ダニー・ウィルソン

最近は職場復帰するなどいろいろあって、なんとなく気分が重くて更新もサボってしまいました。ツイッターはたまに呟いてましたけど。
あまり放置し過ぎてもまずいと思ってようやく書く気になったのですが、だるいせいもあってなるべくならさらっとしたやつでいきたいなと思いましたので、今回はネオアコダニー・ウィルソンを取り上げてみます。
といってもダニー・ウィルソンって、わずか3年くらいしか活動してなかったんで、覚えている人は少ないと思うんですけど、初夏に聴くにはなかなかいいんですよね、これが。


名前を聞くとシンガーソングライターかと思われてしまいそうですけど、ダニー・ウィルソンはれっきとしたグループであります。
彼らは80年代中頃にスコットランドダンディーで、ゲイリーとキットのクラーク兄弟とジェド・グライムズの3人で結成されました。
この紛らわしい名前の由来は、フランク・シナトラの映画『Meet Danny Wilson』(邦題は『ダニー・ウィルスンに会ってくれ』)から取ったそうです。なおこの名前になる前は、スペンサー・トレイシー*1というバンド名だったそうで、どれだけアメリカ映画が好きなんだって感じですが。
とにかくそのネーミングから想像できるように、サウンドもルックスも50年代風のレトロスペクティプな雰囲気が漂うグループでした。


彼らは85年にヴァージン・レコードと契約を交わしますが、もともと職人気質だったのかじっくり曲を熟成させていたらしく、2年後の87年にようやくデビューを果たします。
そしてデビューアルバム『Meet Danny Wilson』(邦題は『ダニー・ウィルソンとの出会い』)からのシングル『Mary's Prayer』が英米でヒットし、順調なスタートを切っています。


Danny Wilson - Mary's Prayer


彼らのデビューシングル。
87年に英国で42位の中ヒットを記録しますが、同年ビルボードで23位まで上昇したのをきっかけとして翌88年に再発され、なんと全英3位を記録する大ヒットとなっています。
一度聞いたら忘れられないような切なくて美しいメロディと、悲しげに響くエレピなどの洗練されたソフトなアレンジが印象的な名曲ですね。
キャメロン・ディアス主演の映画『There's Something About Mary』(邦題は『メリーに首ったけ』)に使用されていますので、曲に聞き覚えのある方もおられるのではないでしょうか。


Danny Wilson - The Second Summer of Love


89年にリリースされたシングル。全英23位のヒットとなりました。この曲を収録した2ndアルバム『Beebop Moptop』も、全英24位を記録しています。
カントリーっぽいほのぼのしたメロディーと、素朴でフォーキーな手触りが素敵な、ハートウォーミングな情景を思い起こさせるネオアコの名曲です。
それと全て逆回しで撮っているPVもなかなか面白いですね。


しかしこの年には何か意見の相違でもあったのか、バンドはあっさりと解散してしまいます。いい曲を作っていたので残念でした。
解散後兄のゲイリーはソロになってアルバムをリリースするほか、他の歌手にも楽曲を提供するなどソングライターとしても活躍しています。
また弟のキットのほうは、しばらく表立った活動を行っていませんでしたが、のちにディーコン・ブルーのドラマーのドギー・ヴィボンドらとともに、スイス・ファミリー・オービスンなるグループを結成しました。
なおゲイリーのソロ作には、キットもグライムズもサポートメンバーとして参加しており、解散以降も人間関係が悪化したわけではないことを窺わせてくれます。


彼らはその音楽性から、同郷のディーコン・ブルーなどとともにスティーリー・ダンのフォロワーとして捉えられていました。
実際当時の英国にはその手のバンドは多かったですし、大体もともと英国人ってスティーリー・ダンっぽい音が好きですしね。
しかしその独自の美しいメロディと、熟練した職人さんが手作りで作ったような暖かさには、ただのフォロワーではない魅力が溢れていましたし、今聴いても決して損はしない良質なグループだと思っております。

*1:20世紀前半に活躍した米国の名俳優。決して美男子ではなかったがその演技力には定評があり、温厚な人格者の役を数多く演じた。2年連続アカデミー主演男優賞を獲得するという偉業も達成している。