ヘルデン

残暑お見舞い申し上げます。皆様いかがお過ごしでしょうか。
僕は厳しい残暑にすっかりまいっちゃって、ちょっと調子を崩しております。まあ更新ができるくらいだから大丈夫なんですけど。
とは言えちょっとぐったりしているところもあるんで、本来ならイレイジャーあたりを取り上げて、デペッシュ・モード関連を全部終えようかな、なんて思ってたんですけど、ちょっと予定を変更します。
こういう時は一発屋とか単発ユニットとか、動画をあまり貼らなくて済むやつに限りますね。と言うわけで、かなりマイナーなやつをいきます。


今回取り上げるのは、83年に2枚だけシングルをリリースしたエレポップ・ユニット、ヘルデンを取り上げてみようかと思います。
ヘルデンとはウォーレン・カンとハンス・ジマーの二人で結成したユニットです。活動実績はほとんどないので、ユニットと言うよりはコラボに近い性格のものなのかもしれません。
カンはウルトラヴォックスのドラマーとして、知っている人は知っているでしょう。80年代のエレポップをそこそこ知っていれば、名前は聞いたことあると思います。
ジマーは西ドイツのフランクフルトで生まれ、イギリスで育ったキーボード奏者で、バグルズなどとの仕事で知られていました(有名な『Video killed the Radio Star』のPVにもちょこっと映っている)。
この二人がどういういきさつで知り合ったのか、80年にヘルデンを結成し、しばしの試行錯誤の後、83年にシングル『Holding On』をリリースしたのです。


Helden - Holding On


これがそのシングルです。
この曲は特に売れなかったためチャートにも入ってませんし、日本でもほとんど話題にならなかったので、知っている人はあまりいないんじゃないでしょうか。
ちょっとプログレや映画音楽を思わせるようなところもある雄大なエレポップで、派手さこそないものの端正な感じがして、個人的には好きです。
ちなみにちょっとエキセントリックなヴォーカルを聞かせているのは、あのザイン・グリフです。グリフの2ndアルバム『Figures』にカンとジマーが参加していたので、その関わりで参加したのでしょうね。
また女性のバックコーラスは、バグルズの『Video killed the Radio Star』で、印象的な「あーわあーわ」や「Video killed the radio star」の部分を、デビ・ドスとともに歌っていたリンダ・ジャーディムです。この人もジマーの人脈からの参加なんでしょう。
あとこのユニットのゲストには、元シン・リジィのギタリストで当時モーターヘッドに在籍していた、ブライアン・ロバートソンも参加しているらしいです。どこに伝手があったのか知りませんが、ジャンル外からの意外な大物でこっちもビックリです。


Helden - Stranded


これも同年リリースのシングル。
かなりウルトラヴォックスっぽい感じになっていますが、下世話なところはなくあくまで上品で、これはこれで当時のエレポップとしては悪くないんじゃないかと思います。
参加メンバーは『Holding On』と同じようですね。この曲は09年に再リリースされていますが、理由等はよく分かりません。
ちなみに画像に出ている『Spies』というジャケは、当時出た彼らのアルバムなんですが、正規の許可を得ていないブートレッグです。


ヘルデンは他には目立った活動をすることなく、この後すぐに自然消滅しています。
カンは引き続きウルトラヴォックスのドラマーとして活躍しました。一時期解散していたこともありましたが、再結成して現在も活動しています。
グリフはアルバムがいまいち売れなくて、80年代半ばに音楽界から身を引いて故郷のニュージーランドに帰り、教師として生計を立てていましたが、最近になって活動を再開し、今年アルバム『The Vigitor』をリリースしました。
ジャーディムは結婚でもしたのでしょうか、姓をアランに変えたというところまでは分かったのですが、その他の消息は不明です。もう足を洗っているのかもしれません。
ロバートソンは不評のためモーターヘッドを脱退し(メロウなプレイのロバートソンとゴリゴリのモーターヘッドでは、さすがに音楽性が違い過ぎて、加入が決まった時点で無理だと思ってましたが)、その後は再結成シン・リジィに参加したり、ソロアルバムをリリースしたりして、現在もマイペースで活動しているようです。
最も活躍しているのはジマーでしょうか。彼は映画音楽作曲家スタンリー・マイヤーズに師事した後渡米し、80年代後半から映画音楽の制作で知られるようになります。
これまで『レインマン』『ブラック・レイン』『ライオン・キング』『グラディエーター』『ミッション・インポッシブル2』『パール・ハーバー』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『ラストサムライ』など100以上の作品に関わり、オスカーを1度、ゴールデングローブを2度、グラミーを3度受賞、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームにも星が刻まれていますから、本当にすごいです。
映画音楽には詳しくなかったので、後に彼の活躍を知った時には、エレポップ界隈からそんな巨匠が出るなんて思ってもみなかったというのもあって驚きましたね。
仕事を変えることによって成功する人も世の中には多いですが、彼はその好例でしょうね。早めにポップ・ミュージックから転身したのは、資質的にも正解だったのでしょう。