ニック・ヘイワード

今日は前回取り上げたヘアカット100のフロントマン、ニック・ヘイワードのソロ活動について取り上げてみましょう。
といっても僕はヘイワードのことにあまり詳しくなくて、1stアルバム以外はネオアコブームの折に再評価された時に後追いで聴いたのがほとんどなんで、内容は薄くなってしまいますが。
とりあえずヒットを飛ばしていた頃を中心にして、書いていくことにします。


前回にも書いた通り、83年1月にヘイワードはヘアカット100を脱退してソロに転じます。
脱退の理由は調べてみたところ、権利関係のトラブルということなんですが、具体的なことはよくわかりませんでした。
ただヘアカット100のリリース先であったアリスタ・レコードが、ヘアカット100をクビにしてヘイワードと契約したというところから見ても、レコード会社とのトラブルではなかったようですね。他のメンバーと作詞作曲のクレジットのことでもめたりしたんでしょうか。
まあそれは置いておくとして、ヘイワードは脱退した2ヵ月後の3月、シングル『Whistle Down The Wind』でソロデビューを果たします。


Nick Heyward - Whistle Down The Wind


これがデビューシングル。邦題は『想い出を風にのせて』。全英13位のヒットになっています。
この曲はリアルタイムで聴いていますが、ヘアカット100時代とは違った感じの新境地を見せたバラード・ナンバーだと思いましたね。
基本的にポップになり過ぎることのない憂いを含んだメロディなんですが、サビはなかなかキャッチーです。


Nick Heyward - Take That Situation


83年6月リリースの2ndシングル。全英11位を記録しています。
ヘアカット100時代を髣髴とさせる、明るくてポップなラテンのノリが特徴の曲です。
てか、ヘアカット100の2ndアルバム用にヘイワードが書いた曲って噂も聞いたことあるんですけど、本当の話かどうかは知りません。


Nick Heyward - Blue Hat For A Blue Day


83年9月リリースの3rdシングル。全英14位。
効果的に使われているマリンバアコーディオンの音が印象的な、ソフトでキャッチーなポップです。


この年の10月には1stアルバム『North of a Miracle』(邦題は『風のミラクル』)もリリースされ、全英10位まで上昇しています。
このアルバムはプロデューサーをビートルズのエンジニアとして名高いビル・エメリックが務め、ベースにティアーズ・フォー・フィアーズやポール・ヤング(懐かしい)などのアルバムで個性的なフレットレス・ベース捌きを見せてくれたピノ・パラディーノ、キーボードにエルヴィス・コステロとの活動で知られるスティーブ・ナイーブを迎えるという豪華な布陣で作られていますが、ヘイワードのソングライティングも60年代のポップスやスタンダードへの憧憬を感じさせる冴え渡ったもので、結果本格的な英国ポップスを聞かせてくれる名盤に仕上がっています。


Nick Heyward - On A Sunday


『North of a Miracle』からのシングル。
全英52位とチャート的にはふるいませんでしたが、ネオアコファンには名曲として人気の高い曲です。
途中の趣味のいいピアノは、スティーブ・ナイーブが弾いているんでしょうか。


Nick Heyward - Love All Day (And Night)


これは84年にリリースされたシングル。全英31位。
日本でもシャンプーのCMに使われており、知っている方もいるのではないでしょうか。


しかしこの後ヘイワードは、ニューウェーブに接近したかと思うとポップ路線に戻ったりと、活動の腰が定まらなくなり、徐々に人気を低下させていきます。


Nick Heyward - Kite


93年リリースのシングル。全英44位。
正統派路線に戻って評価の高かったアルバム『From Monday To Sunday』収録曲で、いつものヘイワードとはちょっと違ったメロディを聴かせる小品です。


ヘイワードは一応シングルこそ90年代半ばまでチャートインさせてはいましたが、結局はメジャーからもドロップしてしまいました。
それでも98年にはあのクリエイション・レーベルからアルバムをリリースしたり、インディーでポエトリー・リーディングを中心とした活動をしたりしていたのですが、その活動は年々地味になっていきます。
一時は情報がほとんど伝わらなくなって、「モーニング娘。に曲を提供したいと、デモテープをレコード会社に送ってきた」なんて噂が立ったくらいでしたから。
最近は時々ヘアカット100を再結成しつつ、地道にソロで頑張っているようですが、現在の映像を見るとすっかりいいおじさんになっていて、当時のファンだった女性は見ないほうがいいんじゃないか、と思うくらいでした。
ただインディー・シーンでミュージシャンをやっているという息子のオリヴァーくんが、若き頃のヘイワードを彷彿とさせるイケメンなのは、やはり血は争えないものだなと感じさせてくれましたが。