テレックス

ここのところ4連発でエレポップ系のミュージシャンを取り上げているのですが、調子に乗ってもう一ついっちゃいましょう。というわけで、今回はテレックスです。
テレックスは「ベルギーのクラフトワーク」と呼ばれていたテクノ・ミュージシャンです。「二流」というテクノポップとしての褒め言葉が非常によく似合う存在で、日本でも細野晴臣石野卓球あたりが彼らのファンでしたし、ダフト・パンクやモービーなどにも大きな影響を与えています。


テレックスは78年、ベルギーのブリュッセルでジャズ・ピアニストのマルク・ムーラン(キーボード)、サウンドエンジニアをしていたダン・ラックスマンシンセサイザー)、建築家のミシェル・モース(ヴォーカル)で結成されたトリオです。
彼らの特徴はどことなく安っぽいけどポップでキッチュサウンドと、のほほんとしていてとぼけたユーモア感覚でしょうか。
特に初期の音なんかは、アマチュアが安い機材でクラフトワークっぽい音を出しているみたいなんですが、そこが逆に微笑ましく感じられるんですよね。


Telex - Twist A St.Tropez


78年にリリースされた彼らのデビューシングル。翌年リリースのデビューアルバム『Looking For St. Tropez』(邦題は『テクノ革命』)にも収録されています。
当時はただ単にへんなテクノポップみたいに思っていましたが、2倍速にすれば今でも通用しそうな音になっていますね。
この曲は実はLes Chats Sauvagesというフランスのロックバンドのカバーらしいのですが、僕は元のバンド自体を知りませんww


Telex - Moskow Discow

D


この曲も『Looking For St. Tropez』に収録されている、彼らの代表曲です。
クラフトワークの『Trans Europe Express』のアンサーソングとも思われるナンバーで、ヴォコーダーの使い方やシンセで出した汽笛の音などが非常にポップだったため、当時すごく気に入って聴いていた記憶があります。


Telex - Rock Around the Clock


79年にリリースされたシングル。英国で34位を記録し、唯一の英国でのヒットにもなっています。
この曲はオールディーズのファンには有名な、ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツのロックンロール・クラシックのカバーですが、原曲を見事に解体して、スローテンポで脱力するような仕上がりにしています。
なおこのときの彼らの英国進出に際していろいろと面倒を見たのが、のちにストック・エイトキン・ウォーターマンの一員としてユーロビートで一世を風靡した、ダン・ウォーターマンだったというのはちょっと面白い顔合わせではあります。


Telex - Euro-Vision


80年のユーロヴィジョン・コンテストに出場させられた時の曲。彼らにとって唯一のステージだったそうなんですが、見事ワースト4位という栄冠に輝いています。
彼らは同年に『Neurovision』というアルバムをリリースするのですが、タイトルはこの大惨敗のことを皮肉ってのものだそうです。


Telex - Spike Jones


86年の5thアルバム『Looney Tunes』収録曲。
30年代から50年代に活躍した冗談音楽の王様、スパイク・ジョーンズ(映画監督の人とは無関係)へのオマージュなんですが、歌詞はただ単に「スパイク・ジョーンズ」って言っているだけだったりします。


Telex - Peanuts


同じく『Looney Tunes』収録曲。88年にシングルカットされ、ビルボードのクラブチャートで45位に入り、唯一のアメリカでのヒットになっています。
Looney Tunes』の頃は初期と比べるとデジタル化が進行し、サンプラーなんかもガンガン使われているんですが、彼らの本質的なところは何も変わっていません。
多くのこの手のミュージシャンが、こうした機材の進化に伴って、当時持っていたはずの無邪気な可愛らしさを失って、シリアスな印象になってしまったのに対し、テレックスの場合は使っているおもちゃが新しくなった、という程度で、そのチャーミングさを失っていないのがすごいと思います。


テレックスはその後活動が不定期になりますが、06年には突如としてアルバム『How Do You Dance?』をリリースし、その健在ぶりをアピールします。
しかし作・編曲を主に担当していた中心人物のムーランが、08年に癌によって死去したため、その活動を停止することになりました。残念です。
またムーラン以外にも、ラックスマンがディープ・フォレストのプロデューサーとして活躍しているようです。