。
ループを使っただるそうなリズム、老人のようなしゃがれた声、フォークやブルース、カントリーをベースにしつつもボアダムズみたいなローファイな感覚で貫かれたトラック、そして麻薬中毒患者のうわ言みたいな異様な歌詞の組み合わせは、物凄い破壊力を秘めていました。


Beck - Loser


とにかくやる気なさそうww
なんと言うか穴の開き具合が素晴らしい。
「俺は負け犬。さっさと殺せば?」と歌われるサビは、自虐的ですがどこかユーモラスです。
センセーションを巻き起こしたからといってニルヴァーナの『Smells Like Teen Spirit』などのように特に当人が意識することなく、未だに普通にセットリストに組み込まれているところも飄々としていて好きですね。


Beck - Devils Haircut


『Loser』の2年後の音。
ゼム*2の『I Can Only Give You Everything』のギターリフを大胆にサンプリングした、ある意味テクノ的な佇まいの一曲。
生演奏とサンプリングをコラージュし、より重層的なサウンド・プロダクションになっていますが、やる気のなさそうなところは不変です。


ベックの場合、自分の耳に飛び込んできた様々な音楽の断片を手当たり次第に貼り合わせていくようなジャンク・アート的感覚と、屈折した表現方法、そして茫漠とした虚無感がいいですね。
数多くの要素をクールに対象化し、強引に折衷して音楽化してしまうところは、まさに天賦の才能と言っていいかも知れません。

*1:20世紀を代表するロック・ギタリスト。エリック・クラプトンジミー・ペイジと並んで「三大ギタリスト」とされた。ファンク、フュージョンエレクトロニカなどに接近しつつも、ひたすらギター一筋を貫いている職人。

*2:北アイルランドのブルースロック・バンド。異常にメンバーチェンジが多く、スタジオ・ミュージシャンも入り乱れて混乱しつつも『Gloria』などの名曲を残している。ヴァン・モリソンが若い頃在籍していたことが有名だが、あのジミー・ペイジもスタジオ・ミュージシャンの一人として参加していた。