ザイン・グリフ

やたらと咳が出て風邪かなあ、と思っていたら、結局インフルエンザにかかってしまっていて、本当にひどい目に遭いました。
今は完全に回復してるんですが、ひどい熱と咳のせいで体力がかなり奪われてしまったんで、しばらくは短めの更新でお茶を濁そうかと思っています。
となると、自然と一発屋的な人をネタにすることになっちゃうわけですが、そのへんはご了承下さい。


というわけで、今回取り上げるのは美形シンガーのザイン・グリフです。
彼はニュージーランド出身のデンマーク人で、80年代初頭のニュー・ロマンティックブームの頃に売り出されました。
特徴は一言で言うと「デヴィッド・ボウイそっくり」(笑)
単にボウイ風の美形というだけでなく、歌声も往年のボウイによく似てましたし、プロデューサーもトニー・ヴィスコンティを迎えてグラムロック風味のエレポップサウンド(ちなみに曲は全部自作)を展開してましたし、しかも本人がボウイと同じくリンゼイ・ケンプのパントマイムの門下生でしたし、おまけに本人もボウイ・フォロワーであることを認めていたのですから、もうそのボウイ・クローンっぷりはハンパじゃなかったわけで。
それでも音自体は聴きやすく、エレポップとしても非常に品が良かったため、僕はそれなりに好きだったんですが。


Zaine Griff - Tonight


80年リリースのデビュー・シングル。全英で54位の小ヒットでしたが、彼にとっては英国で最大のヒットでもあります。
王道のエレポップ加減が今聴いてもなかなか心地良いんですが、ジャケットの写真はぜんぜん美形じゃなくて、それどころか昔の女子プロレスラーみたいでちょっとひどいです。もう少し良い写真を使えばいいのにと思いましたね。


Zaine Griff - Ashes And Diamonds


同年のシングル。デビュー・アルバム『Ashes And Diamonds』のタイトルナンバーでもあり、全英では68位を記録しています。
音自体はさっきも書いたようにグラム風味のエレポップなんですが、ちょっとビル・ネルソンなんかの影響も感じさせるところもあります。あとYMOファンなんかには好かれそうな音ですかね。
ちなみに同名のポーランド映画アンジェイ・ワイダ監督『灰とダイアモンド』)もありましたが、それと関係があるのかどうかは不明です。多分名前が同じだけなんでしょうけど。


Zaine Griff - Figures


82年の2ndアルバム『Figures』のタイトルナンバー。
このアルバムはYMO高橋幸宏、ウルトラヴォックスのウォーレン・カン、リンゼイ・ケンプ門下の同窓生ケイト・ブッシュスラップ・ハッピーのアルバムで活躍したグレアム・プレスケット、『レインマン』や『ライオンキング』などを担当し今や映画音楽の大御所でもあるハンス・ジマーなど、そうそうたるメンバーを迎えて製作されただけあって、なかなか出来のいい耽美系テクノとなっています。この曲もエレガントかつドラマチックで、なかなか良いと思いますし。
しかし残念ながらチャート的にはまったく振るわず、これが彼の最後のアルバムになってしまいました。


僕の感性がこういう音好みというのもあるんでしょうけど、今聴いてみても何でここまで売れなかったのかがわからないんですよね。
達者なバッキングを従えてカッチリと仕上げられた音が、生真面目でシリアスな彼の姿勢をもろに反映しすぎて、逆にマイナスになったのかなあ、なんて思うしかないんですが。
彼は82年に高橋幸宏のアルバム『WHAT,ME WORRY?』にバック・ヴォーカルで参加し、『This Strange Obsession』など4曲で歌声を聞かせていますが、その後ウルトラヴォックスのミッジ・ユーロがプロデュースしたシングルを最後に音楽界から足を洗ってしまいました。
引退後は故郷のニュージーランドに帰って、教職に就いていたそうですが、最近はかつての血が騒いだのかまたステージに上がっているようです。
YouTubeで映像を確認しましたが、すっかりナイスミドルになっていて元気そうでした。こういう姿を見ると、無条件で嬉しくなってきますね。