エルトン・ジョン

最後にご登場頂くのは、英国の国民的歌手、エルトン・ジョンです。
エルトンはヅラでデブでゲイで、友人40人をエイズで失っているとか、1ヶ月のお小遣いが3億2千万円とか、規格外のエピソードには事欠かない人ではあるのですが、音楽的な才能は疑いの持ちようもないくらいすごい人で、全世界で3億枚以上のセールスを記録しているなど、世界で最も成功したソロシンガーであります。
そんな彼もディスコに手を出しています。まあ彼の場合は何かの気の迷いだったのかどうなのか、今では黒歴史と化しているようなんですが。


Elton John - Victim Of Love


79年リリースのシングル。ビルボード31位。邦題は『恋に捧げて』。
この曲の収録されたアルバム『Victim of Love』(邦題は『恋に捧げて〜ヴィクティム・オブ・ラヴ』)は、いつもの作家陣であるバーニー・トーピンらはまったく参加していません。
それどころか本人も一切作曲していません。完全にシンガーに徹しています。
プロデューサーはミュンヘン・ディスコの大立者ジョルジオ・モロダーの片腕的存在だったピート・ベロッティで、サウンドは完全に彼のコントロール下にあるディスコ・サウンドになっています。
方向性をいろいろ模索した結果、この音に辿り着いたんでしょうが、結果は大失敗。アルバムセールスもビルボード35位、全英41位と散々で、メディアからも酷評され、早々にこの路線からの撤退を余儀なくされています。
個人的な感想ですが、彼の場合は思いっきり本物のディスコ・サウンドをやってしまったのが失敗だったのでしょう。前述の人たちは皆「ディスコサウンドを取り入れた」程度だったんですが、エルトンはプロデューサーにまでその関係の人を連れてきて、もろに本格派のディスコしてますからね。これじゃエルトンである意味がないわけで。
ちなみにこのアルバムのベースは、20世紀末から21世紀を代表するジャズ・ベーシストのマーカス・ミラーです。若い頃はこんな仕事もしてたんですねえ。彼の低く構えた音作りは、先入観なしに聴くとなかなかカッコよかったりします。
またこの曲のバック・ヴォーカルに、ドゥービー・ブラザーズマイケル・マクドナルドとパット・シモンズが参加している、というのは後に知って得した気分になりました。


他にもいろいろあるのですが、とりあえずは5つのビッグネームを取り上げてみました。
アプローチは様々ですが、エルトン・ジョンを除いては当時大ヒットし、今も評価が高いというのが面白いですね(個人的にはエルトンのもダメだとは思ってないです)。
もう今はシーンがこれ一色になる、というブームは起こらないと思いますので、こういう現象ももうないでしょう。それを考えると、面白い時期にリアルタイムに音楽を聴いていて、ある意味楽しかったなと思います。