ジュリアン・コープ

昨日の続き。
ティアドロップ・エクスプローズを解散させたジュリアン・コープは、ソロに転進してネオ・サイケのカリスマとも呼ばれる存在になりました。
特に彼が才能を開花させた80年代半ばの充実ぶりは神がかっていて、一気に突き抜けたようなサイケ・ポップを全面展開しています。
日本でも人気があって、全盛期には中野サンプラザを満員にするくらいの集客力を持ってましたから、なかなかたいしたものでした。


Julian Cope - Trampolene


87年に発表された3rdアルバム『Saint Julian』からのシングル。
自身のルーツであるヴェルヴェット・アンダーグラウンドやドアーズ、シド・バレットを思わせるアシッド・サイケを、ポップスとして美しく昇華した曲で、聴いていて気分が高揚してきます。
ただ本来はおとなしくて内向的な文学青年が、覚醒剤でも飲んで無理やり自分をハイにしている感は否めず、事実この路線は長続きしませんでした。


その後のジュリアンはキリスト教思想に基づく白人社会を極端に嫌悪する姿勢から、徐々に自分の精神世界に没入するようになり、作品からも大衆性が失せていき、ついにはメジャーからもドロップしてしまい、ほとんど情報が伝わらなくなってしまいます。
しかし彼自身の創作意欲が衰えたわけではなく、様々な名義で精力的に作品(オールインストのアルバムまである)を発表するほか、戦後からの日本の音楽を研究しそれを本にして出版するなど、多種多彩な活動をしています。
本(『ジャップ・ロック・サンプラー』というタイトル)は一応読ませて頂きましたが、フラワー・トラヴェリン・バンド、裸のラリーズ、スピード・グルー&シンキ、ファー・イースト・ファミリー・バンドJ.A.シーザーについて熱く語っていたり、黛敏郎一柳慧高橋悠治についても言及していたり、1960年代初頭の現代音楽や実験音楽についても詳しかったりして、本当に英国人なのかと疑ってしまうほどでした。



外国人が執筆したものゆえ、確かに事実誤認は多い(そのへんは訳者が注釈を入れている)のですが、とてつもない労作であり奇書であるので、興味のある方にはお勧めします。