バウ・ワウ・ワウ

マルコム・マクラーレンが、セックス・ピストルズの次に仕掛けたバンドがバウ・ワウ・ワウです。
アダム&ジ・アンツのアダム以外のメンバーを引き抜き、クリーニング屋で働いていたラングーン生まれのビルマ系英国人の少女アナベラ・ル・ウィン (当時14歳。本名Myint Myint Aye) をオーディションへ誘い、ヴォーカルに起用して結成されました。


そして80年にシングル『C30,C60,C90,Go』でデビュー。
このシングルは驚いたことにカセットテープのみの発売で、
「レコードはもう古い。電車の中でも街を歩きながらでも車でも聴けるカセットの時代が来る。これからは何でもカセットに録音しちゃえ」
というある意味著作権を脅かすようなメッセージが入っていて、当時話題になりました(と言いつつその後レコードでも発売したところが、いかにもマルコムらしく節操がなくていい)。


Bow Wow Wow - C30,C60,C90,Go


件のカセットシングル。全英34位。
当時先物買いが大好きだった僕も早速聴いたんですが、マカロニ・ウエスタン調のギターにバリバリのチョッパーベース、手数の多いドラムによるアフリカンなビートというエスニック・ファンクという印象を持ちました。
それとマルコムのプロデュースしたバンドの中では、最もテクニックのあるプレイヤーで構成されているな、とも思いましたっけ。


Bow Wow Wow - Chihuahua


81年のセカンドアルバム『See Jungle! See Jungle! Go Join Your Gang, Yeah. City All Over! Go Ape Crazy』 (邦題は 『ジャングルでファンファンファン』)からのシングル。全英51位。
邦題は確か『チワワは素敵な愛言葉』だったと思います。久しぶりにPVを観ましたが、雨乞いしてるみたいな奇妙な踊りは覚えてましたね。
ちなみにこのアルバムのジャケットは、マネの『草上の朝食』をパロったデザインだったのですが、当時15歳のアナベラのヌード写真が使用されていたため、彼女の母親が怒って提訴、警察も介入する事態となり、アメリカ盤ではジャケットデザインが差し替え、他の国も発売延期にまで至りました。



一応このアルバムも買ったんですが、性的な関心が強かったはずの高校生だったのに、このジャケットにはあんまり欲情しなかった記憶がありますねえ。
多分東南アジア系ってあんまり好みじゃないんだと思います。


Bow Wow Wow - Go Wild In The Country


これもセカンドアルバムからのシングル。全英7位を記録し、ブレイクした曲になりました。
すごく奔放でジャングルっぽい印象。


Bow Wow Wow - I Want Candy


82年にリリースされた3rdアルバム「I Want Candy」からのシングル。全英9位。ビルボードで62位。
このアルバムではマルコム・マクラーレンから離れ、ケニー・ラグーナをプロデューサーに迎えて作られたんですが、さらにわかりやすいサウンドになっていて、アメリカでもチャートインしました。
同じ年にマッドネスとともに来日し、ジョイント・コンサートも行っています。


Bow Wow Wow - Teenage Queen


82年発表のシングル。
日本では資生堂のパーキージーンのCMに使われて、知名度アップに一役買いました。僕はそんなに好きな曲じゃないんですが。


その後83年には4thアルバム『When the Going Gets Tough, the Tough Get Going』をリリースしますが、飽きられてしまったのか勢いを失い、セールスの不調からバンドは解散、アナベラはソロシンガーとなるもののほとんど売れることなく、いつの間にか忘れ去られていきました。


はっきり言ってキワモノではあるんですが、今改めて聴いてみると、現在こういったプリミティヴな音を出すバンドが見当たらないため、かなり斬新な曲調で新鮮に感じられます。
ニュー・ウェイヴ・サウンドとジャングル・ビートを融合させた、黒いグルーヴとトロピカルなポップ感覚は、今の耳で聴いても遜色がないんじゃないかな、と思うのですが。


ちなみにバウ・ワウ・ワウはアナベラとベースのリロイ・ゴーマンを中心として、97年と03年に再結成されています。
現在もバンドは健在らしく、驚いたことに今年のサマーソニックにも来日するらしいです。しぶといぜ。