キング・クリムゾン

前々回にせっかくジョン・ウェットンのことを書いたのに、キング・クリムゾンについて触れるのを忘れていました。
といってもキング・クリムゾンは30年以上の歴史を誇る偉大なバンドで、代表曲も名演奏もたくさんあるので、おいそれと書くわけにはいかないわけでして。
とりあえず今回は、73年にリリースされた名盤『Larks' Tongues in Aspic』(邦題は『太陽と戦慄』)あたりをいってみましょうか。
というわけで、西ドイツのTVショーで披露された、『Larks' Tongues in Aspic Part.1』(邦題は『太陽と戦慄 Part.1』)を載せてみます。


King Crimson - Larks' Tongues in Aspic Part.1


このスタジオライブはロバート・フリップ(ギター)、ジョン・ウェットン(ベース)、ビル・ブラッフォード(ドラムス)、ジェイミー・ミューア(パーカッション)、デヴィッド・クロス(ヴィオラ)という、僕好みのメンバーで演奏されています。
即興演奏を主体として、前衛的でスリリングな音を出しているのはさすがキング・クリムゾンといったところでしょうか。ポップさとかキャッチーさとかとはまったく無縁なので、聴く人を選ぶとは思いますが、個人的には面白い演奏だと思っています。
今では考えられないアフロヘアーだけどとんでもなく難しく変態的なフレーズをさらっと弾いてしまうフリップも、クソ難しいベースラインを涼しい顔をして弾いているウェットンも、裸にオーバーオールという失笑もののスタイルながら手数の多いドラミングを見せるブラッフォードも、チューニングが合ってないようにも思えるヴィオラを上手いんだか下手なんだかよくわからないように弾くクロスも、みんな音楽的には非常に高度なことをやっているはずです。
しかし映像を見ていると、どうしてもコントみたいに見えてくるのはなぜなんでしょう。


多分ですが、パーカッションのジェイミー・ミューアの個性が、すべてを支配しているからなんでしょうね。この人が挙動不審の原始人みたいなスタイルで、中央でドラム叩いたり、パフパフ音を鳴らしたり、ホイッスルを吹いたり、ピヨピヨと笛鳴らしたりしているのを見ていると、自然と笑いがこみ上げてきますから。
気のせいかラストのほうでクロスがこみ上げてくる笑いを必死にこらえているように見えます。まあ確かに近くであれをやられたら、ツボに入る可能性はありますわな。
ミューアは狂気のパーカッショニストなのか、それともただのチンドン屋なのか、その感想は見る人次第ではありますが、個人的にはある意味(要するに変態的な動きで)キース・ムーンを超えていると思います。すごい。
その後ミューアキング・クリムゾンを脱退し、今は植木職人になっていると聞いているのですが、もともと仏教の修行をするために脱退したということもあり、「チベットの僧院に入っている」とかいろんな噂が絶えず流れていて、その意味でもユニークな人でありました。


しかし緊張感と同時にそれと相反する笑いも生み出すとか、この頃のキング・クリムゾンはさすがだなあ、と思います。まあフリップ翁にそれを言ったら、冷静に反論されちゃいそうですが。