ナイン・インチ・ネイルズ

今回はナイン・インチ・ネイルズです。
ベック→カジャグーグーナイン・インチ・ネイルズとか、書いている人間がとち狂っているとしか思えませんが、まあそれはそれとして。


彼らはロックと電子音楽を融合させたようなインダストリアル・ロックというジャンルの第一人者で、時代を追うごとに様々な新しい試みを模索し続けています。
一般的にはバンドのように思われがちですが、実際は中心人物のトレント・レズナーが毎回プロジェクトとしてメンバーを集め、その都度スタッフが入れ替わるという形態を持ったプロジェクトです。
過去のレコーディングメンバーの中には、デヴィッド・ボウイエイフェックス・ツインデイヴ・グロールフー・ファイターズ)、デイヴ・ナヴァロ(元ジェーンズ・アディクションレッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、エイドリアン・ブリューキング・クリムゾン)、トミー・リー(モトリー・クルー)、エイドリアン・シャーウッドドクター・ドレーなど、あらゆるジャンルから多士済々な顔ぶれが集められていたりもします。
音自体はかなり過激で、トレント自身が抱える矛盾や混沌、閉塞感、彼自身の中に潜む異形なるものをそのまま音響化したような刺激的な音世界と、暴力的ではあるけど内省的な世界観、そして斬新かつ精密なサウンド・プロダクションが特徴です。
いわゆるインダストリアル・メタル的な方法論を導入しても、それが決してカタルシスやフラストレーションの発散には向かわず、その歪んだサウンドがすべて自分自身、聴き手自身に向かっていくため、実に後味が悪いのも印象的ではありますね。
ただ最近は彼の内面世界が落ち着いているせいか、暴力的なノイズの音の壁を用いつつも、それと対比させるように種々のアコースティック楽器の繊細な音の響きを生かすなどして、かつての陰鬱さはかなり抑えられている気がします。
最近もオールインストのアルバムを作ってファンに映像の投稿を呼びかけたり、フルアルバムをネットで無料配信したりと、相変らず先の読めない活動を続けています。
またライブ・パフォーマンスの過激さも有名で、ウッドストック1994での土砂降りの雨の中で、トレントが泥まみれになって転げ回った狂気のステージングは、今でも語り草となっています。


Nine Inch Nails - The Perfect Drug


デヴィッド・リンチ監督の映画『Lost Highway』のために作られた楽曲。
彼らの作品の中では最も聴きやすく、むしろテクノポップと言ってしまってもいいくらいの音です。
途中ドラムンベースっぽいパートもありますが、そこを除けばむしろキャッチーなロックンロールナンバーと呼べるかもしれません。
暗く陰鬱でゴシックなPVも、何とも言えない不思議な雰囲気を醸し出しています。黒のロングコートを翻しながら、ドラッグらしきカクテルを飲むトレントが退廃的でなかなかクールですし、東洋人の女性たちや美少年もいい味出してますね。


Nine Inch Nails - Wish


92年に発売されたEP『Broken』に収録された、ナイン・インチ・ネイルズヘヴィメタル的な部分が色濃く出た一曲。
ストレートな攻撃性とポップさが入り混じり、闘争心が湧き上がるような爆音サウンドとなっていて、先の見えない暗闇の中をフルスロットルで暴走していくようなスリルがあります。
「Fist Fuck!!」とか歌っちゃってるのがなんとも笑えますが、ライブではこの部分で観客が「Fist Fuck!!」と一緒になって叫び、思いっきり拳を突き上げているそうです。なんともロックなリアクション。