ストラングラーズ

前回の続きです。
ストラングラーズは2枚のアルバムを出した後、より音楽性をヘヴィにする方向に舵を切りました。
その結果当時としては規格外な重音圧の音が出来上がり、本国のみならず、日本でもさらに大きな支持を得ることになります。


The Stranglers - 5 Minutes


78年2月にリリースされたシングル。全英では11位を記録しています。
叩きつけるように放たれる重たい音と、いかにもこの時期の英国を象徴するような荒んだ歌詞が印象に残る曲です。


The Stranglers - Rok It To The Moon


『5 Minute』のカップリング曲。なぜかPVがあったので載せておきます。
いかにもカップリングらしいお遊びっぽい曲ですが、蛍光灯を振り回しているだけのチープなPVが、どこか間抜けで笑えます。


そしてこの年、彼らは問題作である3rdアルバム『Black And White』をリリースしました。
このアルバムはとにかく衝撃でしたね。何しろサウンドがすごかったですから。重戦車が咆哮しつつ疾走しているような音とでも言えばいいのでしょうか。確かヒュー・コーンウェルはこのアルバムを「Strong」と言っていましたが、まったくもってその通りだと思います。
ただでさえ攻撃的なジャン・ジャック・バーネルのベースのボリュームを、それまでの常識の範疇から外れるくらい極端に大きくとる手法は、今でこそ珍しくもないのでしょうが、当時としては新鮮でかつ破壊的に聞こえたことを覚えていますね。
こんな暴力的な音のアルバムが、全英で2位のヒットになったんですから、英国のチャートは懐が深いです。


The Stranglers - Tank


『Black And White』のオープニングナンバー。
タイトルどおり戦車を思わせる強靭な音と、纏わり付くような偏執的なキーボードは衝撃的で、この曲を聴いた瞬間、当時中学生だった僕は「すげえ」以外の言葉が出なかったですね。


The Stranglers - Sweden(All Quiet On The Eastern Front)


これも『Black And White』収録曲。
この曲はスウェーデン公演中に、彼らが極右団体『Eastern Front』に宿舎を襲撃されたという事件に端を発して作られた曲で、思いっきりスウェーデンの政治体制をこき下ろしています。腹いせのためなのか、スウェーデンではわざわざスウェーデン語で歌ってシングルカットされました。
なお副題は、レマルクの小説『西部戦線異状なし』(All Quiet On The Western Front)と件の極右団体の名前をもじっているようです。


The Stranglers - Nice 'N' Sleazy


『Black And White』からのシングル。全英で18位を記録しています。
このアルバムのA面はスピードで押しまくる曲が多いのですが、この曲はタメを十分とっている感じで、若干趣を異にしています。
すごいのはとにかくベースラインですね。今聴いても非常にカッコいい。当時日本のアンダーグラウンドシーンでも、このベースに影響を受けたバンドは多かったように記憶しています。
東京ロッカーズの一員だったリザードなんかは、ジャン・ジャックにプロデュースされた、ということもあるんでしょうけど、明らかにこのへんのベースプレイを真似てますから。


The Stranglers - Toiler On The Sea


これも『Black And White』収録曲。
いかにも凶暴そうなベースから導かれる、やや長尺だけどソリッドな曲です。


『Black And White』リリース後、中心人物であるジャン・ジャックとヒューは、ソロアルバムの制作にも着手します。
そのどちらも『Black And White』の路線の延長線上にあるんですけど、それぞれの個性が出ていて面白い仕上がりになってましたっけ。


Jean-Jacques Burnel - Freddie Laker


ジャン・ジャックのソロ『Euroman Cometh』。彼一人によるリズム・マシーンとシンセ、ベースと歌の多重録音作品です。
ストラングラーズとはかなり趣きが異なり、よりニュー・ウェーブやオルタナティブの色が濃いんですが、79年にこれを出したのは革新的と言ってもいいかもしれません。
なおアルバムのテーマはタイトルどおり「ヨーロッパ共同体」。これは約20年後に現実のものとなりました。
ちなみにPVでギターを弾いているのは、のちにストラングラーズにも加わるヴァイブレーターズのジョン・エリスです。


Hugh Cornwell - White Room


こちらはヒューのソロ『Nosferatu』からの一曲。
キャプテン・ビーフハートのドラマーであるロバート・ウィリアムズ、フランク・ザッパのバンドにいたキーボーディストのイアン・アンダーウッド、ディーヴォのメンバー、イアン・デューリー(変名で参加)などのメンバーを迎えて制作されています。
この曲は有名なクリームの曲のカバーですが、他の曲もバンドのイメージを大きく踏み外したものが多く、妙に濃い内容になっています。
ギタリストなのにギターを全然重要視しないアレンジが、当時不思議だなと思いましたっけ。


このままヘヴィな路線を驀進していくかと思われたストラングラーズですが、すぐに路線は変化していきます。
それについてはまた次回に書くことにしましょう。